ミニ・レビュー
日本でも安定した支持を獲得してきた、アメリカ産ヘヴィ・ロック・バンドによる4枚目のアルバム。音像としてはハードな側面が強調された印象だが、キャッチーな楽曲作りの巧さは変わらない。体を揺さぶるものからじっくりと堪能させるものまで幅広く聴かせる。
ガイドコメント
日本でもヒットした前作『欲望』より、約2年ぶりとなる4thアルバム。広い空間を感じさせるグルーヴと螺旋状に絡み合うような歪曲のメロディは健在。さらに磨きのかかったエモい楽曲が満載だ。
収録曲
01MY TURN
4thアルバム『フォーネヴァー』からのシングル・カット第1弾となる、重厚なギター・リフが前面に出たハードなロック・ナンバー。“いつになったら俺の番になるんだ?”と半ばキレ気味な詞だが、ダグラスのヴォーカルが不思議と爽快さを感じさせる。
02I DON'T THINK I LOVE YOU
息の長いヴォーカルとコーラスが沁みるナンバー。かつては揺るぎない愛で結ばれていた二人の、時を経て一つの答えにたどり着いた瞬間のことを綴っている。メロディアスな楽曲が、巻き戻せない過去の存在を、切なく色濃く印象づけている。
03SO CLOSE, SO FAR
壮大なストリングスや爽快なタンバリンが映えるミディアム・ナンバー。メジャー・コードの合間にマイナー・コードを上手く挟んだ展開のなかで、今はそばにいない大切な人を想い耐えんとする心模様を描いている。
04ALL ABOUT YOU
ハードなサウンドに乗せて、アルバム『フォーネヴァー』中最高の“イライラ感”を正面からぶちまけた一曲。腹を立てた時のエネルギーを表わすかのように、歪んだギターが力強くうなる。“おまえのことが嫌いになる!”と直球でタンカを切るさまはかなり爽快。
05THE LETTER
女の裏切りに気づいた男の哀愁を歌ったミッド・スロー。物的証拠=手紙によって繊細な心を粉々に砕かれた悲しすぎる結末を、絶妙なコーラス・ワークを効かせつつ歌い上げる。エフェクターを使用したギター・サウンドが物語性を強めている。
06TEARS OF YESTERDAY
辛い出来事のせいで晴れない心を、曇りの空にたとえたメロウな一曲。“息で曇らせた窓に”愛しい“おまえの名前を書く”というインドア派の独白ではあるが、前向きに頑張ろうという微かな明るさと強さを絶妙なコードで提示している。
07SICK OF HANGING ON
不安定なサウンドを奏でる歪んだ2本のギターによって、女に振り回される男の苛立ちを絶妙に描写したトラック。勢いのあるカッティングや激しく高低を往来するベースで盛り上がるサビが、煮え切らない相手に対する怒りを想像させる。
08YOU'RE THE ONE
タイトルが示すとおり、これ以上ないほどまっすぐなラヴ・ソング。伸びのある声がダグラスの持ち味だが、ここでは明快なヴォーカルを披露し“恐れやしない おまえが必要なんだ”という大胆な告白をやってのけている。バンドの無骨さも活きた好ナンバー。
09WHO THE HELL AM I?
ずっしりとしたギターに明朗なヴォーカルを乗せた、フーバスタンクらしさを満載したトラック。オルタナティヴな雰囲気から一転、ダグラスの雄叫びとともにヘヴィなマイナー・サウンドへと展開。迷える自分を正面から見据えた、素直なリリックも好感。
10YOU NEED TO BE HERE
“思い通りにはいかない世界だからこそ、お前にここに居て欲しい”という願いを、ややしっとりと語るスロー・ナンバー。くぐもらせたヴォーカルとリヴァーブさせたバンド・サウンドというエフェクト効果により、現実的な視線と理想への憧れを交錯させた世界を描いている。
11GONE GONE GONE
エネルギッシュなドラムが重厚なビートを刻むミッド・チューン。悪い評判どおりでしかなかった恋人に対する諦めと自嘲ムードを表わした、ギターのシンコペーションが面白い。離縁状を叩きつけるかのように、バッサリとカット・アウトするのもクール。
12REPLACE YOU
ベッドルームでの回想を綴ったリリックが切ない、オルタナティヴ感が漂う曲。明快な8ビートの上での哀愁を誘うヴォーカルに絶妙なラインのコーラスを重ね、ぶつけようのない感情のくすぶりを醸し出している。
13STAY WITH ME
抜群に伸びの良いヴォーカルを生かした、アルバム『フォーネヴァー』の中でもっとも美メロといえるミディアム・ナンバー。壮大さを感じさせつつもやや短めに仕上げたことで、率直な“懇願”を力強く訴えることに成功している。繊細なピッキングを聴かせるギターが印象深い。