ミニ・レビュー
倉持明日香のAKB48卒業により、2015年11月5日をもって解散したFrench Kiss。最初で最後のアルバムは5年間の活動を詰め込み、各メンバーが全シングルから選曲と曲順を担当。このTYPE Aは柏木由紀編で、このユニットの清楚さをポップ&キュートに体現。最後に収録された新曲も胸に染みる。
ガイドコメント
AKB48からの派生ユニットによる、2015年10月14日リリースの1stアルバム。1stシングル「ずっと前から」をはじめとするシングル群に加え、新曲やカップリング曲を収録したベスト・アルバムとも呼べる一枚だ。
収録曲
[Disc 1]〈Playlist by KASHIWAGI YUKI〉
01ずっと 前から
2010年発表の記念すべきデビュー・シングルは、余白をたっぷり残したサウンドが印象的なロック・テイストのポップ。チューン。学校の部活におけるマネージャーと選手の恋を思わせる舞台をはじめ、甘酸っぱいくも胸が苦しくなるようなフレーズが並ぶ。
02If
“if”じゃ始まらない、正解なんてないのだから本当の自分を出せばいい。恋愛をテーマにしているが、そのまま人生訓にもなりそうなメッセージに心を打たれる2ndシングル。90年代風の雰囲気も感じさせるエレクトロなアップ・チューンだ。
03最初のメール
ハマサキユウジが作編曲を手がけた4枚目のシングル。痛快なギター・サウンドと打ち込みが融合したアレンジは、王道のアイドル・ポップといえる内容。運命の出会いを果たした二人の“最初のメール”をドラマティックに描く。
04沈黙
もう誰かのことをここまでは愛せない、そう言えるほどに大切な存在だったあなたとの別れ。心に深く刻まれてしまった思い出に悩まされる胸のうちを綴った切ないバラード。“公園のカフェテリア”“グラスのソーダ水”など、どこか懐かしい演出がユニーク。
05火山灰
柏木由紀のソロ曲。故郷である鹿児島を出て、家族や仲間に迷惑をかけながら自らの意思で未来を選んできた彼女のこれまでを反映した歌詞と、積もる思いを“火山灰”にたとえた秋元節は見事のひと言。まっすぐな歌唱も胸に響くピアノ・バラードだ。
06Rainy day
しとしとと降る雨を再現したようなイントロのピアノのフレーズが美しいポップ・チューン。雨は見慣れた街を知らない場所に変えてくれる、晴れてるだけじゃ愛に気づかないなど、気分が沈みがちな雨を見事に転換する魔法の言葉の数々が鮮烈。
07思い出せない花
高城亜樹が主演を務めたテレビ東京系ドラマ『SAVEPOINT』の主題歌。若田部誠が作編曲を手がけたフォーク・ソングで、アルペジオを主体としたサウンドと芳醇なコーラスワークは70年代の空気そのもの。歌唱能力の高さを再認識させられる。
08ドラゴンフルーツの食べ頃
4つ打ちのリズムを基調としたダンサブルなサウンドに、しっかりとエフェクトをかけたヴォーカルを乗せたテクノ・ポップ・ナンバー。自らを食べごろのドラゴンフルーツにたとえ、たまには珍しいフルーツに手を出してみては、と歌うユニークなストーリーが肝。
09カッコ悪い I love you!
テレビ東京系アニメ『SKET DANCE』オープニング・テーマ起用の3rdシングル。ワイルドなギターを取り入れたロック・テイストのダンス・ナンバー。最悪の出会いがあったから、今さら態度を変えられない……と悩む男子の心情が楽しい。
10ロマンス・プライバシー
全部を話せたママとも目を合わせられない秘密ができちゃった……ほっておいてほしいけれど気持ちを聞いてほしい、恋に焦がれる女心を巧みに描いた5thシングル。高鳴る胸のうちを表わしたようなカラフルなサウンドとメロディが心地よい。
11ある秋の日のこと
人恋しくなる秋の季節を舞台に、野球部の彼に想いを寄せる女子を描いた王道青春ラヴ・ソング。焦れる気持ちをさらに急かすような性急なビートで走り抜けるロック風味のポップ・チューンで、ドラマティックなメロディ展開が沁みる。
12サヨナラをあと何回…
フレンチ・キスとしては最後の楽曲となった感動的なバラード。“サヨナラをあと何回言葉にすればしあわせになる?”という歌い出しから、希望や未来を見すえた温かなラストへと展開。穏やかなサウンドだけに、繊細なコーラスワークがじんわりと胸に響く。
[Disc 2]〈DVD〉フレンチ・キス ロングインタビュー