ミニ・レビュー
「桜坂」「IT'S ONLY LOVE」といったヒット曲をピストン西沢が大胆にアレンジ、クラブ仕様として構築したリミックス・ベスト・アルバム。ラテン・テイスト全開のビート感を備えた「HELLO」、モータウンっぽい雰囲気を強調した「Peach!!」が素敵。
ガイドコメント
5枚目のシングル「Good night」から15枚目の「桜坂」までのシングル曲のリミックスが収録されたベスト盤。J-WAVEナビゲーターであり、過去に「虹」のリミックスも手がけたDJピストン西沢がリミックスを担当。
収録曲
01Heart
リミックスというのは原曲の解体度合いがキモだが、ポップなはずの「Heart」がファンキーでロックに彩られている。イミテーションっぽく下世話な感じで、非常に新鮮に聴こえるその変わりっぷリに注目。
02Pa Pa Pa
アルバム『Fukuyama Masaharu ANOTHER WORKS』に収録されている本作だが、オリジナルはシングル曲ではなく、「HELLO」のカップリング。途中でメタル風の展開になったり、オーディエンスの歓声が入ったりと、ギターも自ら弾いているピストン西沢のリミックスと選曲のセンスが興味深い曲。
03桜坂 (featuring WISE)
TERIYAKI BOYZなどで活躍のWISEのラップをフィーチャーし、オリジナルの質感を活かした和風R&Bといった味わい。穏やかで柔らかなテイストを損なわず、淡い情景が拡がっていく。大ヒット・チューン「桜坂」の新たな一面が楽しめる。
04HEAVEN
ラジオDJ秀島史香のセクシーおねーちゃん系ナレーションが、オリジナルの持つ激しくエロティックな世界観をさらに拡げる。レゲトン風な音作りで、タガがはずれたような行きっぷり。そのおかげで、福山の声も艶っぽく聴こえてくるから不思議。
05IT'S ONLY LOVE
福山のヴォーカルにレゲエ・サウンドを絡めるというのは、発想としては大胆。でも聴いてみたい。そんな欲求を解消するナンバーがこれ。J-POPの本流ともいえる彼の歌い回しが生み出す独特のグルーヴが面白い。
06Dear
恋愛はベタな方がいいと思っているOL諸氏にはぜひこのナンバーを。福山の声が音数の多いサウンドに溶け込み、甘い夜を演出する。秀島史香の、やはりベタなナレーションや電話の着信音といった小ネタも聴き逃せない。
07you
4つ打ちかと思っていたら、リズムはボサ・ノヴァに変化し、ゆるやかに時が流れる。そんな予定調和が気に入らない、すべてをリセットするかのようなハウスが登場。さまざまな表情を見せる、おいしいナンバー。
08Good night
シンセによるギター・アルペジオ風のキラキラした音色やクラップ、倍打ちにしてハウス感覚を盛り込んだサウンドは、メリハリが効いている。メロディがもともと持っていた美しさを、より際立たせた拡がりのあるリミックス。
09恋人
4つ打ちでハウスでという風に、アルバム『Fukuyama Masaharu ANOTHER WORKS』収録の「Good night」と近いアプローチでサウンドを構築。緩急のあるリズムが、ともすれば淡々として平坦になりがちなアレンジにアクセントをつけ、完成度を高めている。
10HELLO
ラテン・フレーヴァーをたっぷりふりかけた、メジャー感全開のサウンドで、福山のヴォーカルもリオのカーニバルさながらに明るくはじける。陽気なサンバのリズムが創造する新たな世界、遊びのある音作りが楽しい。
11Message
オリジナルを大胆に切り刻んだという印象は受けないが、饒舌さはなくとも、サビのキャッチーさを活かしている巧さが光る。跳ねたリズムひとつをとってみても、センスのよさが手にとるようにわかるリミックスとして仕上げている。
12Peach!!
ホーン・セクションが入ったアレンジで凹んだ気持をハイにしてくれたオリジナルのテイストに加え、ブラック・テイストを注入。なんでも平気さというちょっと足りない感じが曲の雰囲気にピッタリ合っている好リミックスだ。
13Like A Hurricane
アルバム『Fukuyama Masaharu ANOTHER WORKS』の中でもっとも手が加えられている。ヴォーカルのテンポを変えているにもかかわらず、オリジナルのテンポがサンプリングでカット・インしてくる。破壊と調和、リミックスすることの面白さが炸裂したナンバー。