ミニ・レビュー
ダラス・オースティンが5曲をプロデュース。特に彼の手掛けた(4)(5)(12)などは、世界でも通用するような上質のR&Bやポップスだ。派手な打ち込みは少なく、今までよりおとなしい印象だが、曲ごとに表情を変える安定した歌声が、実力を浮き彫りにするアルバムだ。
ガイドコメント
歌姫安室が2年ぶりに放つ、復帰後第1弾アルバム。世界のダラス・オースティンが手がけたあの話題作も収録している本作は、母・安室奈美恵の新たな魅力満載の1枚。これは欲しい!
収録曲
01Make the Connection Complete
1分ほどのインストゥルメンタル。ミニマルなリズムのなか、ヴォコーダー・ヴォイスがアルバム『GENIUS 2000』のオープニングを告げる小室哲哉によるナンバー。次曲「LOVE 2000」へのイントロダクションだ。
02LOVE 2000
意外な組み合わせで話題を呼んだ、シーラEと小室哲哉の共作曲。シングルとしてリリースされていながらもキャッチーさを極力排除して、ヘヴィでコアなダンス・チューンに仕上げている。安室奈美恵の新たな方向性を予感させるナンバー。
03RESPECT the POWER OF LOVE
Aメロ・Bメロで刻まれるカッティング・ギターとグルーヴィなベース・ラインがソウルフル。ゴスペル調のコーラスが絡み、一気にテンションが上がるサビ前が印象的で、メロディアスなサビとクールな前半を好対照に演出。
04LEAVIN'for LAS VEGAS
小室哲哉の特徴的なサウンド・プロダクションとは異なる、16ビートのギターのイントロは、ダラス・オースティンによるもの。そのサウンドの上で優しくささやくように歌うヴォーカル・スタイルには、安室奈美恵の新たな面が垣間見られる。
05SOMETHING'BOUT THE KISS
06I HAVE NEVER SEEN
07STILL IN LOVE
ダラス・オースティンによるハウス色の強いナンバー。生楽器を一切排除してプログラミングのみで作られたサウンドは無機質かと思わせるも、安室奈美恵の感情たっぷりのヴォーカルによって温かみを帯びていて、ヴォーカルのパワーを感じる。
08MI CORAZON (TE'AMOUR)
ラーモニ・サグナロがフィーチャーされたR&Bナンバー。サグナロのギターとシーラEのパーカッションによってメキシカンな雰囲気たっぷりに仕上げられており、単なるR&Bとは色彩の異なるサウンドとなっている。
09YOU ARE THE ONE (フィーチャリング・イマジン)
ヴォーカルにイマジンが参加した、感情的でブラック・フィーリングたっぷりなスティーヴィー・ワンダー直系のヴォーカルを披露し、貫禄を誇示しているナンバー。決して力むことなく、マイペースで自然体の安室奈美恵のヴォーカルは素晴らしい。
10KISS-AND-RIDE
静かに自然体のヴォーカル・ワークが印象的なミディアムR&Bナンバー。ポップなサウンドに聴こえるが、同じビートのリフレインから生じるグルーヴに焦点を当てて、ファンクへも通ずる音楽性をにじませている。
11THINGS I COLLECTED
ダラス・オースティンによるシンプルでスロウなR&Bナンバー。淡々とした雰囲気で展開していく曲調がゆえ、安室奈美恵のヴォーカリストとしての実力がより存分に味わえる。ライトな感覚で歌っているようだが、感情的な側面もしっかりのぞかせている。
12NEXT TO YOU
全パートがプログラミングによって手掛けられたダンサブルなナンバー。ステディなリズムに対しての安室奈美恵のヴォーカルは、かなりの抑揚を持ってはいるが、決して熱くならない、クールな雰囲気を保った高い歌唱力を見せている。
13ASKING WHY
小室哲哉によるラブ・バラード。プログラミングを活かしたサウンドながら生っぽさが漂うのは、美久月千晴をベーシストに迎えたことが大きい。ヴォーカルにあわせ伴奏するような、“歌伴(うたばん)”的なベースが入ったことで、より温かみが活かされたものとなっている。
14GIVE IT
美しいアコースティック・ピアノが印象的なミディアム・バラード。メガ・ヒットを放っていた頃を思い起こさせるようなキャッチーなメロディは、小室哲哉によるもの。安室奈美恵を知り得ている彼だからこそ、メロディにヴォーカルがすんなりと馴染んでいるといえる。
15LOG OFF
アルバム『GENIUS 2000』に収録の、小室哲哉によるインストゥルメンタル。アルバムを引き締める役割を持つとともに、本編の余韻を楽しめるような、彼の手腕が発揮されたクロージング・ナンバーに仕上げている。