ミニ・レビュー
ストーンズ公演で前座を務めて話題を集めたオーストラリア出身の飛び切りイキのいいロック・バンド、ジェットのデビュー作。いまや数少なくなったストーンズばりのストレートでワイルドなロックンロールが逆に新鮮に聴こえる。ひさびさの大型新人の登場だ。
ガイドコメント
ロックンロール・リバイバルとネオ・ガレージ・ロック界をリードするバンドの1つとして注目される、メルボルン出身の4人組のデビュー作。エレクトラが破格の契約金で競り落としたスーパー大型新人だ。
収録曲
01LAST CHANCE
“ラスト・チャンス”に賭ける意気込みを封じ込めた、初期ローリング・ストーンズを思わせる刹那的なガレージ・ロック・ナンバー。全体が一丸となって迫ってくるドライヴ感満点のバンド・アンサンブルは、ワイルド極まりない。
02ARE YOU GONNA BE MY GIRL
iPodのTV-CMに使われて話題になった一曲。ベース、ドラム、ギターとインタールードに楽器が次々と重なっていき、強烈なリフにノックアウトされる。古臭さの中にも新しさを感じさせる新世代のロック・スタンダード。
03ROLLOVER D.J.
ザ・スミスの「パニック」にも通じる、軽薄なダンス・ミュージックに対するアンチテーゼ。ロック・バンドの魅力をこれでもかと封じ込めた熱狂のロックンロールだ。ビリー・プレストンがハモンド・オルガン奏者としてゲスト参加。
04LOOK WHAT YOU'VE DONE
サイケデリック期のビートルズをトレースした幻想的なバラード・ナンバー。大人になって初めて分かる“若気の至り”を振り返ったような歌詞とノスタルジックなメロディ・ラインが見事にマッチしており、胸を打つ。
05GET WHAT YOU NEED
リズミカルなギター・リフにアメリカ南部の香りが漂うブルース・ロック・ナンバー。「自分の手に入れたいものを掴み取るんだ!」と力強く繰り返される、ポジティヴな歌詞がリスナーを勇気づける。押し付けがましくない応援歌だ。
06MOVE ON
君に会えるまで、とにかく前に進んでいくしかない……。そんな決意を噛みしめるかのように丁寧に歌い上げた、ブルージィなアコースティック・バラード。アナログ・レコード調のスクラッチ・ノイズを織り交ぜたサウンド処理がユニークだ。
07RADIO SONG
「自分たちの曲がラジオで流れることはないだろう」。そんなジェットの下積み時代の苛立ちを皮肉っぽく歌い上げた、やさぐれたスロー・バラード。メンバーの息がピッタリと合った、美しい3声のコーラス・ワークに思わずうっとり。
08GET ME OUTTA HERE
「気が狂いそうなほど嫌な状況に甘んじずに、どうにかしてそこから抜け出すんだ!」。そんな生への渇望が込められた前向きなロックンロール・ソング。元ジェリーフィッシュのロジャー・マニングがメロディアスなピアノを奏でている。
09COLD HARD BITCH
思いっきり拳をあげて踊り狂えるような曲を狙って作られた、お馬鹿な意味なしダンス・ナンバー。ザ・フー直系のキレのあるギター・ロック・サウンドで、キース・ムーンに肉薄した、手数の多い爆裂ドラミングが迫力満点!
10COME AROUND AGAIN
大切な人を失った男の悲しみが歌われた、号泣バラード・ナンバー。メンバーのキャメロン・マンシーの実体験に基づいて書かれた曲だからこそ、心を引き裂かれた痛みが言葉の壁を超えて心にまっすぐに伝わってくる。
11TAKE IT OR LEAVE IT
グルーヴィなジャングル・ビートから猛スピードで疾走する8ビートへとなだれ込む、狂騒のロックンロール。野性的な色気に満ちたサウンドには、オーストラリアの先輩バンドであるユー・アム・アイからの影響が垣間見られる。
12LAZY GUN
T.レックスを思わせるグラマラスなブギー・ロック・チューン。英国ロック的な叙情メロディの中に抑えきれない強い怒りが込められている、アメリカ政府が行なっている数々の悪事を批判したポリティカルなメッセージ・ソングだ。
13TIMOTHY
突発性乳児死亡症で亡くなってしまったキャメロン・マンシーの兄へ捧げられた、荘厳なバラード・ナンバー。アコースティック・ギターを中心に組み立てられたメランコリックかつサイケデリックなサウンドが、深い悲しみを描き出す。
14HEY KIDS