ミニ・レビュー
久保田利伸のアルバムはデビュー25周年を意識したわけでもないだろうが、結果的にこの四半世紀に受け止めてきた諸々を網羅したような作品となった。EXILE ATSUSHIとのデュエットやこれまでのヒット曲のフレーズ満載の楽曲などお楽しみ企画(!?)も含め、ポップな感覚にあふれ、都会の味わいの一作。
ガイドコメント
2011年6月でデビュー25周年を迎えた久保田利伸のオリジナル・アルバム。EXILE ATSUSHIとのコラボ曲「Golden Smile」や井上陽水のカヴァー「海へ来なさい」など、話題満載の楽曲がそろったファンキー・アイテムだ。
収録曲
01Gold Skool〜Foreplay〜
アルバム『Gold Skool』の冒頭を飾る50秒のイントロダクション・トラック。25周年を迎えた今でも胸には昔と変わらない不変のスタイル=“Gold Skool”を持ち続けていると、やわらかなグルーヴに乗せて語るように歌う。
02Jungle Love
ジャングルやジェーンなどのフレーズからテレビで見た『ターザン』をモチーフにしたと思われるグルーヴィなアップ。コンクリート・ジャングルをすり抜け、街の光を浴びながらのアーバン・ラヴ・ストーリーといった風情か。ワイルドだがしっかりとR&Bマナーは健在。
03Wednesday Lounge
顔見知りのにぎやかな話し声が聞こえるラウンジへ立ち寄ってみる……久保田自身のニューヨークでのライフスタイルを映し出したような歌だ。明るいネオソウル調のサウンドに乗せて、やわらかな歌唱で上機嫌な夜の風景を演出している。
04Winds
メロウなフィリー・ソウル風ミッド・スロー。大切な人が去り、心にポッカリと穴が開いたような心境を綴った松尾潔の詞世界が秀逸。それに応えるように、久保田もエル・デバージばりの全編ファルセットによる歌唱で愛惜を醸し出している。
05Prisoner
ただ目前の恋に溺れ、感情の制御ができない罪深き心情を描いたアダルトなミディアムR&B。図太くもグルーヴィなグラウンドビートをボトムにしたソウルIIソウル的なアプローチが、スリリングな世界を創り出している。
06Golden Smile (feat.EXILE ATSUSHI)
EXILEのATSUSHIとのデュエット。ATSUSHIが弾いたピアノに乗せて久保田が即興で歌ったことから実現した、清らかでハートウォームなバラードだ。いつまでも君の笑顔を見守っていたいという深淵な気持ちが、二人の歌唱からも伝わってくる。
07Gold Skool〜The play〜
アルバム『Gold Skool』中盤に配されたインタールード。盟友・柿崎洋一郎が爪弾く優しいギターをバックに、これまで抱いてきた信念と不変のスタイル=“Gold Skool”への自負を語る。イントロ「〜Foreplay〜」よりも長いヴァージョンだ。
08Still In My Mind
力不足を感じながらも夢を捨てきれず、また前へと歩みはじめる男心を綴ったKREVAとの共作曲。やや速度を上げたヤーブロウ&ピープルズ「イージー・トゥナイト」をバックに、憂愁と憧憬が交差したメランコリックなR&Bを展開している。
09Tick Tock
懐かしい思い出の一片を切り出しながら、自分を育て無償の愛情を注いでくれた母親への感謝の念を綴ったパーソナルなナンバー。ALI-KICKによるアレサ・フランクリン「ウィズアウト・ラヴ」使いのレトロでセンチメンタルなトラックが、温かく包んでくれる。
10Rn'B Healing
濃厚なムードで包んだセクシーなメイク・ラヴァー。タイトルの一部にもあるマーヴィン・ゲイ「セクシャル・ヒーリング」など、久保田のR&Bに影響を与えた曲名をちりばめて、愛する人を癒し、自らを癒すスロウ・ジャムだ。
11海へ来なさい
井上陽水のカヴァー。NHK『SONGS』やライヴで披露したところ反響があり、改めての収録となった。気鋭のトラックメイカーMANABOONによる、エレピ音を強調したネオソウル・アレンジが見事。久保田の歌唱も心地よくたゆたう。
12流れ星と恋の雨 (毎度オブリガートver.)
25周年記念ソングのアルバム・ヴァージョン。軽やかなファンキー・グルーヴに乗りながら、これまでの自身の曲名やフレーズを盛り込んだ、約4分半の久保田利伸ダイジェストだ。ラストの“六番町も 霞町も〜”でスタジオと事務所にも感謝(=オブリガート)している。
13声にできない (English ver.)
東野圭吾原作の映画『夜明けの街で』エンディング・テーマ起用のソウル・バラード。英詞を手掛けたのは、野崎良太周辺で活躍するArvin homa aya。切なくやり切れない叶わぬ恋を描いた、2011年版「Missing」といえるラヴ・ソングだ。