ミニ・レビュー
デビューから1年、5つのシングル曲が収録された、ファースト・アルバムにしてベストといった趣のある一枚だ。突き抜けるような思い切りの良さと細部まで丁寧に歌い上げる彼女のヴォーカル力と表現力は類稀であり、R&Bを中心とした深いサウンドとの相性がとても良い。
ガイドコメント
精力的な活動で知名度を高めるシンガー・ソングライター、JASMINEの満を持しての1stアルバム。連続ヒットとなった「sad to say」「No More」などを収録、その実力が遺憾なく発揮された仕上がりに。
収録曲
01PRIDE
街の喧噪と心臓の脈拍音、性急な鍵盤……アリシア・キーズ風の雰囲気で幕を開けるアルバム『GOLD』のオープナー。彼女の歌い続けるプライドをきっぱりと宣言。平成と“Hey Say”を兼ねたライミングに勢いとセンスを感じる、緊張感漂うナンバーだ。
02sad to say
ジェフ・ミヤハラ制作による1stシングル。終わるはずのなかった恋が破れ去った悲しみと悔しさを“クソくらえ”と飾ることなくぶちまけた等身大の叫びが共感を与えそう。鍵盤のメロディは美麗だが、硬めに刻まれるビートが弱々しさを払拭する美メロR&Bだ。
03L.I.P.S.
ヴォイス・エフェクトを駆使したジェフ・ミヤハラ制作のクラブ・エレクトロ。言葉や見つめ合うだけじゃ足りないから早く唇を奪ってと誘う女性リード曲だ。“JASMINE”のコール&レスポンスを巧みに挟み込んだブリッジや詞に沿った効果音など、芸も細かい。
04Jealous
ジェフ・ミヤハラとジェレミー・ソウルによる4thシングル。彼女がいるなんて聞いてない……と妬みながらもプレイボーイの彼に魅せられてしまう恋心を綴る。“気持ちを弄ばないで!”という心の叫びを、哀愁と焦燥を帯びた歌唱&アレンジで描くR&Bチューン。
05Bad Girl.
ギター・ロックを導入して刺々しさと怒りを増長させたBACHLOGICの手腕が光るミッド。上手く生きられない自身への苛立ちを隠さずに吐露しながら、本当の自分自身となるまで見届けてやると覚悟する。シンガーとして生きることへの決意表明といえる。
06dear my friend
導入とラストに“もしもし、どうした?”の電話での会話を組み込んだ、親友へ慰めと励ましを送るJASMINE流メッセージ・ソング。2010年代でも流行のクラブ・エレクトロ調のサウンド制作はジェフ・ミヤハラ。清爽な風が吹き抜けるような晴れやかさが魅力だ。
07stage〜interlude〜
ジェフ・ミヤハラ制作によるアルバム『GOLD』収録のインタールード。ここは私のジャングルで、私の街で、私の世界で……私のステージなんだ! と強い意志を吐露していく。次曲「This Is Not A Game」への導入部にも機能した約1分のトラック。
08This Is Not A Game
“欲しがるならすぐに抱きしめて”という挑発的な句が鮮烈に響く、ジェフ・ミヤハラ制作の3rdシングル。続く“誰が見ていたってあたしで感じて”も官能的な句だが、自分の音楽で感じてとも読める。胸を掻きむしる苦悩や覚悟を歌唱に乗せたヒップホップ・ソウル風。
09CLUBBIN”
ヘヴィにうねるマサ小浜のギターを迎えた、MANABOON制作のファンキー・ロック。クラブ通いの一日をティーンエイジャーならではの等身大の表現で描き、ヒップホップ調のズルズルと引きずるようなライミングも特色。享楽と怠惰を行き来する心理描写が巧みだ。
10恋
ボン、ボンというボトムとハウス寄りの甘酸っぱさを加味した爽やかな上モノのマッチングが新鮮。“こんなあたしでも恋をするの”という乙女な一面を綴ったミディアムで、ローファイなアレンジなどを取り入れながら、サウンドでも恋愛下手さ加減を巧みに演出している。
11what you want?
ジェフ・ミヤハラ制作のメロウなミディアム。抜けのよい清涼なソウルフル・チューンだが、“何が欲しいの?”とソウル・ミュージック・マナーともいえるメイク・ラヴに言及しているところに好感。ワウの音色も絶妙な効果で、しっかりと大人を感じさせる。
12No More
涙のあとにしか味わえない笑顔が必ずあると、自らの胸に刻みつけた強い意志が清々しい。悲しみから抜け出そうともがくようなヴォーカルに、大人びた姿が感じられる。2ndシングルとなったジェフ・ミヤハラ制作によるミディアムR&Bチューン。
13Dreamin'
ジェフ・ミヤハラとジェレミー・ソウル共作による5thシングル。諦めかけた夢を捨てず“まだ願えば叶うかな”とつぶやく励ましは、シンガーとしての自身の道程を映し出しているよう。落ち着きある端正なミッド・スローで、ゴスペル・コーラスが奥行きを与える。
14Why
MANABOON制作によるシンセ・ポップ調ミッド・スロー。同じ星に生きながらなぜ傷つけ合いを繰り返すのか……明確な答えはないがもう逃げるのはゴメンと切ない胸の内を吐露する歌唱には貫禄すら感じる。不偏の愛の意味を問う、大人には身につまされる曲だ。