ガイドコメント
前作『レイト・レジストレーション』以来、約2年ぶりとなる3rdアルバム。コールドプレイのクリス・マーティンをフィーチャーしたタイトル・チューンやコモンへの提供が予定されていた「ザ・グローリー」などを収録している。
収録曲
01GOOD MORNING
“大学中退”をタイトルに冠したアルバムでソロ・キャリアをスタートさせたカニエが、ついに卒業の朝を迎えるという3rdアルバムの冒頭曲。エルトン・ジョン「僕を救ったプリマドンナ(Someone Saved My Life Tonight)」を速回ししたトラックは爽やかで厳か。
02CHAMPION
スティーリー・ダン「滅びゆく英雄(Kid Charlemagne)」の印象的なサビのフレーズだけをループさせ、シンプルに仕上げたヒップホップらしいトラックが軽快なグルーヴを紡ぎ出す、キャッチーなアップ。歌パートが多めでラップ好き以外にも聴きやすい。
03STRONGER
ロボット・ヴォイスが印象的なダフト・パンク「仕事は終わらない(Harder, Better, Faster, Stronger)」をサンプルする大胆な手法によりテクノ風サウンドを取り込んで全米を制したアップ・ナンバー。カニエは斬新なサウンドを乗りこなしてアグレッシヴに攻めまくる。
04I WONDER
シンプルなピアノの伴奏に素朴なヴォーカルが映える泣きの美曲=ラビ・シフレ「My Love」をサンプリング。古き良きヒップホップ・ビートにヴィヴィッドなシンセと荘厳な弦を加え、ネタの持ち味を最大限に引き出すという直球勝負が綺麗に決まっている。
05GOOD LIFE
T-PAIN、ニーヨにジョン・レジェンドと豪華なメンツによるヴォーカルをフィーチャーしたアップ。マイケル・ジャクソン「P.Y.T.(Pretty Young Thing)」の終盤のサビをスクリュー・ミックス風にスロー・テンポで再生したループが、抜群にカッコイイ仕上がり。
06CAN'T TELL ME NOTHING
ヤング・ジージーをフィーチャーした気怠い空気が漂うダーティ・サウス風の曲。T.I.のキャリアを支えてきたプロデューサーのDJ・トゥーンプを起用したナンバーだけあって、カニエにしてはやけにT.I.っぽいスタイルが特徴だ。
07BARRY BONDS
タイトルが示すように、次々に大きなヒットを飛ばす自分をホームラン王のバリー・ボンズになぞらえたナンバー。すっきりとしたカニエのラップに加えて、後半はリル・ウェインがネチネチとしたフロウを聴かせてくれるという、一曲で二度美味しい作り。
08DRUNK AND HOT GIRLS
音程感があるように作られたであろうフロウを故意に外すなどして、ヘロヘロに酔っぱらった状態を演出する技ありチューン。サウンド面でも同様に不安定なピッチを効果的に使用している。フィーチャー・ラッパーはモス・デフ。
09FLASHING LIGHTS
ラリー・ゴールドによる美しいストリングス・セクションにシンセ・サウンドやハンドクラップ入りの4つ打ちビートを組み合わせるという大胆なアレンジが、時代感の薄い不思議な世界を創り上げている。サビを歌うのはドゥウェレ。
10EVERYTHING I AM
カニエが得意とするゴスペル的な荘厳さをたたえたサウンドをバックに、自分らしさを説いて三流ラッパーを斬り捨てる。ネタ使いに選んだのがプリンス・フィリップ・ミッチェルのオールド・ソウルというのがまた渋い。DJ・プレミアがスクラッチで参加。
11THE GLORY
ソウルとも接点のあったシンガー・ソングライター=ローラ・ニーロ「セイヴ・ザ・カントリー(国を救え)」を速回しし、ジョン・レジェンドらによる合唱形式のコーラスを従えた、いかにもカニエ・スタイルのアップ。高揚感あふれるゴスペル・テイストが何とも心地よい。
12HOMECOMING
既聴感の強い70年代風のピアノのフレーズをループさせたシンプル極まりないビートをバックに、カニエのホームタウンであるシカゴへの愛を綴った地元賛歌。コールドプレイのクリス・マーティンのヴォーカルをフィーチャー。
13BIG BROTHER
ドラマティックなサウンドをバックに従え、ノー・IDなどカニエのキャリアをサポートしてきた恩人、とりわけジェイ・Zに対しての想いを吐露したナンバー。いちファンとしての描写からは、ある意味スターらしからぬところが感じられて興味深い。
14GOOD NIGHT
日本盤ボーナス・トラックではあるものの、アルバム『グラデュエーション』冒頭の「グッド・モーニング」と対をなすタイトルを持つという点で興味深い曲。ユー・ロイとスーパー・キャットをネタ使いし、濃厚なレゲエ・フレイヴァが楽しめる。
15BETTERSWEET POETRY
チェアメン・オブ・ザ・ボードの70'sソウルをネタ使いしたキュートなサウンドのナンバー。2ndアルバムの際にリークされ、ジョン・メイヤーとのコラボレーション曲ということもあって大いに話題になったものが、日本盤ボーナス・トラックとして正式に登場!