ミニ・レビュー
出すシングル常勝の実績がひかえているだけに、8作目となるアルバムも抜群の安定感。不安定なのは相変わらず女言葉で綴られる剛自作による歌詞(3)と、ジャケ写で見せる視線くらいか。林田健司(9)、久保田洋司(11)など、ソングライター陣の仕事も手堅い。
ガイドコメント
シングル「Anniversary」「ビロードの闇」を含む、通算8枚目のオリジナル・アルバム。サブ・タイトルの「-H・A・N・D-」とは“Have A Nice Day”のこととか。文字どおり“素敵な1日”が過ごせそうな1枚だ。
収録曲
01Arabesque〜千夜一夜の夢〜
フラメンコ調のギターに導かれて奏でられるラテン系のリズム、スパニッシュなフレーズに絡むストリングスがなまめかしい、ミディアム・ロック。KinKi Kidsふたりの大人の魅力が全開の1曲。
02Anniversary
偶然出会い恋に落ちた女性に向けて切々と胸の内を打ち明ける純度100%のラブ・ソングは、通算20枚目のシングル・ナンバー。美しいメロディと壮大なストリングス、ふたりだけの“Anniversary”にこの曲を贈られたら女性は号泣必至。
03恋涙
「なんでシングル・カットしなかったの!?」とファンの間で人気の高いラブ・ソング。切なく美しい、若さゆえの愛を、少し背伸びをした大人のKinKi Kidsが切々と歌い上げる。細かくグルーヴするリズム隊の16ビートが気持ちいい。
04【AOZORA】
フォーク・ギターの美しいアルペジオが印象的な、切ないラブ・バラード。誰もが経験する、切なく叶わない恋愛模様を、優しく力強く歌う。抽象的な歌詞で紡がれた曲なので、誰が聴いても強く深く感情移入できるはず。
05キミハカルマ
ラテン系風味のリズミックなバック・サウンドにハードでヘヴィなディストーション・ギターが強く絡むロック・ナンバー。アーティスト“KinKi Kids”としての一面を全面に押し出したオトナの1曲。
06Love Me More
光一くんのフィーチャー・ナンバーは、ポリリズミックな変則リズムにフラメンコ風のアコースティック・ギターを絡めたヘヴィーなR&B。サビで歌われる英語詞をサラリと美しく歌い上げる、アダルトなナンバー。
07Breath
剛くんをフィーチャーしたソロ・ナンバーは、不穏なコード・ワークが印象的なヘヴィなバラード。サイケデリックなエレピのヴォイシングに乗せて、突き放すように呟くようなヴォーカル・スタイルを見せつける。イメージを一変する大人な1曲。
08WATER SCREEN-theme of H-
アルバムのテーマ・ソングとして位置づけられた壮大なミディアム・インストゥルメンタル。幽玄な大地を想像させるシンセのリード、雨音をイメージするような効果音をバックにピアノが朗々たるテーマを奏でる。
09ビロードの闇
アコーディオンによるラテン風のイントロがスペインの真っ赤な太陽を想像させる、KinKi Kidsお得意のスペイン風味の大ヒット・シングル。カラッと乾いたサウンドと切ない歌詞がマッチした1曲だ。
10ダイヤモンド・ストーリー
ハードなディストーション・ギターが印象的な、ノリノリかつグルーヴィンなハード・ロック・ナンバー。さよならも言わずに旅立つ一人の男を描いた歌詞に、KinKiのふたりを投影して聴く女性ファンは多数。ライヴ栄えする1曲だ。
11駅までは同じ帰り道
元気いっぱいかつメロディックなホーン・セクションに導かれてKinKiのふたりが歌うのは、誰もが経験しただろう、切なく美しい片思い。学校帰りのわずかな時間、愛しいあの人と一緒に歩く、胸のときめきを4分間に完全パッケージ。
12未完のラブ・ソング
アコースティック・ピアノの美しい旋律に乗せて歌われるバラード・ナンバー。身勝手な愛、好きだからこそ傷つける、恋愛の悲しい一面を壮大な調べに乗せて歌い上げる。願い叶わず失恋してしまった少年少女にオススメ。
1399%LIBERTY
アルバムの最後を飾るのは、高らかなホーン・セクションによるイントロが印象的な昭和歌謡&特撮ヒーローのテーマ・ソング風なロック・ナンバー。元気いっぱいでありながらどこかエロティックな雰囲気が魅力的な1曲。
14In My Heart
雨の降る中での終わりゆく恋を歌ったバラード。“二人の明日が二つの明日になる”と歌う、その悲しいくらいに美しい二人のハーモニーが心の琴線に触れ、涙を誘う。ヴォーカルとストリングスの音の融合もまさに絶品。