ミニ・レビュー
平均年齢弱冠18歳という話題のUKバンドのデビュー盤。絶妙な青さを放ちながら、キャッチーなガレージ・ポップを奏でている。この抜群に楽しいR&Rこそ彼らの醍醐味だ。ストロークスを見いだしたジェイムズ・エンデコットが発掘したバンドというのも納得!
ガイドコメント
スコットランドから現われたUKロック・バンド、THE VIEWのデビュー・アルバム。オアシスやニュー・オーダー、ザ・ヴァーヴなどを手がけたオーウェン・モリスのプロデュースによる話題盤だ。
収録曲
01COMIN' DOWN
70年代のUKロックを想わせる、熱狂的な疾走型ロックンロール。エッジの効いたギターが激しくうなり、ドラムが暴れる。カイルのだみ声シャウトが曲全体を濃厚にし、当時平均年齢18歳とは思えない完成度を誇っている。
02SUPERSTAR TRADESMAN
クラッシュやリバティーンズらを彷彿とさせる、爽やか風味のポップ・チューン。労働者階級の人々が、自分の夢を追うために仕事を辞め、頑張って生きていく姿を描いている。大好きな音楽を生業とする、彼ら自身を歌った曲でもある。
03SAME JEANS
素朴なギターのメロディと温かい歌声が、牧歌的な雰囲気を作り出すギター・ロック。随所に入るハーモニカの音色が懐かしく、ケルティックな雰囲気も醸し出す。終盤のグンとスピードを上げていく部分では、ほとばしる若いエネルギーが感じられる。
04DON'T TELL ME
ギター・プレイを前面に出した、明るい雰囲気のミディアム・ナンバー。女との諍いを男の主観で綴った詞から、彼らの価値観が伝わるようで興味深い。わがままで奔放な男を表現する、表情豊かで個性的なピーターのギター演奏が面白い。
05SKAG TRENDY
緩急の変化に富んだ音楽に乗せ、声をひっくり返しながらおどけた調子で歌い上げるハイテンション・ナンバー。薬でハイになっていく感情を変調の効いたクレイジーな歌い方で表現。だが実は、薬ですべてを失った男の空しい話を歌っている。
06THE DON
ギターとタンバリンの音が素朴に絡むミディアム・ナンバー。感情の変化を音に置き換えたように、刻々と移り変わるメロディは、一つの物語を聴いているよう。野心を内に秘め、孤独に生きる労働階級の男の荒んだ日常を綴っている。
07THE FACE FOR RADIO
優しいアコースティック・ギターと甘い歌声に癒されるバラード。美しいメロディ作りを心がける、彼らの音楽観が伝わってくる。穏やかな曲調とは裏腹に、夢に生きる傲慢な男を眺め“身の程を思い知れ”と語る皮肉めいた詞が衝撃的だ。
08WASTED LITTLE DJ'S
当時平均年齢18歳に相応しい、爽やかでエネルギッシュな疾走系ロック。全体に微かに漂うポップ感が、胸を躍らせるような爽快感を生み出している。イカしたDJたちとの熱く過激な夜を、ハイテンションで歌っている。
09GRAN'S FOR TEA
調子外れのヴォーカルにうなりの効いたギター・リフが暴れる、最高にクールなアッパー・チューン。勢い良く叩かれるドラムに、テンポ良く走り出すベース・ライン。メンバー全員のシャウトも入って、若いエネルギーが弾け飛ぶようだ。
10DANCE INTO THE NIGHT
女と音楽と酒を愛した時代を歌う、メロディアスでキャッチーなロックンロール。ビートルズやオアシスから影響を受けた音楽感とタイトなリズムが気持ち良い。70年代の香りたっぷりなのに、どこか新しい感覚が彼ららしい。
11CLAUDIA
アコースティック・ギターで奏でる、ポップで微かにパンキッシュなナンバー。恋に胸を焦がす若い男の、かきたてるような焦燥感を物悲しいメロディで表現している。胸をキュンとさせるギターの演奏も巧みで、清々しい余韻が残る。
12STREET LIGHTS
暴れまわるギターの音で10代の青年の無限の力を表現したロック・ナンバー。“俺は街を動かしたい、デカイことがやりたい”と熱く語るように歌う姿には、音楽に向けた熱い情熱と力がみなぎっている。表情豊かなギターも存在感たっぷり。
13WASTELAND
お経のようなつぶやきに始まり、突然、ドラムの高速リズムに飲み込まれる衝撃ナンバー。ケルティックな民族音を取り入れつつ、高揚を誘う高音ギターが熱くうなりを上げる。クールなワルを気取る詞と酒に酔ったようにハイなコーラスが面白い。
14TYPICAL TIME
わずか32秒のノスタルジック・ナンバー。優しいギター音と温かなハーモニカのみの演奏をバックに、伸び伸びとした歌声が心地良く耳に溶け込んでくる。のどかな田舎道を行くような、ほっとした不思議な余韻を残す仕上がりだ。
15POSH BOYS
激しく炸裂するギターが刺激的なエネルギッシュ・ロックンロール。思わず飛び跳ねたくなるリズム感は熱度たっぷりで、ライヴでも盛り上がりそう。中盤から入ってくるメロコア風の音展開など、色彩感豊かな演奏で楽しませてくれる。
16SCREAMIN' N SHOUTIN'
カイルとキーレンの掛け合いヴォーカルが最高にクレイジーな、変拍子のロックンロール。軽快なサウンド、独特のギター・ピッキング、そして調子外れに叫びあう二人の歌声が熱情的。声をひっくり返しての狂気的なラップも聴かせてくれる。
17CHERRY GIRL
瑞々しい爽快感を漂わせるミディアム・ナンバー。熱い息遣いまでが届いてくるカイルの歌声とライヴ録音に近いシンプルで装飾の少ないサウンドが美しい。メロディの美しさを大切にする、彼らの真摯な姿勢に心を打たれる。