ビースティ・ボーイズ / ハロー・ナスティ

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ビースティ・ボーイズ / ハロー・ナスティ
CD
ミニ・レビュー
前作ではパンク体質なヒップホップを展開した3人だったが、今作ではストレートなラップを聴かせているといった印象が強い。しかし、いろんな素材を音遊びのように組み合わせるセンスは相変わらず。悪ガキ然としたユーモア感覚もいいアクセントとなっている。
ガイドコメント
本人たちの希望により日本盤のみ特別仕様(どんな?)でリリースされる4年ぶりの新作は、ヘヴィかつファンキーなサウンドに。なんでも潜水艦で録音もしたとか(何故に?)。ご期待あれ。
収録曲
01SUPER DISCO BEAKIN'
前作から4年ぶりとなった『ハロー・ナスティ』の冒頭を飾る、そのブランクを一気に埋めてみせたエレクトロ・ディスコ・ナンバー。音作りが以前よりも研ぎ澄まされている一方で、能天気なテンションはしっかりと健在。
02THE MOVE
地下のスタジオで録音作業に勤しんだ際のテンションがそのまま作品化された、不夜城気分のヒップホップ・ナンバー。複雑にして滑らかなビートに、ヒップホップ・ミュージシャンとしての突出したスキルが再確認できる。
03REMOTE CONTROL
リモコンでテレビを操作しているつもりが、逆にテレビから受け取る情報によって操作されてもいることを示唆したリリック。ギター、ベース、ドラムスをフル活用したサウンドに、“ロック・バンド”としての個性が光っている。
04SONG FOR THE MAN
チープすぎるオルガンや、妙に気だるいコーラスなど、まるで60年代B級映画のサントラのようにサイケデリックな趣。かつて自分たちが見せたマチズモ(=男性優位主義)への反動か、世の男どもの女性蔑視に対する苦言を呈したリリックだ。
05JUST A TEST
『ハロー・ナスティ』収録曲中では、かなりストレートに展開されているヒップホップ・ナンバー。とはいえ、ビートもスクラッチも創意工夫に富んでいて、直球と見せかけカット・ボールを投げてくるような意外性も多く仕掛けられている。
06BODY MOVIN'
頭を空にして楽しみたいファンキーなエクササイズ・ナンバー。いかにもヒップホップらしい語彙を使ったオールドスクール調だが、スティール・ドラムの秀逸なループの効果もあって、新種のオールドスクール化に成功している。
07INTERGALACTIC
ヒップホップへの畏敬を感じさせる緻密なリリック上で、自らを“オールドスクール・ヒップホップの家系図出身”と定義。ヴォコーダーを使ったロボット声など、近未来感覚あふれるエレクトロ・サウンドが見事に爛漫。
08SNEAKIN' OUT THE HOSPITAL
アダムのデモを元にしたクールなインスト・ナンバー。ドラム、ベース、カリンバを彼がプレイし、そこにパーカッションやスクラッチを加えてある。ボサ・ノヴァを、ヒップホップ調の強く太いビートで演じたような趣。
09PUTTING SHAME IN YOUR GAME
“化けの皮をはがされる”の意味を持つヒップホップならではの言い回しをもじった曲題で、ルーズなビートを使ったトラックには落ち着いた空気が漂う。リリックでは、「自分たちの音楽をコマーシャルには売らない」と宣言。
10FLOWIN' PROSE
言葉に関する哲学的な思いを言葉数の多いリリックで述べたナンバー。リリック同様、トラックも思索に富んだディープな面持ちで、発せられるライムもQ-ティップのように抑揚を抑制。ラップよりも読経に近い雰囲気だ。
11AND ME
ロウ・ファイ感覚あふれるドラムンベース・ナンバー。スローでメロディアスなトラックの浮遊感が、抽象的な表現を連ねたリリックにふわふわと幻想的なイメージを与えている。ビースティーズ流インドア・ポップだ。
12THREE MC'S AND ONE DJ
三人のオールドスクールな掛け合いとマスター・マイクのスクラッチ(+留守電メッセージ)で構成された、前代未聞のセッション作品。鮮やかなマイク・リレーに神業スクラッチ。圧倒的な技量ゆえになし得た驚愕の生本番テイク。
13CAN'T, WON'T, DON'T STOP
ビズ・マーキーがゲスト参加した小気味よいラップ・ナンバーで、国によっては「The Grasshopper Unit (Keep Movin')」と表記されている。リリックには、“東スポ”的な都市伝説“ウォルト・ディズニー冷凍保存説”も引用されている。
14SONG FOR JUNIOR
“泣きのギター”を抜き取ったサンタナ・バンドのような演奏に驚かされるラテン・ナンバー。ジル・カニフ嬢の艶っぽい歌声、フルート、ヴィブラフォンや聴衆の拍手を採り入れ、ラウンジで演奏している風の演出を施している。
15I DON'T KNOW
アントニオ・カルロス・ジョビンの「三月の雨」に触発されたボサ・ノヴァ・ナンバーで、羽鳥ミホがヴォーカルで参加。ヒップホップ色希薄な柔和な作風に、アダムのシンガー・ソングライター的資質も散見する好作品。
16THE NEGOTIATON LIMERICK FILE
ルーツ&ワールド・ミュージックなど雑多な音楽ジャンルに、複雑難儀なリズムを混ぜ合わせた最先端技巧作品。「何なら定型詩で迫ろうか」と歌うリリックどおり、五行戯詩と凝った押韻でスキルの高さを誇示してみせる。
17ELECTRIFY
ストラヴィンスキーのバレエ組曲「火の鳥」を大胆に使ったスリリングなトラック。トリッキーなスクラッチと荘厳で荒々しい「火の鳥」のリズムとの違和感ない連結で、ヒップホップ/クラシック音楽の新たな魅力を提案した作品。
18PICTURE THIS
ブルック・ウィリアムスをフィーチャーしたムーディなナンバー。彼女のセクシーな歌唱にB級ホラー映画ばりの大仰で奇怪なサウンド・エフェクトが襲いかかる。ミステリアスな歌詞から察するに、ヒロイン危機一髪の場面だろうか。
19UNITE
ヒップホップ的語彙でのオールドスクール・ナンバー。楽曲の骨格は正統派の作りだが、トラックの品質を格段に上げている高度なスクラッチや、オルガンとピアノのリフを使ったファンクネスに、やはり先鋭的感性を見出さずにはいられない。
20DEDICATION
共作者としてクレジットされたマーク西田の弾くキーボードが、電撃的で雷鳴のようなサウンドをほとばしらせている。ダブ処理を加えたファンク・サウンドは、プログレッシヴ・ロックに通じる魅力も放っている。
21DR. LEE, PHD
『まんが日本昔ばなし』の常田富士男にも匹敵する、ゆるゆるのヴォーカル。声の主はゲスト参加のリー・ペリーで、御大の無手勝流の姿勢がそのまま音像化したようなダブ・トラックだ。聴けば気分すっきりのリラックス作。
22INSTANT DEATH
薬物禍で友人デイヴ、アルコール中毒でアダムの母親を失った彼らによる哀悼ナンバー。センシティヴな部分をこれまでにないレベルで作品化した曲で、ビートが強度を増す終盤でもなお、その内省的な雰囲気は堅持されている。
23SLOW AND LOW
RUN DMCが『キング・オブ・ロック』に収録しなかった曲を元にした曲で、サウンドは作り変えたものの歌詞はほぼ原曲のまま。スクラッチとパワー・コードの相互作用で、ヒップホップとロックが同居した音楽性を強調している。
アーティスト
  • ビースティ・ボーイズ
    1981年に結成。マイク・D、MCA、アド・ロックの3人組。当初はハードコア・パンク・バンドだったが、リック・ルービンと出会いヒップホップに転身。86年のデビュー作『ライセンスト・トゥ・イル』が大ヒット。以後、『チェック・ユア・ヘッド』など……
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