[Disc 1]〈ELV1S 30 #1 HITS〉
01HEARTBREAK HOTEL
1956年1月に発表されたメジャー・デビュー曲。いきなりヴォーカルから始まる展開が新鮮。4ビートを刻むウッド・ベース、エレキ・ギターの鋭角的な音、妖しいカクテル・ピアノなどを引き連れて、エルヴィスが落差の激しいメロディを痙攣しながら歌う。
02DON'T BE CRUEL
1956年7月に発表された3rdシングル。オーティス・ブラックウェルが初めてエルヴィスに提供した曲。ユーモラスなサウンドをバックに、エルヴィスもややコミカルなタッチで歌っている。ユーモアのセンスがロックンロールの大切な要素であることを教えてくれる曲。
03HOUND DOG
1956年7月に発表された「冷たくしないで」のカップリング曲。リーバー=ストーラーが1952年に書いたラテン調のR&Bだが、エルヴィスのヴァージョンはオリジナル以上に独創的。バックの演奏も含めて、最もアグレッシヴなエルヴィスを体験できる曲のひとつ。
04LOVE ME TENDER
1956年9月に発表された初主演映画『やさしく愛して』の主題歌。作曲家ケン・ダービーが19世紀の歌曲「オーラ・リー」を下敷きに書いたラブ・ソング。ひたすら甘いラブ・ソングだが、それでもエルヴィスが歌えば下品にも低俗にもならない、という例のひとつ。
05TOO MUCH
1957年1月に発表された全米No.1ヒット。バーナード・ハーディソンの原曲はカントリー調だが、エルヴィスのヴァージョンはR&B色をより強調。間奏のギター・ソロでのスコッティ・ムーアのミスが良い意味での副作用を生んでいることでも知られる。
06ALL SHOOK UP
1957年3月に発表された全米No.1ヒット。「冷たくしないで」のオーティス・ブラックウェルの曲で、コミカルな表現が最大の効果を上げているロックンロールのひとつ。ポール・マッカートニーも「いつ聴いてもハッピーになれる曲」と語っている。
07(LET ME BE YOUR) TEDDY BEAR
1957年1月に発表された映画『さまよう青春』挿入歌。元アップルジャックスのカル・マン、バーニー・ロウが書いた曲。エルヴィスの高音と低音の声の巧みな使い分けで、キュートな魅力を演出。ポップ、R&B、カントリーのチャートで三冠王に輝いた。
08JAILHOUSE ROCK
アメリカが生み出したロックンロール・スター、エルヴィス・プレスリーが1957年に発表したスタンダード中のスタンダード。やさぐれ不良たちが踊り出すような挑発的なサウンド、力強いアメリカに憧れた世代に。
09DON'T
1958年1月に発表された全米No.1ヒット。リーバー=ストーラーがエルヴィスのために書いたR&B調のバラード。若きエルヴィスの歌唱力を改めて思い知らせてくれる。過不足のないコーラスと控えめな演奏も良いが、何よりもエルヴィスのテクニックが光る曲。
10HARD HEADED WOMAN
1958年6月に発表された映画『闇に響く声』挿入歌。「のっぽのサリー」や「ロックンロール・ミュージック」などと同様のスタイルの狂騒的なロックンロール。エルヴィスの勢いも圧巻だが、旧約聖書から引用された男と女の挿話をフィーチャーした歌詞も凄い。
11ONE NIGHT
1958年10月に発表された全米4位のヒット曲。スマイリー・ルイスの1956年のヒット曲のカヴァーで、エルヴィスがすべてを吐き出すかのように赤裸々に歌うロッカ・バラード。歌詞を穏当な表現に差し換えた意味がないほど、過激にエモーショナルなヴォーカルが快感。
12(NOW AND THEN THERE'S) A FOOL SUCH AS I
1959年3月に発表された全米2位のヒット曲。エルヴィスならではの天才的な歌唱法で、ハンク・スノウのカントリー・ソングを見事にロカビリー化している。この曲にはオリジナル・シングル・ヴァージョンも存在する。
13A BIG HUNK O' LOVE
1959年4月に発表された全米No.1ヒット。狂騒的なリズム・セクションと共に疾走するピアノを追いかけながら、エルヴィスが「俺はデカい愛の塊が欲しいだけ」と歌う。50年代のエルヴィスのパワーが発揮されている曲のひとつだが、シングルとは別ヴァージョン。
14STUCK ON YOU
1960年3月に発表された全米No.1ヒット。除隊直後に徹夜で録音したことで知られるミディアム・テンポのコミカルな曲。ここでのエルヴィスはやや精彩に欠けるが、それでも彼らしく輝く瞬間はあり、あまり目立たないタイプのこの曲を、標準以上のレベルに引き上げている。
15IT'S NOW OR NEVER
1960年7月に発表された全米No.1ヒット。「オー・ソレ・ミオ」を下敷きにしたこのラブ・ソングで、エルヴィスは兵役中に会得した自己流のベルカント唱法を披露している。この曲は彼のお気に入りの1曲だったようで、70年代のライヴでもよく歌っていた。
16ARE YOU LONESOME TONIGHT?
1960年11月に発表された全米No.1ヒット。アル・ジョルスンの名曲をカヴァーしたラブ・バラード。アコギとコーラスをバックに独特のヴィブラートを駆使したヴォーカルを披露し、間奏には長いセリフも呟く。エルヴィスには似合いすぎるほど似合う曲のひとつ。
17WOODEN HEART
1960年に公開された映画『G.I.ブルース』挿入歌。ドイツ民謡「別れ」を下敷きにしたラブ・バラード。素直に歌ってもエルヴィス節になってしまう独創性はさすが。もちろんドイツ語でも少し歌っている。全英チャートではNo.1ヒットを記録した。
18SURRENDER
1961年2月に発表された全米No.1ヒット。『007』ばりのスリリングなサウンドをバックにエルヴィスが歌い始めるイタリア民謡「帰れソレントへ」を下敷きにしたラブ・バラード。燃え上がる恋の炎のように熱く歌い上げるエルヴィスの歌声が恐ろしく魅惑的な1曲。
19(MARIE'S THE NAME) HIS LATEST FLAME
1961年8月に発表された全米4位のヒット曲。当初はデル・シャノンのために書かれたらしいドク・ポーマス=モート・シューマンの曲。ブラシでのソフトなジャングル・ビートに乗って、しなやかな歌声を披露している。デル・シャノン版と聴き比べよう。
20CAN'T HELP FALLING IN LOVE
稀代のロック・スター、プレスリーを代表する名ラヴ・バラード。18世紀フランスのメロディをベースにしており、そのおっとりとした上品さと情熱的なヴォーカルは聴き手の心を深く打つ。実にエレガントでセクシーだ。
21GOOD LUCK CHARM
1962年3月に発表された全米No.1ヒット。ミディアム・テンポのシャッフル・ビートに乗って、エルヴィスが甘いバリトン・ヴォイスで歌うラブ・ソング。これといった特徴のない曲のようにも思えるが、エルヴィスの歌声をひたすら堪能するための曲としては悪くない。
22SHE'S NOT YOU
1962年7月に発表された全英No.1ヒット。リーバー=ストーラー+ドク・ポーマスという強力なトリオの曲だが、全米では5位。時代を象徴するような甘いラブ・バラードだが、ナッシュヴィル録音の演奏は丁寧で、エルヴィスのバリトン・ヴォイスも魅力的。
23RETURN TO SENDER
1962年10月に発表された、映画『ガール! ガール! ガール!』挿入歌。エルヴィスにとっては最良の作曲家のひとりだったオーティス・ブラックウェルのコミカルなポップ・ソングを見事に演じている。原題は「送り主に返送せよ」。コーラスも楽しい全米2位のヒット曲。
24(YOU'RE THE) DEVIL IN DISGUISE
1963年6月に発表された全米3位のヒット曲。バラードとロカビリーを組み合わせた意欲作で、両者の対比と場面転換が鮮やか。「天使に変装した悪魔」みたいな女の子について、エルヴィスが剛柔自在の歌声で表現している。ナッシュヴィル録音によるバックの演奏も秀逸。
25CRYING IN THE CHAPEL
1965年4月に発表された全米3位のヒット曲。1960年10月の録音だから、4年半も寝かせたシングル曲だ。もうひとつの得意分野であるこのゴスペル・ソングで、エルヴィスはスピリチュアルな歌声を聴かせてくれる。1964〜68年の5年間における唯一のトップ10ヒット。
26IN THE GHETTO
1969年4月に発表された全米3位のヒット曲。シンガー・ソングライターのマック・デイヴィスが書いたプロテスト・ソング。アコギとストリングスとコーラスをフィーチャーした劇的なサウンドをバックに、エルヴィスは情感を抑えた見事なヴォーカルを披露している。
27SUSPICIOUS MINDS
1969年8月に発表された7年ぶりの全米No.1ヒット。さまざまな音楽の滋養を含むゴージャスなメンフィス・サウンドをバックに、エルヴィスが自身のキャリアを凝縮したような歌声を披露する。ロックンロールとゴスペルとの間に生まれた素晴らしい音楽がここにはある。
28THE WONDER OF YOU
70年2月、ラスヴェガスのインターナショナル・ホテルでのライヴ録音。豪華なオーケストラ・サウンドをバックに、エルヴィスが全能の神のごとくパワフルに歌う。ジェイムズ・バートンのギター・ソロも秀逸。同年4月に発表され、全米チャート9位のヒットを記録。
29BURNING LOVE
72年8月に発表された映画『エルヴィス・オン・ツアー』主題歌。全能の神に向かって「俺は世界中を焼きつくしちまうぜ」とエルヴィスが歌う、豪華で不らちで土臭いロックンロールの傑作。最新のサウンドと最強のヴォーカルによる饗宴。全米2位のヒットを記録。
30WAY DOWN
77年7月に発表された生前最後のシングル。76年10月、グレイスランドのジャングル・ルームでの最後のスタジオ録音セッションの1曲。体調不良を伝えられていたエルヴィスが最善を尽くして歌ったミディアム・アップのブギ。彼の死後、全米18位のヒットを記録。
31A LITTLE LESS CONVERSATION
2002年6月に発表された全英No.1ヒット。オリジナルは映画『バギー万歳』の挿入歌だが、これは『'68カムバック・スペシャル』の音源をJXLがリミックスしたヴァージョン。ワールド・カップの年にナイキのサッカーのCMに使用されたことで世界的なヒットとなった。
[Disc 2]〈ELVIS 2ND TO NONE〉
01THAT'S ALL RIGHT
1954年7月に発表されたサン・レコードからのデビュー曲。ロカビリーの原型となったこのアーサー・クルーダップのブルース曲のカヴァーは、レコーディングの合間のエルヴィスの小さな悪戯から生まれた。黒人のように歌える白人による奇跡的な創造の瞬間の記録。
02I FORGOT TO REMEMBER
1955年8月、「ミステリー・トレイン」とのカップリングでサン・レコードから発表されたシングル曲。当初はエルヴィスが録音にはあまり乗り気ではなかったという、2ビートのカントリー・ソング。ビルボードのカントリー・チャートでNo.1ヒットを記録している。
03BLUE SUEDE SHOES
1956年8月に発表されたシングル曲。サン・レコードの後輩カール・パーキンスの曲をカヴァー。カントリー調のパーキンス版とは異なり、エルヴィス版はストレートなロックンロール・ヴァージョン。唯一無二の個性が光るカヴァーだが、全米24位が最高位。
04I WANT YOU, I NEED YOU, I LOVE YOU
1956年5月に発表されたRCAビクターからの2ndシングル。モーリス・マイセルズとアイラ・コズロフが録音スタジオで書き上げたばかりの曲を、エルヴィスが即興的に歌ったというロッカ・バラード。若きエルヴィスの熱い勢いが伝わってくる全米3位のヒット曲。
05LOVE ME
1956年10月に発表された全米6位のヒット曲。リーバー=ストーラーが書いたラブ・バラードの名曲。呟くようなヴォーカルから始まり、切々と訴えるように歌うエルヴィスが魅力的。後年のライヴでも好んで採り上げていた彼のお気に入りのレパートリーのひとつ。
06MEAN WOMAN BLUES
1957年6月に発表された映画『さまよう青春』挿入歌。映画ではジュークボックスにコインを入れて、この曲を歌い踊る。エルヴィスの跳ねるようなヴォーカルがイカしてるシャッフル(といっても2と4の間くらいの)ビートのロックンロール。短いギター・ソロも印象的。
07LOVING YOU
1957年6月に「テディ・ベア」とのカップリングで発表された、映画『さまよう青春』の主題歌。ピアノとコーラスをバックに、エルヴィスが囁くように歌うリーバー=ストーラー作のラブ・バラード。「テディ・ベア」は全米No.1ヒットだが、こちらは28位が最高位。
08TREAT ME NICE
1957年9月に「監獄ロック」とのカップリングで発表されたシングル・ヴァージョン。映画『監獄ロック』挿入版よりもキーを下げて、エルヴィスの低音を活かすマンブリング唱法をフィーチャーした軽快なロカビリー・ナンバー。当時の邦題は「やさしくしてね」。
09WEAR MY RING AROUND YOUR NECK
1958年4月に発表された全米3位のヒット曲。2と4の間のシャッフル・ビートに乗って、エルヴィスの軽やかなヴォーカルが快調に飛ばすロカビリー・ナンバー。お気に入りのギター・スラップが、ドラムスと同じくらい大切なパーカッション効果を上げている。
10KING CREOLE
1958年7月に発表された映画『闇に響く声』の主題歌。映画の舞台がニューオリンズだから、ニューオリンズ・ジャズとロカビリーを融合したようなサウンドが聴ける。エルヴィスの早口のヴォーカルも楽しいが、ギター・ソロやリズム・セクションもイカしてる。
11TROUBLE
1958年8月に発表された映画『闇に響く声』の主題歌。マディ・ウォーターズのリフを借用したリーバー=ストーラー作の名曲。前半のエルヴィスのドスの効いたヴォーカルもカッコいいが、後半の4ビートのジャズっぽいホーン&リズム・セクションのパートも楽しい。
12I GOT STUNG
1958年10月に「ワン・ナイト」とのカップリングで発表された曲。チェット・アトキンス制作のナッシュヴィル録音による良質のサウンドが楽しめるロカビリー・ナンバー。エルヴィスのヴォーカルも快調だが、ボブ・ムーアやバディ・ハーマンらの演奏も光る。
13I NEED YOUR LOVE TONIGHT
1959年3月に「ア・フール・サッチ・アズ・アイ」とのカップリングで発表された曲。ダブル・ドラムスとバリトン・ギターをフィーチャーした先駆的なナッシュヴィル・サウンドに乗って、エルヴィスが絶好調のヴォーカルを披露してくれるロカビリー・ナンバー。
14A MESS OF BLUES
1960年7月に「イッツ・ナウ・オア・ネバー」とのカップリングで発表された曲。ナッシュヴィルでの録音によるドク・ポーマス=モート・シューマン作のブルース・ナンバー。エルヴィスのセクシーな歌声が堪能できる1曲だが、フロイド・クレイマーらの演奏も素晴らしい。
15I FEEL SO BAD
1961年5月に発表された全米5位のヒット曲。チャック・ウィリスの1954年のヒット曲のカヴァー。凄腕ミュージシャン陣によるナッシュヴィル・サウンドに乗って、エルヴィスがセクシーな歌声を披露する。ブーツ・ランドルフのワイルドなサックス・ソロも秀逸。
16LITTLE SISTER
1961年8月に「マリーは恋人」とのカップリングで発表された全米5位のヒット曲。ハンク・ガーランドのギターが先導するナッシュヴィル・サウンドに乗って、エルヴィスが絶好調のヴォーカルを披露する。70年代のライヴでもよく採り上げられた曲のひとつ。
17ROCK-A-HULA BABY
1961年10月に「好きにならずにいられない」とのカップリングで発表された、映画『ブルー・ハワイ』挿入歌。ウクレレ、マラカス、スティール・ギターなどを配したハワイアン調ロックンロール。エルヴィスの軽やかにスウィングしてみせるヴォーカルが快感。
18BOSSA NOVA BABY
1963年10月に発表された、映画『アカプリコの海』挿入歌。リーバー=ストーラーがクローヴァーズに提供した曲のカヴァーだが、エルヴィスの早口のヴォーカルはもちろん、コーラスやオルガンをフィーチャーしたサウンドも秀逸。全米8位のヒットを記録した。
19VIVA LAS VEGAS
1964年4月に発表された映画『ラスヴェガス万才』のタイトル曲。パーカッションを駆使したサンバ調のリズムが楽しい、ドク・ポーマス=モート・シューマン作の名曲。ラスヴェガスを称えるエルヴィスの歌声も良い。エルヴィス版ご当地ソングの傑作のひとつ。
20IF I CAN DREAM
エルヴィスがライヴ復帰を果たしたテレビ番組『'68カムバック・スペシャル』のために録音されたもので、1968に発表された全米12位のヒットを記録。キング牧師とロバート・ケネディの暗殺を背景に、愛と平和を訴えるメッセージ・ソングだ。
21MEMORIES
1969年3月に発表された全米35位のヒット曲。『'68カムバック・スペシャル』のために録音された美しいバラード。アコースティック・ギターとストリングスをフィーチャーしたジェントルなサウンドをバックに、エルヴィスがソフト&メロウな歌声を披露する。
22DON'T CRY DADDY
1969年11月に発表された全米6位のヒット曲。エルヴィスが「母のことを思い出す」と語ったマック・デイヴィス作のバラード。アコースティック・ギターとストリングスをフィーチャーしたサウンドをバックに、エルヴィスが優しく温かい歌声を披露している。
23KENTUCKY RAIN
70年2月に発表された全米16位のヒット曲。チップス・モーマン制作のメンフィス録音の1曲で、ストリングスとホーン・セクションを含む劇的なサウンドをバックに、エルヴィスが表情豊かな歌声を披露するバラード。秀逸なアレンジと物語風の歌詞も印象的。
24YOU DON'T HAVE TO SAY YOU LOVE ME
70年10月に発表された全米11位のヒット曲。原曲はカンツォーネだが、エルヴィスはダスティ・スプリングフィールドの英語版ヒット曲をカヴァー。映画『エルヴィス・オン・ステージ』の主題歌としても世界中で人気を博したドラマティックなバラード。
25AN AMERICAN TRILOGY
72年2月16日、ラスヴェガスのヒルトン・ホテルでのライヴ録音。米国南部を象徴する「ディクシー」「リパブリック讃歌」「私の試練」をミッキー・ニューベリーが合体させたミニ組曲。エルヴィスが感動的な熱唱を披露する、70年代のライヴ定番曲のひとつ。
26ALWAYS ON MY MIND
72年11月に「別離の歌」とのカップリングで発表された曲。発売当時は特に話題にならなかったが、死後に公開された伝記映画『ディス・イズ・エルヴィス』(81年)の中で効果的に使用され、人気を博した。プリシラとの離婚の時期を象徴するバラード。
27PROMISED LAND
74年10月に発表された全米14位のヒット曲。チャック・ベリーのロックンロール・クラシックのカヴァー。快調にドライヴするエレクトリック・ブギ・サウンドに乗って、エルヴィスも勢いのあるヴォーカルを披露している。当時のライヴでもおなじみの定番曲。
28MOODY BLUE
76年12月に発表された全米31位のヒット曲。グレイスランドのジャングル・ルームでの録音によるもので、「サスピシャス・マインド」の作者マーク・ジェイムズの曲。理解するのが難しい複雑な女性“ムーディ・ブルー”に語りかけるラブ・バラード。
29I'M A ROUSTABOUT
1964年3月に録音されたが2003年まで未発表だった、映画『青春カーニバル』挿入歌。エルヴィスのヴォーカルが快調に突っ走るオーティス・ブラックウェル作のロックンロール・チューン。しかし、やや暴力的な歌詞が問題になり、アウト・テイクになったらしい。
30RUBBERNECKIN'
映画『チェンジ・オブ・ハビット』(1969年)挿入歌を、2003年にポール・オークンフィールドがリミックスしたもの。エルヴィスのブルージィな歌声をフィーチャーしたものだが、2003年仕様のダンサブルなファンク・ヴァージョンに生まれ変わっている。
[Disc 3]〈THE STORY CONTINUES〉
01BLUE MOON
1954年8月にサン・スタジオで録音されたロジャース=ハート作のスタンダード曲。馬が歩いているようなギターのミュート・サウンドに乗って、まだトラックの運転手だったはずの若きエルヴィスがスウィートな歌声とブルー・ヨーデルを巧みに使い分けてみせる。
02MYSTERY TRAIN
1955年7月にサン・スタジオで録音されたリトル・ジュニア・パーカーのブルース曲。まさに列車が走っているかのようなサウンドに乗って、エルヴィスの歌声が妖しい魅力を発揮している。ブルースとカントリーが融合した瞬間の斬新な輝きがここにはある。
03RIP IT UP
1956年9月に録音されたリトル・リチャードのヒット曲のカヴァー。リチャードの他の曲と同様にキーを下げ、絶叫型のオリジナルとは異なる独自のセクシーなロックンロール・ヴォーカルを披露している。これもエルヴィスならではの独創的な“発明”のひとつ。
04GOT A LOT O' LIVIN' TO DO
1957年6月に発表された映画『さまよう青春』挿入歌。2と4の中間のシャッフル・ビートに乗って、エルヴィスが陽気に歌うロカビリー・ナンバー。映画ではフィナーレのコンサート・シーンで歌われている。
05TRYING TO GET TO YOU
1955年7月にサン・スタジオで録音された曲。若きエルヴィスの瑞々しい歌声が堪能できるブルージィなバラード。エルヴィスが弾くピアノも聴ける。『'68カムバック・スペシャル』でもエルヴィスはこの曲を歌っているが、70年代のライヴでもよく採り上げた曲のひとつ。
06LAWDY, MISS CLAWDY
1956年8月に「シェイク・ラトル・アンド・ロール」とのカップリングで発表された曲。ロイド・プライスの1952年のヒット曲のカヴァーを、若きエルヴィスがハジケまくるヴォーカルで披露している。エルヴィスの歌声に絡むショーティ・ロングのピアノも好サポート。
07PARALYZED
1956年12月に発表されたオーティス・ブラックウェルとエルヴィスとの共作曲。エルヴィスらしいギター・スラップをフィーチャーしたミディアム・テンポの陽気な曲。ユーモラスなコーラスも楽しいが、スコッティ・ムーアのユニークなギター・サウンドが面白い。
08PARTY
1957年6月に発表された映画『さまよう青春』挿入歌。エルヴィスのヴォーカルから始まる狂騒的なロックンロール・チューン。エルヴィスのヴァージョンはシングル発売されていないが、“ロカビリーの女王”ワンダ・ジャクソンのカヴァーでヒットしている。
09I'M LEFT, YOU'RE RIGHT, SHE'S GONE
1954〜55年に録音された曲。サン時代の音源だが、正確な録音日は判明していない。女友達に語りかける失恋の歌だが、最後には相談相手に告白してしまうカントリー・バラード。ちなみにCCRの「バッド・ムーン・ライジング」はこの曲に触発されて作られたようだ。
10THE GIRL OF MY BEST FRIEND
1960年4月に発表されたエルヴィス初のステレオ・アルバム『エルヴィス・イズ・バック』収録曲。除隊後初のナッシュヴィル・セッションで録音された曲のひとつ。少し大人になったエルヴィスの歌声が堪能できる。当時の邦題は「奴の彼女に首ったけ」。
11WILD IN THE COUNTRY
1961年5月に発表された映画『嵐の季節』主題歌。エレキ・ギターのアルペジオとコーラスをバックに、エルヴィスが呟くように“俺は野生の一部”と歌うバラード。原題「Wild In The Country」にふさわしい自然なニュアンスが魅力的。
12ONE BROKEN HEART FOR SALE
1963年2月に発表された映画『ヤング・ヤング・パレード』挿入歌。いかにもオーティス・ブラックウェルらしいコミカルなタッチのポップ・ソングをエルヴィスも楽しそうに歌っている。跳ねるようなコーラスも好サポートを演じている。
13KISS ME QUICK
1964年4月に発表されたスマッシュ・ヒット曲。ドク・ポーマス=モート・シューマンが書いたチャーミングなラブ・バラード。頻繁なリズム・チェンジでの場面転換も鮮やかだが、エルヴィスのヴォーカルのテノールとバリトンの使い分けも見事。コーラスも効果的。
14KISSIN' COUSINS
1964年1月に発表された映画『キッスン・カズン』主題歌。エルヴィスのヴォーカルが心地よくスウィングする軽快なロックンロール・チューン。映画の公開に先駆けて、「イット・ハート・ミー」とのカップリングでリリースされ、全米12位のヒットを記録した。
15SUCH A NIGHT
1960年4月録音のアルバム『エルヴィス・イズ・バック』収録曲だが、4年半後の1964年7月にシングルとしてリリース。ドリフターズの54年のヒット曲のカヴァーだが、ここでのエルヴィスのノリは超人的。全米16位のヒットを記録。当時の邦題は「恋にしびれて」。
16AIN'T THAT LOVING YOU BABY
1958年6月にナッシュヴィルで録音されたものだが、シングルとしてのリリースは6年後の1964年。ダブル・ドラムスにバリトン・ギターを配した先駆的なナッシュヴィル・サウンドが聴ける。リリースが遅れて旬を逃したかに見えたが、全米16位のヒットを記録。
17TELL ME WHY
1957年に録音された曲だが、1965年にシングルとしてリリースされるまでは未発表だった。エルヴィスならではのヴィブラートを駆使したヴォーカルが堪能できるタイタス・ターナーのバラード。リリースがかなり遅れたが、サウンドは色あせず、全米33位のヒットを記録。
18FRANKIE AND JOHNNY
1966年3月に発表された映画『フランキー・アンド・ジョニー』主題歌。ニューオリンズ・ジャズ仕様の賑やかなサウンドをバックに、エルヴィスが表情豊かなヴォーカルを披露している。よくできた物語風の歌詞も面白い。全米25位のヒットを記録。
19ALL THAT I AM
1966年9月に発表された映画『カリフォルニア万才』挿入歌。“ちりめん”ヴィブラートを駆使したエルヴィスのヴォーカルを堪能できる美しいバラード。イントロのアコギも魅力的だが、エルヴィスの歌声に絡むストリングスとコーラスも良い。
20GUITAR MAN
1968年1月に発表されたスマッシュ・ヒット曲。作者ジェリー・リードのオリジナル・ヴァージョンのギター・サウンドが再現できず、リード本人をスタジオに招いて録音された。エルヴィスの素晴らしいヴォーカルとリードの見事なギター・サウンドが堪能できる。
21US MALE
1968年3月に発表された全米28位のヒット曲。ジェリー・リードならではの分厚いギター・サウンドをバックに、エルヴィスがメロディックに語ってみせるトーキング・ブルース仕様の曲。エルヴィス版ラップと言えないこともない。当時の邦題は「アメリカ魂」。
22I'VE LOST YOU
70年7月に発表されたスマッシュ・ヒット曲。英国のフォーク・ロック・バンド、マシューズ・サザン・コンフォートの曲をカヴァー。劇的に歌い上げるバラードがエルヴィスにはよく似合う。映画『エルヴィス・オン・ステージ』でもこの曲を歌う彼が観られる。
23THERE GOES MY EVERYTHING
70年12月に「知りたくないの」のカップリングで発表された曲。同年6月のナッシュヴィルでの録音で、辣腕ミュージシャン陣の滋味あふれるサウンドをバックに、あらゆるルーツ音楽を飲み込んだかのようなエルヴィスが豊饒な歌声を披露するバラード。
24RAGS TO RICHES
71年2月に「風に消えた恋」とのカップリングで発表された曲。映画『エルヴィス・オン・ステージ』の世界的なヒットで乗りに乗っていた時期のシングル曲。ライヴではピアノの弾き語りで披露したこともある熱烈なラブ・バラードだ。
25I JUST CAN'T HELP BELIEVIN'
70年8月11日、ラスヴェガスのインターナショナル・ホテルでのライヴ録音。B.J.トーマスの同年6月のヒット曲を早速採り上げるところが、ヒット曲に敏感なエルヴィスらしい。ホーン・セクションとコーラスをバックに、貫禄たっぷりの歌声を披露するバラード。
26UNTIL IT'S TIME FOR YOU TO GO
72年1月に発表されたスマッシュ・ヒット曲。ネイティヴ・アメリカンの女性シンガー・ソングライター、バフィ・セント・メリーのオリジナル曲のカヴァー。さまざまな音楽の影響を消化したエルヴィスの滋味豊かな歌声をたっぷりと堪能できるバラードの名曲。
27MY BOY
75年1月に発表された全米20位のヒット曲。精神的にも肉体的にも傷ついていた時期の録音だが、歌の語り手の魂が乗り移ったかのような素晴らしい歌声を披露したドラマティックなバラード。エルヴィスの凄まじいまでの歌唱力を改めて思い知らせてくれる。
28SUSPICION
1962年3月に録音されたドク・ポーマス=モート・シューマンの曲。2年後の1964年4月に「キス・ミー・クイック」とのカップリングで発表された。やや変則的なリズム・パターンによるサウンドをバックに、時代を象徴するジェントルな歌声を披露するラブ・バラード。
29MY WAY
死の3ヵ月前、77年5月2日に収録されたライヴ音源。まるでファンへの別れのメッセージでもあるかのように同年のツアーでは頻繁に歌われたバラード。約2ヵ月後のライヴを収録した『エルヴィス・イン・コンサート』ヴァージョンとは編曲などが異なっている。
30ARE YOU LONESOME TONIGHT?
1969年8月26日、ラスヴェガスのインターナショナル・ホテルでのライヴ録音。エレキ・ギターを弾きながら歌い始めたが、なぜか笑い始めてしまい、最後までまともに歌えない。「これで終わりだ。頑張ってきた14年間が水の泡だ」とボヤいてみせるエルヴィスが可愛い。