ミニ・レビュー
20年のレコーディング・キャリアを記念してのベスト。初期ティン・パン・アレー参加の未発表ヴァージョン(3)や、リトル・フィートを敬服させた(4)など、初期録音の躍動感が素晴らしい。ピアノが暴れる曲が、もう少し収録されてもよかった気はするが。
収録曲
01ひとつだけ
“悲しい気分の時もわたしのことすぐに呼び出してほしいの”と歌う、矢野顕子の楽曲の中でもひときわ人気の高い曲。オリジナルよりもテンポを上げて、96年にセルフ・カヴァー。ベースのウィル・リーも見事な演奏を披露している。
02気球にのって
76年のアルバム『ジャパニーズ・ガール』でデビューする2年前、10代の矢野顕子がティン・パン・アレイとのセッションをした時に録音した楽曲。ドラムス林立夫とベース細野晴臣の素晴らしいコンビネーション・プレイも冴えている。
03電話線
矢野顕子自身が“不朽の名作”と断言する、70年代ウエスト・コースト・ロックの雄、リトル・フィートとの共演ナンバー。歌詞はインターネットの急速な広がりを予見していたかのような世界が描かれている。
04在広東少年
YMOとのワールド・ツアーから生まれたロック色濃い80年発表の曲。YMOのタイトなリズムとポップなシンセや大村憲司のギターも輝くダンス・ナンバー。YMOのツアーではこの曲で盛り上がったのも頷ける。
05春咲小紅
某化粧品メーカーのCM曲にもなったこの曲。発表当時(81年)に時代を席巻したYMOの影響を思わせる、シンセをふんだんに使ったポップなノリに矢野顕子の透き通る声が弾むように重なる。彼女の代表作の一つ。
06どんなときも どんなときも どんなときも
数々の名曲を生み出した矢野顕子・糸井重里コンビ初期の共作曲で、カメラのCM曲を発展させた82年の作品。バックにYMO、ギター大村憲司、スティール・ギター駒沢裕城を配し、上質なポップスに仕上げている。
07ラーメンたべたい
若干テンポを上げ、96年に再録音された本作は、オリジナルとは異なった滋味豊かな味わいのある音に仕上がっている。ラーメンは日本の国民食だからなのか、海外のライヴでは現地日本人からのリクエストが多いナンバー。
08David
三姉妹の日常を描いた80年代のドラマ『やっぱり猫が好き』のテーマ・ソング。「これ以上、引くことも足すこともできない」と、坂本龍一との共同作業を矢野顕子自ら“最高傑作”と言うほど端正で完璧な名演を披露。
09自転車でおいで
矢野顕子・糸井重里コンビによる代表作のひとつで、二人の「同じ世界、同じ価値観のものをみていて」生まれた曲。細やかな情景描写に寄り添う温かな音色。佐野元春がデュエットと口笛で参加している。
10Watching You
糸井重里との共作で本来は“紙おむつ”のCMのために書かれた曲で、幼い子どもへ優しいまなざしが注がれている。ギターのパット・メセニーをはじめ、米ジャズ界の巨人たちが多数参加した、ジャズ風佳曲に仕上がっている。
11いいこ いいこ (GOOD GIRL)
91年発表の「おかあさんも ほめられたい」と子育てする母親の気持ちを歌った曲。当時の矢野顕子の心情をベースにした作詞は糸井重里。ジャズ界の至宝パット・メセニーが流麗なギターで彩りを添えている。
12Super Folk Song
80年にリリースされた糸井重里のソロ・アルバム『ペンギニズム』収録曲のカヴァーで、作者は矢野・糸井コンビ。ここでは谷岡ヤスジのマンガに通じるユーモアあふれる世界観を、ピアノ弾き語りで表現。
13中央線
“歌謡史上に残る名曲”と矢野顕子自身が高く評価する傑作。THE BOOMのJR中央線をテーマにしたオリジナル曲をコード進行を変え、しっとりと優しくつつみこむようにピアノ弾き語りでカヴァーしている。
14すばらしい日々
奥田民生作で、ユニコーンの『スプリングマン』収録曲をカヴァー。他人の曲でも矢野顕子の曲にしてしまう典型的な姿がここにある。アルバム『ELEPHANT HOTEL』収録とは異なるシングル・ヴァージョン。
15夢のヒヨコ (DREAMING CHICK)
無限の可能性を秘めた子どもたちをテーマにしたナンバーで、NYでの音楽活動の良き片腕といえるジェフ・ボーバがポップにアレンジ。テレビ番組『ポンキッキーズ』にも使用され、多くの子どもたちも口ずさんだはず。
16二人のハーモニー
THE BOOMの宮沢和史との共作で、95年に矢野顕子&宮沢和史名義で発表。この曲が流れるネスレ・ジャパン「ブライト」のCFにも二人で出演。南米のカーニヴァルのざわめきを感じさせるサウンドが心地よい。
17New Song
“矢野はいつも新しくいたい”という、矢野顕子の艶やかなピアノとヴォーカルのみの曲。演奏者としても作曲家としても常に新しいことに挑戦しつづける、彼女の音楽に対する真摯な姿勢が込められた曲。