ガイドコメント
ドラムンベースでボレロ、クラシカル・エレガンスなトラッドを表現した、97年発表の3rdアルバム。ストリングスを多用した美しいサウンドと、彼女の透き通った声が絶妙に絡み合い、究極のポップ・ワールドに到達した傑作。
収録曲
01ハンター
マーチング風の勇壮なドラミングと木管楽器の逆回転的サウンドが唸るような低音部とマッチして、ヘヴィなオーケストレーションを展開していく。アルバムの冒頭にふさわしく、始まりの予感がする、スケールの大きな一曲。
02ヨーガ
ビョーク自身の親友からタイトルを取った曲。低音弦のストリングスが古典的な印象を提示したのち、高音弦が空間の奥行きを作り、インダストリアルなビートが曲の顔立ちを徐々に明らかにしていく。緊張したビートと弦の調和が美しい。
03アンラヴェル
現代的なビートを中心としたオーケストレーションを整然と配置したナンバー。曲の配色の素晴らしさはマドンナやFrou Frouとの仕事で高い評価を得ているエレクトロニック・エンジニアGuy Sigworthの職人芸といえるだろう。
04バチェレット
05オール・ネオン・ライク
囁きのようなその歌声は、まるで胎児に話しかける母親のよう。心音のようなミニマル・ビートと神秘的なシンセサイザーの音色がまるで胎内に戻る錯覚を起こさせるかのような包容力を持った1曲。
065イヤーズ
ノイジィなビートとミニマルなエレクトロ・リフの交錯に、ストリングスと歌唱が巧妙な強弱を付けていく。そしてラストはあまりにも唐突に終わる。ラスト・シーンのないロード・ムービーのような1曲。
07イマチュア (マーク・ベルズ・ヴァージョン)
08アラーム・コール
“ピッピー”というコーラスと時おり響くアラームというよりは波形を描くような電子音が、シンプルながらも個性的な世界観を演出しているナンバー。それもビョーク独特の歌い回しがあるからこそ成立するものだろう。
09プルートウ
性急なエレクトロニック・ビートは四つ打ちのキックとあいまって切迫していく。その緊張が高まるにつれて、ビョークの咆哮も激しさを増していく。その鬼気迫る野生的なパワーには不安すらおぼえるほどだ。
10オール・イズ・フル・オブ・ラヴ (ハウィーズ・ヴァージョン)