ミニ・レビュー
結成30年! B-BOYに真の“自由”をもたらした彼らの8枚目のアルバム。リード曲にして王道の「メイク・サム・ノイズ」(コーネリアス・リミックスも◎)もあれば、ルーディなスカ・チューンがあったり。確かな進化と需要の見極めに感服! パート2な理由は解説で。
ガイドコメント
81年のビースティ・ボーイズ結成以来、自由にして奔放、かつ独創的な活動を続ける彼らの8thアルバム。2004年『トゥ・ザ・5・ボローズ』以来約5年ぶりとなる本作品でも、その偉大さをまざまざと感じることができる。
収録曲
01MAKE SOME NOISE
2011年4月リリースのアルバム『ホット・ソース・コミッティー・パート2』のリード・シングル。忍び足のようなベース音と畳み掛けるようなラップにゾクゾクさせられる、高揚感をあおるパーティ・チューンだ。
02NONSTOP DISCO POWERPACK
マイクD、キング・アドロック、MCAのよどみないマイク・リレーに痺れ、また「ビースティ・ボーイズはノンストップで盛り上げていくぜ」「朝までノリノリのBボーイだぜ」と煽るラップにも痺れる。スタイリッシュでかっこいいパーティ・チューンだ。
03OK
マニー・マークによるイントロのファニーな鍵盤の音がほっこりとした気持ちにさせてくれる一曲。サウンドとは対照的に攻撃的なラップで「自分の心をコントロールしないといけない」と言いつつも、リリックは怒りと焦燥感に満ちている。
04TOO MANY RAPPERS
「自称ラッパーが多すぎるぜ 本物のMCが少なすぎるのさ」と“同業他社”を煽る痛快な楽曲。シュギー・オーティスの曲「Strawberry Letter 23」などの音楽ネタをふんだんに盛り込んだ、日常会話の延長上のようなリリックがユーモラス。
05SAY IT
「声に出して言え 感情をぶちまけろ」と繰り返す、にぎやかなラップ・チューン。哲学めいた「思ったことは現実化する」という歌詞にドキッとさせられる、“煽り上手”すぎるリリックがクセになる。思わず叫びだしたくなるはず。
06THE BILL HARPER COLLECTION
「ビル・ハーパー・コレクションから もう一つのオフィシャル・セレクションをお届けする」「アダム、ビルだよ ありがとう」――たったこれだけの台詞があるだけの楽曲。楽曲というより、曲の間に挟まれた“語り”と言う方が正解な気がする。
07DON'T PLAY NO GAME THAT I CAN'T WIN
サンティゴールドをフィーチャーした、スカやダブ、ダンスホール・レゲエをベースにしたナンバー。もともとはパンク・バンドだったビースティ・ボーイズのパンク精神が弾けた、豪快でアッパーなナンバーに仕上がっている。
08LONG BURN THE FIRE
同アルバムに収録の「トゥ・メニー・ラッパーズ」と同じく、日常会話の延長のようなリリックが特徴のナンバー。かつてマンハッタンにあったコーヒーショップをはじめとするお店や人名などの固有名詞がバンバン登場する、疾走感あふれる掛け合いが見事。
09FUNKY DONKEY
シリアスな低音と畳み掛けるようなラップとは対照的な、スティールパンの涼しげな音色が心地よい疾走感あふれるラップ・チューン。レゲエ・テイストのアレンジと前のめりなラップがクセになる、繰り返し聴きたくなるナンバーだ。
10THE LARRY ROUTINE
アルバム『ホット・ソース〜パート2』での前曲「ファンキー・ドンキー」から地続きの、30秒と短いアップ。メンバーの名前が変わったと宣言し、ユーモラスに新しい名前を披露。全員の名前が登場するので、ある意味自己紹介的なナンバーだ。
11TADLOCK'S GLASSES
シンプルなトラックにエコーがかったラップが絡む、スペーシーなナンバー。「俺たちはノンストップにロックするぜ」と繰り返しつつも、「しっくりこないこともあるよな」で終わる。勢いづいていた終盤までのリリックから一転するのがなんともファニーで憎めない一曲だ。
12LEE MAJORS COME AGAIN
TVドラマ『600万ドルの男』『俺たち賞金稼ぎ!!フォール・ガイ』などの出演で知られる俳優、リー・メジャースをタイトルに冠した、スピード感あふれるパンキッシュなナンバー。畳み掛けるようなラップとにぎやかなトラックが絶妙にマッチしている。
13MULTILATERAL NUCLEAR DISARMAMENT
「(国際的核軍縮を)必ず実現させよう」とヴォコーダーを使ったヴォーカルで一言だけ発するが、ほぼインストゥルメンタル。シリアスなメロディをファニーな音色のキーボードで演奏しているせいか、どこかちぐはぐな印象で、繰り返し聴きたくなる。
14HERE'S A LITTLE SOMETHING FOR YA
マニー・マークによるファニーな鍵盤の音色と攻撃的なラップが好対照のアグレッシヴなナンバー。「準備しておけよ 賭けに出ろ 求めたものは手に入る でもそこで終わりじゃない」という意味深な歌詞が後をひく。
15CRAZY ASS SHIT
キュートな子供の声をサンプリングからスタートするパーティ・チューン。「83年のパキッとしたリーのジーンズ」のように、80年代のB-BOYの定番アイテムが登場するなど、ヒップホップ・カルチャーをふんだんにちりばめた楽しい楽曲だ。
16THE LISA LISA/FULL FORCE ROUTINE
タイトルの「ザ・リサ・リサ」は、80年代のラテン・フリースタイルのグループ、リサ・リサ&カルト・ジャムのこと。3人のよどみないマイク・リレーに痺れ続けた『ホット・ソース・コミッティー・パート2』のラスト曲だが、短く軽い仕上がりなのがまた粋だ。
17MAKE SOME NOISE
アルバム『ホット・ソース・コミッティー・パート2』のリード曲「メイク・サム・ノイズ」のCORNELIUSリミックス。シンプルなトラックに、スクラッチとともに水音やコーラスなどのサンプリングを重ねた、原曲とは違う盛り上がり方をみせる名曲だ。