ミニ・レビュー
81年、カレッジ・チャートの雄としてその名を挙げた彼らも今や米ロックの20年選手。うち88年以降在籍しているワーナー音源からのベスト編集だ。インディ期のたどたどしさを思うと、演奏は格段に骨太に。と同時にバンドの魅力の核がマイケル・スタイプの歌声にあるのもよくわかる。
収録曲
01MAN ON THE MOON
コメディアンのアンディ・カウフマンを歌った曲。カントリー・テイストのポップ・サウンドによる、内省的にして軽やかな曲調が絶品。この曲に触発され製作されたカウフマンの同名伝記映画(99年)の表題曲にもなった。
02THE GREAT BEYOND
映画『マン・オン・ザ・ムーン』(99年)への提供曲。コメディアンのアンディ・カウフマンを描いた映画に則し、歌詞には彼の人生哲学がちりばめてある。エレクトロ風味の実験的フォーク・ロックといった趣だ。
03BAD DAY
ベスト盤『イン・タイム』で初登場となった“新曲”だが、曲そのものは86年の作。諸事情によりお蔵入りしていた曲に手を加えたものだ。軽やかな曲調に乗せての逆説的メディア批判は、CNNを模した秀逸なPVで効力を増強。
04WHAT'S THE FREQUENCY, KENNETH?
当時のグランジ・ブームに共鳴したのか、いつになく重心の低いバンド・サウンドを展開し、ラウドなギターを全面に押し出している。曲題と歌詞に、CBSのダン・ラザーを襲撃した人物が殴打中に口走っていた言葉を引用している。
05ALL THE WAY TO RENO (YOU'RE GONNA BE A STAR)
“火星のジミー・ウェッブ”なる仮称が付いていたように、流麗なメロディと幻想的なサウンドが同居しているポップ・ソング。リノに行けばR.E.M.も有名になれると諭す一部世評への、やんわりとした皮肉が歌詞に込めてある。
06LOSING MY RELIGION
彼らの知名度を急上昇させた全米4位、全英19位のヒット曲。アコースティック・ギターを主体にした珠玉のメランコリック・ナンバーで、それまでのシンプルな作風とは異なり、凝ったアレンジがさりげなく施されている。
07E-BOW THE LETTER
客演のパティ・スミスが静かな迫力を持ったコーラスを聴かせるバラード。“E-ボウ”とは、ギターでヴァイオリンのような音色を奏でる装置だが、ここで聴こえるのはあくまで“それ風”の音。実験的要素の強いサウンドだ。
08ORANGE CRUSH
“枯葉剤”に言及した歌詞、爆撃を模したギター・フレーズ、ヘリの音などから、ベトナム戦争を歌ったとされているダンサブルでハードな曲。異なった旋律をなぞる歌とコーラスが、最後でひとつになるアレンジが秀逸だ。
09IMITATION OF LIFE
清廉なギター・ポップ・サウンドに、ストリングスやエレクトロニカなどインドア・ポップ的要素を加味したアップ・テンポの佳曲。自分たちの曲「ドライヴァー8」に似た箇所があることに、その後気づいた彼らは苦笑したとか。
10DAYSLEEPER
彼らと同じように昼夜逆転の生活を続ける人々を歌ったバラード・ナンバー。ワルツを思わせる4分の3拍子のリズムが、ゆったりと気だるげ。徹夜明けに聴けば、なんともいえない気分に浸れること間違いなしのムードだ。
11ANIMAL
ベスト盤『イン・タイム』で初登場となった正真正銘の“新曲”。サイケデリック期のビートルズを思わせる渦巻くようなサウンドが印象的なナンバーで、歌詞にはセクシャルともポリティカルとも解釈できる暗喩が満載されている。
12THE SIDEWINDER SLEEPS TONITE
ジャングリーなバンド・サウンドにストリングスが絡む、編曲の美しさに圧倒されるポップ・ナンバー。曲題はトーケンズが大ヒットさせた「ライオンは寝ている」をもじっており、冒頭部でマイケルは同曲の一節をハミングしている。
13STAND
往年のヒット曲を思わせるポップンロールな曲調は、ビートルズ経由モンキーズの影響か。コメディ番組のテーマ曲となり、それまでのキャリアでは最高位となる全米6位を記録。珍しいことにギター・ソロでワウを使用している。
14ELECTROLITE
ピアノとバンジョーをフィーチャーしたフォーク・ブルース。95年に書かれた曲だが、歌詞では早々と20世紀に別れを告げており、ひとつの幕切れムードを漂わせている。歌詞にはマーティン・シーンら名優の名も登場。
15ALL THE RIGHT FRIENDS
その誕生はバンド結成以前の79年にまで遡るほど古い曲。ここで聴けるのは映画『バニラ・スカイ』用に新録されたヴァージョンで、努めて当時の雰囲気を再現しようと若作りした演奏が新鮮。簡潔軽妙な3分弱のポップ・ソングだ。
16EVERYBODY HURTS
自殺を選んだ人々への共感を示しつつ、それでも「がんばれ、持ち堪えろ」と励ますバラード。往年のソウル・ナンバーを思わせる包容力ある曲調は、八方ふさがりの人生を送る人への光明か。彼らの誠実さを象徴する1曲。
17AT MY MOST BEAUTIFUL
『ペット・サウンズ』期のビーチ・ボーイズそのままの作風による、凝ったアレンジのインドア・ポップ・ソング。恋心いっぱいの詞世界を、ビーチ・ボーイズになりきったコーラスでドリーミーに色づけている。
18NIGHTSWIMMING
ピアノ主体の曲で、R.E.M.史上初めてメロディより先に詞が書かれた作品。ただただ美しく凛然とした曲調は、コールドプレイへの影響も絶大。ここで弾かれているピアノは、名曲「いとしのレイラ」の録音にも使用された名器。