ガイドコメント
『ワイ・バイ・ワン』から2年半ぶりとなる5thアルバム。今回は彼ら初の2枚組で、ハードなエレクトリック・サイドと、ノラ・ジョーンズ、ジョン・ポール・ジョーンズらを迎えたアコースティック・サイドが聴ける。
収録曲
[Disc 1]
01IN YOUR HONOR
アルバムのオープニングを飾るにふさわしい、スケールの大きいダイナミックなロック・ナンバー。高らかに響く雄叫びと分厚いディストーション・ギターが放つ初期衝動、破格のテンションに圧倒される。
02NO WAY BACK
爽やかでノリのいいスピード感あふれるパンキッシュ・ナンバー。ストレートで力強い音からエネルギーがほとばしり、聴いているうちに力が湧いてくる。より結束を固めた4人が起こす、バンド・マジックが堪能できる1曲。
03BEST OF YOU
アグレッシヴでありながらキャッチーという、いわゆるフーファイの王道系骨太ロック。過去に何度かシングル・カットされたタイプの曲だが、明るさや痛快さにアダルトな哀愁がプラスされており、バンドとしての成長を感じさせる。
04DOA
“誰もが生まれた時から死ぬ運命にある”という思想をテーマにした楽曲。陰影のあるマイナー調のメロディが諦念や倦怠を思わせるも、絶望感だけに終始せず、サビの部分で希望へ向かうパワーが感じられるのがフーファイらしい。
05HELL
中近東風のエキゾティックなリフに導かれ、一気に駆け抜けてゆくアップ・テンポなナンバー。「地獄で会おう」という叫びとエンディングで鳴り響く激しいドラミングに、ありったけの衝動が詰め込まれている。わずか1分強ながら強烈なインパクトを残す。
06THE LAST SONG
軽快なリズムにのってしなやかにドライヴしていく、清涼感満点のストレートなロック・チューン。爽やかながらもサラリと聴き流せないのは、魂のこもった情熱的な歌に心を掴まれるから。畳み掛けるようなコーラスもシンガロング必至!
07FREE ME
フーファイお得意のヒネリのきいた変則的なリズムと、絶叫や重いグルーヴといった新しいアプローチを絶妙にミックス。彼らにはあまりないタイプの楽曲だ。それだけに、豊富なアイディアと旺盛な創作意欲を感じずにいられない。
08RESOLVE
大切な恋人を失ってから、周りは変化していくのに、やるせない気持ちを抱えたまま変わることのできない自分を歌う。思い出と現実の狭間で繰り返される葛藤を、温もりと切なさを湛えたサウンドにのせたミドル・テンポのナンバーだ。
09THE DEEPEST BLUES ARE BLACK
ちょっとルーズなムードから一転、ポジティヴィティが爆発のハイ・テンションで力強いサウンドへと変化する。ドラマティックな展開を盛りこむことにより、傷心・混乱した状態から脱しようと懸命にもがくさまを表現している。
10END OVER END
恋人へ語りかけるような表情豊かな歌唱が、愛情を渇望する男心をリアルに伝えるミドル・テンポのナンバー。満たされない胸の中のモヤモヤをダイナミックな表現へと昇華させた、後半部分がグッと胸に迫る。
11THE SIGN (FOO FIGHTERS)
思わず拳を振りあげてシンガロングしたくなる、フックのあるキャッチーなメロディと小気味良いリズムが軽やかなロック・ナンバー。瑞々しい勢いもあり、ライヴで盛り上がること必至だ。
[Disc 2]
01STILL
ゆらゆらと波間をたゆたうようなゆったりしたサウンドが展開。憂いのある優しく穏やかな歌声はどこか昔懐かしく、郷愁を誘う。これまでのフー・ファイのイメージをいい意味で覆す、胸の奥深くに染み入る感動的なナンバー。
02WHAT IF I DO?
素朴で繊細なアコースティック・ギターの音色が染みる、しっとりと落ち着いたスロー・バラード。ゆったりとした心地良いメロ、程よい余韻を残す優しく柔らかな歌声は、チルアウト・ミュージックのような心癒す安らぎに満ちている。
03MIRACLE
元レッド・ツェッペリンのジョン・ポール・ジョーンズが演奏するピアノとデイヴのエモーショナルな歌が見事にマッチした、その名のとおり“ミラクル”な1曲。控えめにきかせたストリングスによるアレンジも素晴らしい。
04ANATHER ROUND
ロマンティックな心象風景をワルツのようなりズムにのせて歌う個性的な1曲。間奏で流れるハーモニカがカラリと乾いた王道アメリカン・ロックのようなレイドバックした哀愁を添え、楽曲を味わい深く彩っている。
05FRIEND OF A FRIEND
デイヴがニルヴァーナ在籍時代に書いた曲。「ネヴァー・マインド」という台詞を吐く孤独な“彼”はカート・コバーンを連想させる。そんな想像を掻き立てる意味深な歌詞とちょっと物悲しい曲調が、聴き手をセンチな気分にさせる。
06OVER AND OUT
恋に悩み苦しみ、暗闇をさまよい続ける不安定な心情を描いたダークな歌が切なく胸を打つ。サウンドも非常に内省的ながら情感豊かで、じんわりと滲む哀愁がたまらない。聴くほどに味わいが増す、コクのあるナンバー。
07ON THE MEND
シンプルなギター・フレーズのリフレインを中心に構成された、音数抑えめの穏やかな楽曲。繊細なヴォーカルとオーガニックなサウンドが内包する、希望の光さすような多幸感に包まれ、ほっこりした優しい気持ちになれる。
08VIRGINIA MOON
デイヴとノラ・ジョーンズのデュエットが新鮮。ニルヴァーナ時代から温められてきた楽曲を、ノラの囁きのような美声とジャズ・ピアノが舞うボサ・ノヴァに仕上げた。アコースティック・アルバム1番の聴きどころといえる。
09COLD DAY IN THE SUN
ドラマーのテイラー・ホーキンスがリード・ヴォーカルをとったナンバー。しゃがれ気味のワイルドな歌唱が予想以上に魅力的で、ソロ名義で作品を出したのも納得できる。滋味や渋みがたっぷりのアーシーなサウンドも、男臭い声の雰囲気にピッタリ。
10RAZOR
朋友、クイーンズ・オブ・ザ・ストーン・エイジのジョシュ・オムがスパニッシュ・ギターで参加。歌に呼応して強弱やトーンが微妙に変わる、小波のように繰り返されるフレーズが楽曲を鮮やかに彩っている。