ミニ・レビュー
衝撃のデビューから約4年ぶりとなる本作は、前作の勢いをキープした清々しい一枚となった。以前に増してさらに強調された弾力あるビートと、アダム・レヴィーンのスモーキーな歌声が作り出す最新型のダンス・ロック〜ブルーアイド・ソウルに、新しいロックの豊穣を見る。
ガイドコメント
前作『ソングス・アバウト・ジェーン』が全世界で1000万枚のセールスを記録したマルーン5の2ndアルバム。爽快でグルーヴ感をたっぷりと注入したサウンドが展開され、ロックとR&Bの理想的な融合を聴かせている。
収録曲
01IF I NEVER SEE YOUR FACE AGAIN
ファンキーなギター・リフにアダム・レヴィーンの鮮やかなファルセット・ヴォイスが踊るミディアム・ファンク・ナンバー。80年代の懐かしい香りを漂わせる濃厚なグルーヴと思わず踊り出したくなるサウンドが気持ち良い。
02MAKES ME WONDER
小気味良いギター・カッティングが、80年代ディスコ風の軽快なビートに絡むミラクル・ポップ。 重々しいベース音の序盤からキャッチーな音へと流れていく巧みな音作りと、失恋の心を表現したストレートな詞が彼ららしい。
03LITTLE OF YOUR TIME
恋愛と政治に対する不満をシームレスに繋げたダンサブル・ロック。“今の社会情勢に懸念を抱いてる”と語る彼らが、恋愛にたとえて不満と失望感を表現している。聴くほどに考えさせられる詞を力強く響く重低音ビートが彩っている。
04WAKE UP CALL
強烈なエレキ音で幕を開ける、独創性を打ち出したヒップホップ・ナンバー。彼女の浮気を目にした男の、激しい怒りの感情を直情的な詞で表現している。エミネムのプロデューサーが参加した、ひねりのある曲展開が面白い。
05WON'T GO HOME WITHOUT YOU
ポリスの名曲「見つめていたい」に影響を受けたミディアム・ナンバー。ベース音を効かせた爽やかなメロディに、哀愁を帯びた乾いた歌声がしっくりとなじんでいる。別れた女に許しを請う詞が、男の心の弱さを映し出している。
06NOTHING LASTS FOREVER
R&Bのアーバンな雰囲気をロックに取り込んだミディアム・チューン。 アダム・レヴィーンがカニエ・ウェストとのコラボ曲「ハード・エム・セイ」に提供したフックを再使用した音が興味深い。別れが近づいた男女の心の溝を描いている。
07CAN'T STOP
スピード感あふれるダンスホール・チューン。パワフルでロックな演奏力を前面に出しつつ、夜に愛しい彼女への思いを募らせる男の、焦りにも似た激しい感情を表現している。駆け抜けるような疾走感を宿す音作りが特徴的。
08GOODNIGHT GOODNIGHT
物悲しくも心温まるメロディが胸を打つミディアム・ポップ。アコースティック・ギター主体のシンプルな曲調と深く穏やかな歌声が、格調高い音世界を作っている。彼らが得意とするメロディの美しさを遺憾なく発揮したナンバー。
09NOT FALLING APART
アダム・レヴィーンの優しくささやくような歌声に始まるミディアム・ロック。シンプルで印象的なイントロはまさに、ポリスの名曲「見つめていたい」。彼女への愛おしさが募り、気も触れんばかりの男心を吐露した詞が痛々しい。
10KIWI
ブラスとギター・ソロが存分に味わえる、独創的なポップ・ナンバー。ファルセットを巧みに取り入れ、曲に緩急のリズムを付けたドラマティックな展開が面白い。後半、いきなり現れる激しく高度なギター・ソロに圧倒される。
11BETTER THAT WE BREAK
ピアノの演奏をベースに進行する感傷的なバラード。愛する彼女を手放す男の、身を切るような切なさを淡々としたヴォーカルで綴っている。アダム・レヴィーンの伸びやかで張りのある歌声をたっぷりと聴かせる、シンプルな演奏が美しい。
12BACK AT YOUR DOOR
男の弱さを描いたミディアム・ロック・ナンバー。“君がいなければ僕は生きていけない”と独り言のように綴られた詞が、憂いを帯びたポップな旋律にしっくりとなじんでいる。男の本音を曝け出す、独特の詞世界が彼ららしい。
13UNTIL YOU'RE OVER ME
自然に体が動き出すようなダンサブル・チューン。小気味よいリズムに乗せ、軽やかなファルセットを多様する前半は、80年代のプリンスを彷彿とさせる。常に良いメロディを意識し、新しい音作りに挑戦する意欲がうかがえる一曲。
14INFATUATION
“音楽=セックス”と表現する彼らの、ムーディかつセクシーなナンバー。個性的なイントロや曲中に効果的に現れる泣きのギターが、曲に豊かな表情を与えている。ビートや曲全体の構築に、細かな工夫と技が施された作品だ。
15LOSING MY MIND
シンプルなピアノの伴奏が心地良いミディアム・ロック。徐々に音に厚みが増し盛り上がっていくメロディが、自分を失っていく人の感情の高ぶりを巧みに表わしている。彼らの豊かな音楽的才能と創造性を生かしたナンバー。