ミニ・レビュー
SBDの池田貴史やwyolicaのazumiらとのコラボやお笑い芸人ユニットのプロデュースなど、新たな活躍を見せるスネオヘアーのアルバム。タイトルしかり、彼にはせつなさや悔しさを織り交ぜた悲哀がよく似合う。アーティスト本人の力量を存分に発揮した会心作。
ガイドコメント
通算4枚目のフル・アルバムは、6曲で実力派のサウンド・プロデューサーとコラボレートし、卓越したメロディ・ラインの魅力をより引き出している。スネオヘアーならではの男気満載の傑作アルバム。
収録曲
01no trick
滑らかなギター・サウンドが主軸のダイナミックなロック・チューン。エンディング部分では重厚なギターの音色が高揚感を醸し出しているのが印象的。光り輝く1日のはじまりを感じさせるのにふさわしい説得力あるサウンドだ。
02ワルツ
恋人と出会った経緯から今の関係を「ワルツ」にたとえて幸せな気持ちを歌っている。「パステル模様の未来」「とぼけた現実も原色で塗り替えてしまえ」など、色にまつわるフレーズやキーボードによる音色の変化も、そんな歌を引き立てている。
03悲しみロックフェスティバル (album version)
軽快なギター・リフとキラキラしたサウンドに寄り添う「悲しみ」というフレーズを多用した詞が印象的。さらにスネオヘアーを応援するかのような歓声や拍手などの効果音を挿入し、曲をいっそう奥深いものとしている。
04フューチャー
繊細なフレーズが生かされたドラム、キーボードや荒々しいギターのフレーズによる間奏など、砂浜に打ち寄せる波のように押し引きの巧みなアレンジが際立つ。緻密な構成ではあるが、曲調はストレートなポップ・チューン。
05空も忙しい
ゆりかごに揺られるイメージが沸くバラード。エレクトロニカ風の凝ったサウンド・メイクと鮮やかなコーラスの挿入や厳粛なオルガンの音色などが、ふくよかな歌の世界を作りだす。体の芯からリラックスできる。
06ランドマーク
過去、現在を飛び越えて目的地へ突き進むような、ダイナミックな演奏が光る。厳粛ですらあるコーラスや重厚なギター・サウンドなどが弾けあうさまは、バラード調でありながら疾走感が十分にみなぎっている。
07peaky
マイ・ブラッディ・ヴァレンタインのような技巧的なギター・サウンドへの意識が前面に出た楽曲。そんなサウンドと「ロックスター歌ってくれ/悲しみはもう終わりと」という意味深なフレーズとの組み合わせが、楽曲にダイナミズムを生んでいる。
08moon face
ハンド・クラップや巧みなカッティングを見せるギター・リフ、滑らかなベース・ライン。その上を凛々しいヴォーカルが疾走するナンバー。アダルトな雰囲気からメロディックなパートへと流れる、2部構成のような展開がにくい。
09Merry Christmas to me
シンプルなギター・サウンドと鮮やかなエレクロニクスによる構成は、複雑さを避けたすっきりした味わい。クリスマスを一人で過ごす心情を描く歌詞は寂しいくもあるが、ハートウォームなサウンドで包み込むのがスネオヘアーらしい。
10happy end (feat.azumi)
azumi(wyolica)とのデュエットによる、冬の景色を背景にした男女の心情を歌うラブ・ソング。クールなイメージが色濃いスネオヘアーの凝ったサウンドに重なる、情熱的なハーモニーが感動的だ。
11クーペ
力みのない歌い方と爽やかな多重コーラスや緩やかなキーボードなどによって、重みを抜いた軽やかなサウンドを構築。その軽やかさとセンチメンタルな歌世界とが上手く溶け込んだ、淡いギター・ポップ風のナンバー。
12NO.1
口ずさみたくなるメロディと伸びやかなギター・サウンドの疾走感、無邪気な絶叫を挿入するにより、「一番になりたいんだ」という情熱的なメッセージがより強く伝わってくる。親しみやすい曲調の中に深みを秘めるポップ・チューン。