ガイドコメント
R&B/レゲエ/ヒップホップ・シーンの最重要プロデューサー兼シンガー・ソングライター、エイコンの2ndアルバム。エミネムをフィーチャーした先行シングル「スマック・ザット」などを収録する。
収録曲
01SHAKE DOWN
リスナーを欺くようなリズムに幻惑されてしまうが、エイコンのパフォーマンスもしっかりと酔わせてくれる。聴き応えのある分厚いサウンドは、チープなシンセ・ホーンの使い方がとても斬新だ。これが生ホーンだったら、かえって興ざめだろう。
02BLOWN AWAY
このメロウ・ヒップホップの聴きどころは、何といってもエイコンのオリジナリティあふれる節付きラップだ。あまり目立たない演出だが、か細いピアノ・リフが抜けるタイミングが絶妙。スタイルズ・Pのラップでの幕開けがとてもクールだ。
03SMACK THAT
ヒット曲の法則その1、イントロが素晴らしいこと。この法則の信憑性の高さを実証する大ヒット曲。エイコンとエミネムの鋭敏さが光るサウンドは、立体的に聴く者を圧倒する。置いていかれないようにしっかり曲についていきたい。
04I WANNA LOVE YOU
1stシングルの「スマック・ザット」が全米1位になれなかったうっぷんを晴らすかのように、快調にチャートを駆け上ったNO.1ソング。スヌープ・ドッグの物憂げなラップと猥雑なリリックがとても切なく聴こえる、不思議なメロウ・サウンドだ。
05THE RAIN
エイコンの歌唱力が存分に楽しめるストリングス・バラード。ヴォーカルの重ね方が上品なアレンジで、リズムを織り込み済みのメロディはこんなにも強いものなのか、と感服してしまう。リズム・ヒットがなかったことを聴き終えた後に気付いてしまうほど。
06NEVER TOOK THE TIME
生楽器で構成されたサウンドがとてもインテリジェント。コード進行といい、歌メロといい、アメリカン・ロックのような曲だが、エイコンがボーダレス・サウンドに変身させている。いろんな角度から攻撃してくるエイコンには要注意だ。
07MAMA AFRICA
ドイツ出身レゲエ・ミュージシャン、ジェントルマンの「Dem Gone」を下敷きにしたオールド・スタイルのレゲエ・チューン。エイコンは母国セネガルでレゲエをよく聴いていたという。エイコンの音楽の源泉が垣間見える、濃くてやさしいサウンドだ。
08I CAN'T WAIT
ジャジィなピアノ・リフが気だるく舞うT-PAINとエイコンの共作。2人によって披露されるオートチューン・パフォーマンスがひたすら楽しい。地味なサウンドだが、この2人にかかると派手で奥深い曲になってしまう。
09GANGSTA BOP
エイコンの「歌うラップ」満載のひたすらシンプルなヒップホップ。多彩だけではない、真摯なエイコンが楽しめる作品だ。音程なしに言葉を羅列するだけが能じゃない、物事にはさまざまな伝え方があるんだ、と思い知らせてくれる曲。
10TIRED OF RUNNIN'
ルーサー・イングラムの名演「愛のとりこ(IF LOVING YOU IS WRONG)」の借用ありだが、無理に新しくアレンジしていないところが素晴らしい。先進的なものとルーツに忠実なものを器用にこなすエイコンのマジックが詰ったサウンドだ。
11ONCE IN A WHILE
スリー・ドッグ・ナイトの「胸に溢れる愛(I'd Be So Happy)」を流用したアイディア・ソング。サウンド・アプローチはヒップホップっぽいが、エイコンがやるとジャンル分け不能になってしまう。ピアノの8分打ちがとても印象的な曲だ。
12DON'T MATTER
ヒット曲の作り方のツボが随所にちりばめられた全米NO.1ソング。心をやさしくほぐしてくれるような力を持った、世界のどこへ持っていっても売れそうな曲だ。エンディングで流れてくるピアノの演出も、商魂にあふれていて良い。
13SORRY, BLAME IT ON ME
日本でも報道された少女との不適切な“ペア・ダンス事件”についてエイコンが悔恨を歌う曲。調子に乗ってしまった行動の代償は大きかったが、糾弾した面々もこの美しいメロディで謝られては、怒りも萎えてしまうかもしれない。
14RUSH
アメリカ人が大好きなシリアスな定番コード進行も、エイコンがパフォーマンスするとオリジナリティにあふれたサウンドになる。カナダ人のレゲエ・ラッパー、カーディナル・オフィシャルのレゲエ色を消した客演も面白い。
15DON'T MATTER
シングル・ヴァージョンと同じぐらいの頻度でラジオなどでかかっていた、リズムの譜割りを細かくしたヴァージョン。この西インド諸島ミックスがこの曲の正しい解釈かも知れない、と思ってしまうほど底抜けに楽しいアレンジだ。
16STRUGGLE EVERYDAY
情熱的なスパニッシュ・サウンドにもエイコンはぴったりとたたずまいを合わせてくる。スパニッシュ・ギターとシンセのホーン・フレーズのサウンド・アレンジがひたすら安いが、ここにはエイコンの親しみやすさがある。