ミニ・レビュー
やっぱり、すげえやエーちゃん。デビュー40年にしてこのエナジー、この充実感。1曲目からいつにもましてヴォーカルの質量がアップ。そして、最近の得意な曲調「翼を広げて」でのスケール感。さらに、なんといっても古株ファンの落涙ポイント「BUDDY」――と興奮と恍惚の最新曲たちがたっぷり。★
ガイドコメント
前作『TWIST』から約2年ぶりとなるアルバム。40周年のメモリアル・イヤーに放つにしては意味深なタイトル。区切りとしてなのか、それとも……。第一興商CMソング「IT'S UP TO YOU!」ほか11曲収録の、渾身のロック・アルバム。
収録曲
01IT'S UP TO YOU!
軽快なギターのリフで幕を開ける第一興商「LIVE DAM」CMソング。常識のカゴの中、時代のせいにして生きてちゃショボいだろう、と随所に奔放なシャウトを飛び込ませつつ挑発的に歌い上げる本格派ロックンロールだ。
02翼を広げて
デンゼル・ワシントン主演の映画『デンジャラス・ラン』日本版イメージ・ソング。アコースティック・ギターやコーラスを巧みに配し、カントリーの要素が入ったスケールの大きなサウンドが展開。男のカッコよさを感じさせる仕上がりだ。
03夢がひとつ
心温まるミディアム・テンポのロック・チューン。不安につぶされそうになってもおまえならできるよ、と色気全開の矢沢の歌声で語りかける。大切な仲間へのメッセージのようだが、ロックスターという大役を務める自らに向けた言葉にも聞こえる。
04BUDDY
大切な“BUDDY(=相棒)”との思い出、そしてエールを歌った馬渕大成作詞のナンバー。“ひとり飛び乗った 19の夜汽車”など、矢沢の人生を振り返るかのような歌詞が並ぶ。独特の歌唱の間の取り方が言葉に深みを与えている。
05パニック
加藤ひさし(THE COLLECTORS)が作詞を手がけたシンプルなロックンロール・ナンバー。“オレのあの娘”がいなくなってパニックに陥る男を歌っており、そのダメさ加減と泥臭いバンド・サウンドが絶妙にマッチしている。
06「あ.な.た...。」
イントロの“泣きのギター”でいきなり心を鷲づかみにするミディアム・バラード。決して落ちてはいけない恋、わかってはいながらも抗うことのできない想い……矢沢にしか表現できない色気に満ちている。曲全体を彩るアルペジオもいいアクセント。
07JAMMIN' ALL NIGHT
ワイルドなギターのリフが全編を通して彩る、横浜ゴム「アイスガードファイブ」CMソングのロックンロール・ナンバー。シンプルな楽曲だけに、矢沢のゴキゲンな歌唱が映える。ラストに向かって熱を帯びていく演奏も一発録りの魅力が詰まっている。
08Mr.ビビルラッシー
静寂を切り裂くような矢沢のシャウトで幕を開ける、古き良きロックンロールをそのまま再現したかのようなミディアム・テンポのナンバー。体が自然と踊り出すようなグルーヴ感、その上で自由奔放に声を聴かせる矢沢の魅力にやられる。
09吠えろこの街に
ギラギラとした男の魅力ではなく、憂いをたたえたセクシーな男の魅力をこれでもかと聴かせるナンバー。派手な展開や装飾、ダイナミクスを極力排したシンプルなアレンジだからこそ、矢沢の歌の力が浮き彫りになっている。
10サンキューMy Lady
タイトルどおり、長い間支えてくれた大切な存在への感謝を綴ったハートウォームなナンバー。“最後の景色は おまえと見ていたい”の一節は、これまでがむしゃらに走り続けた矢沢が歌うからこそ、心にじんわりと染みわたっていく。
11LAST SONG
ドキリとさせるタイトルを冠した山川啓介とタッグを組んでのミディアム・バラード。欲しいものすべてを手に入れたけれど、少年の時に見た虹を見るためにまだ“LAST SONG”は歌えない……矢沢永吉版「My Way」といえる感動的なナンバーだ。