ミニ・レビュー
セカンド・シングル「Shine」のヒットで注目を集めた94年生まれのSSWによるファースト・アルバム。温かさと残酷さが入り混じった人間関係〜希望と葛藤でこんがらがる10代特有の感情を描き出したソングライティング、カラフルなバンド・サウンドを軸にした音楽性のバランスが素晴らしい。
ガイドコメント
高校生シンガー・ソングライター、家入レオの1stアルバム。デビュー曲「サブリナ」や「Shine」など、シングル・チューンを交えた13曲を収録。10代に高い支持を受ける個性的な詞の世界観が深い印象を残す。
収録曲
01サブリナ
記念すべきデビュー曲にして、TVアニメ『トリコ』エンディング・テーマに起用されたロック・ナンバー。“本当の愛”を求め街を彷徨う、10代ならではの感覚を巧みに表現。焦燥感を煽るようなサウンドもハマっている。
02Last Stage
私はいつも自分の居場所を探している……正義よりも悪が罷り通る世の中への強い想いを詰め込んだナンバー。ギターのアルペジオで幕を開け、弾けるように加わるストリングスの音色が曲にスピード感を与えている。シンプルなメロディゆえ、心に深く刺さる。
03Say Goodbye
イントロから全編を彩るペダルスチールのような音色が印象的なミディアム・ナンバー。闇を切り裂き、新たな世界へと続く道を作り出すかのような“I Wanna Say Goodbye”のリフレインが爽快に響く。力強く高らかなヴォーカルが見事。
04Shine
君は一人じゃない、そばにいるから、自分らしく生きることを忘れないで……大切な人の背中を押す歌詞が感動的な、フジテレビ系ドラマ『カエルの王女さま』主題歌の2ndシングル。彼女の真っ直ぐに伸びる声の魅力が存分に発揮されている。
05明日また晴れますように
アコースティック・ギターとストリングが絡み合い、心温まる世界を作り上げたミディアム・ポップ。君と誓った夢があるから空を超えて行けるんだ、と綴った歌詞が胸に響く。どこまでも澄み切った空にこだまするような“La la……”のメロディが印象的。
06Second Dream
不穏な空気を醸し出す、分厚いストリングスで幕を開けるアップ・テンポなナンバー。夢破れても立ち止まることなく歩き続けるんだという、痛々しいまでの覚悟を綴った歌詞にドキッとさせられる。凛としたヴォーカルが歌詞にピッタリ。
07キミだけ
ピアノと歌による導入から、後半に向けて熱を帯びていくアレンジが感動的なミディアム・バラード。キミだけを追いかけて歩いてきた日々の終わりがもたらす悲しみと困惑、そして喪失感を見事に綴る。情感豊かな歌声に心を奪われる。
08Bless You
鈴木“Daichi”秀行が編曲を手がけた3rdシングル。“愛なんていつも残酷で もう祈る価値ないよ”という強い言葉による導入が印象的だ。サビのメロディを変化させながら、心のうちを赤裸々に描くラストのアレンジが見事。
09Fake Love
許されぬ恋を想起させるよう言葉を並べ、“嫌い 嫌い 嫌い”とシャウトしながらも“嘘まみれの恋”に走り出す胸の内を描いた攻撃的なナンバー。ジャキジャキと鳴らすアコースティック・ギターのカッティングでリズムを引っ張る。
10Hello
瑞々しく爽やかなサウンドが心地よいミディアム・アップ。水たまりに映る空の色や波の囁きといった色彩豊かな情景をすぐそこに感じさせるような、生き生きとした描写が秀逸。温かなメロディとサウンドの相性も抜群だ。
11ミスター
転がるピアノと弾むリズム、コーラス・ワークなど、キュートかつロックンロール風のテイストで統一したポップ・チューン。クールでエッジの立った表情を見せることの多い彼女だが、ここでは10代らしい無邪気な顔を見せてくれる。
12Lady Mary
ピアノのアルペジオを中心にした複雑なアンサンブルで重厚な世界を作り上げたミディアム・バラード。心に刻まれた傷を映し出したかのようなサウンドをバックに、終わりを迎えた恋を描く。メロディから感じるテンポと実際のテンポのギャップがおもしろい。
13Linda
群れに属して行き詰まるより、背伸びしてでもアタシでいたい……教室で居場所を見つけることのない少女の心情をリアルに描いたアグレッシヴなナンバー。爆発しそうな胸のうちをそのまま音にしたかのような中盤のギター・ソロが秀逸だ。