ミニ・レビュー
レバノン人とアメリカ人の間に生まれ、ロシア人からピアノを学び……と多様な環境で育ってきたMIKAの記念すべきデビュー作。60'sポップ〜グラム・ロックなどをベースにしたハッピーな歌を聴かせる。その人生経験が表われたのか、カラフルな曲作りのセンスは天才的!
ガイドコメント
モデルとしても活躍し、日本通としても知られるレバノン生まれの男性シンガー、MIKAのデビュー盤。ピアノを軸にした良質なポップスが満載で、全英チャート1位に輝いたのも納得の傑作だ。
収録曲
01GRACE KELLY
フレディ・マーキュリーを思わせる歌声と、ポップでドラマティックなメロディが印象的。下積み時代にレコード会社から不本意な曲作りを要求され、頭に来て作った曲という。“僕は僕だ!”という怒りの感情をぶつけたナンバーだ。
02LOLLIPOP
長男の彼が、妹を守りたいと願う気持ちを歌った可愛らしいポップ・ソング。子供の無垢な歓声や軽やかなピアノ演奏をちりばめ、60年代風デキシー・スタイルでアレンジしている。曲全体に漂う明るく華やかな雰囲気に心が弾むよう。
03MY INTERPRETATION
5オクターブといわれる声域をたっぷり堪能できる、爽やかなピアノ・ポップ。ミドル・テンポのメロディを背景に、ソフトなささやきから突き抜けるハイトーン・ヴォイスまでを披露。自由自在な歌唱法で、気持ち良さそうに歌っている。
04LOVE TODAY
プリンスばりのファルセットを聴かせる、キャッチーなディスコ調ロック。“ラブ・ラブ・ミー”“ショック・ショック・ミー”という、楽しいフレーズが繰り返される。彼がとても幸せな気分の日に書いた曲で、高揚感と力強さにあふれている。
05RELAX (TAKE IT EASY)
一昔前のディスコ音楽を思わせる、哀愁ユーロ系のポップ・ソング。彼の美しい5オクターブの歌声が、シンプルなキーボードとギターにあいまって、感傷的に響いてくる。どこかアバを思い起こさせるメロディが懐かしい。
06RING RING
鳴り続ける電話のベルと性急に畳み掛けてくるキーボードの演奏が印象的なドラマティック・ポップ。愛を失い危険な妄想を抱いた元彼女からの電話に、追い詰められていく男の姿を歌っている。力の入った歌い方が曲の物語性を高めている。
07ANY OTHER WORLD
彼の知り合いであるレバノン人女性の語りによって始まるバラード。爆撃で片目を失い婚約者をも失ってしまったという実話を取り上げている。ストリングスを取り入れた壮大なメロディが、運命の過酷さを表わしているよう。
08BILLY BROWN
男性に恋をした既婚男性を描いた、コミカルなポップ・チューン。ビートルズの「ペニーレイン」を思わせる素朴でキャッチーなメロディが、70年代の香りを漂わせている。エンターテイナーとしての彼の魅力がたっぷり注がれた楽しい楽曲。
09BIG GIRL (YOU ARE BEAUTIFUL)
ふくよかな女性の美しさを賞賛しているダンス・ナンバー。ダイエット・コーラをストローで飲み干す“ゴゴゴ”という音と、幸せそうな吐息から始まる遊び心に満ちた構成が彼らしい。“ビッグ・ガール! 君は美しい!”と手放しで賞賛している。
10STUCK IN THE MIDDLE
ジャジィなピアノの伴奏に幕を開けるピアノ・ポップ。陽気で軽やかなピアノ演奏をバックに、5オクターブの声をフルに生かした、表情豊かな声の移り変わりを披露している。ヴォーカルが作り出すサビのハーモニーも魅力的だ。
11ERASE
ドラマティックな歌唱を聴かせてくれる、70年代風ヴォーカル・ソング。ソフトな歌声と悲しみを表わした感情的な歌い方が、男女の別れを描く詞にリスナーを引き込んでいく。ジンと心が温まる切ないメロディが耳に残る。
12YOUR SYMPATHY
ピアノをベースにした哀歓あふれるメロディと、ささやくようにソフトな歌声が優しいバラード。奇をてらわないスタンダードな音作りが、彼の音楽的な才能と自信を伝えている。憂鬱な男心を歌った詞が、彼の心の奥底を映しているようで興味深い。
13HAPPY ENDING
彼自身の複雑な人生観を音楽で表現した二部作。一部はゴスペル・クワイアとストリングスが華やかに盛り上げ、二部ではボーイ・ソプラノ風の清らかな歌声で孤独の詞を綴っている。少年時代にオペラを歌った貴重な体験が生かされている。
仕様
エンハンストCD内容:グレース・ケリー (ビデオ)