ミニ・レビュー
人気の米ロック・バンドの6作目。前作に続きブレンダン・オブライエンのプロデュースだ。歌を重視しながらも適度に自由なバックの楽器群とのミクスチャーが見事。これまでで最長の1年間をかけて制作されたという、バンドにとって意味あるアルバムだ。
ガイドコメント
前作から約2年半ぶりとなる、メジャー5作目のアルバム。デビュー当時からユニークさがきわだっていた人気バンド、インキュバスが、ヒップなミクスチャー系バンドの魅力を改めて世に示す1枚だ。
収録曲
01QUICKSAND
前作に引き続きブレンダン・オブライエンのプロデュースによる6作目『ライト・グレネイズ』のオープニング曲。アルバムの内容を暗示するかのようなゆったりめのスケール感のある演奏で、ヴォーカルも実に堂々としている。そのまま次曲へと切れ目なく繋がっていく。
02A KISS TO SEND US OFF
軽やかなギターの後、ドラマティックなイントロでスタート。ヴォーカルをメインにしながらも時にバックが自由に交錯し合うという、適度に実験的な面も見られる。彼らならではのスリリングな演奏が光るナンバーだ。
03DIG
印象的なギターのアルペジオから始まるミディアム・ナンバー。ブランドンの伸びやかなヴォーカルが心に残る、これまでになかったようなポップなスタイルで、バンドの新たな方向性を感じさせる楽曲だ。
04ANNA MOLLY
アルバム『ライト・グレネイズ』からの1stシングル。緩急のあるダイナミックな構成やキャッチーなメロディ・ラインなど、シングルにふさわしい作り。特に印象的なのが豊かな表現力を身に付けたヴォーカルで、バンドの成長が感じられる1曲だ。
05LOVE HURTS
落ち着きのあるギターで始まるミディアム・ナンバー。抑制の効いた歌声やどっしりとしたドラムスなど、派手ではないがヒューマンな温かみを感じさせる。テクニックを超えて何かを伝えることに重点を置いているようだ。
06LIGHT GRENADES
ヘヴィなギターをフィーチャーしたアルバム『ライト・グレネイズ』のタイトル曲。情感のあるヴォーカルもいいが、ここでの弾けるようなヴォーカルもまた魅力的だ。バックも思い切り暴れているといった感じで、これまた痛快。それにしてもすごい迫力だ。
07EARTH TO BELLA
アコースティック・ギターをメインにした、ちょっとシリアスな曲のパート1。基本的にはバラードだが、激しく盛り上がる部分も。メッセージが込められた歌詞とともにバンドのスケールの大きさを改めて実感できる。
08OIL AND WATER
一聴するとキャッチーでまとまりのあるサウンドだが、実は随所に細やかな配慮がなされている、ギターの音色やリズムが心地よい。切実に訴えかけてくるヴォーカルが胸に染みてくる、バンドの円熟味が伝わってくるナンバーだ。
09DIAMONDS AND COAL
キャッチーなメロディとダイナミックなサウンドのバランスの良さが光る、比較的ポップに仕上げたナンバー。じわじわと盛り上がっていく展開で、聴き手の気持ちも高まる終盤のクライマックスが白眉。バンドの一体感を見事に示す演奏だ。
10ROGUES
ゆるやかなイントロから一転して重量感のあるサウンドへ展開する、インキュバス流ヘヴィ・ロック。ヴォーカルはもちろんだが、大黒柱的な役割を果たす力強いドラム、そしてシャープなギター・ソロにもハッとさせられる、迫力のあるナンバーだ。
11PAPER SHOES
アコースティック・ギターをフィーチャーした哀愁漂うナンバー。祈るようなヴォーカルとコーラス、スケールの大きいリズムなど、全体をとおして大河の流れにたとえてもいいような存在感のある曲だ。特にギター・ソロがカッコいい。
12PENDULOUS THREADS
機械的な響きのイントロを持つ力強いロック。キャッチーなメロディを持ちながらも破壊的なパワーを感じるサウンドで、特に間奏での金属的なギターに圧倒される。ポップさと実験的な要素がうまく絡み合ったナンバーだ。
13EARTH TO BELLA
バラード風にシリアスなメッセージが込められた、アルバム『ライト・グレネイズ』に収録のパート1と基本的には同じだが、こちらは歌詞が少なめ。混沌とした音の塊で終わるなど、インスト部分を重視しているような、アルバムのラストに余韻を残すナンバーだ。
14PUNCHDRUNK
アルバム『ライト・グレネイズ』日本盤のみのボーナス・トラック。サウンド作りもシンプルでゆったりとしていて、歌をじっくり聴かせる構成だ。以前にも増して表現力のある情感たっぷりのヴォーカルが存分に味わえるナンバー。
15LOOK ALIVE
アルバム『ライト・グレネイズ』に収録のボーナス・トラック。アルバム本編でよくみられたイントロの工夫だが、この曲もどんな展開になるか予想がつかないユニークなイントロ。パワフルかつリズミックな演奏で、遊び心も感じさせる。ライヴ映えもしそうだ。