ミニ・レビュー
カリフォルニア州サンタバーバラ出身のメロディック・パンク・バンドのサード作。パワー・ポップ的要素もある多彩なポップ・メロディとサウンドは、グリーン・デイがお気に入りなのも納得の佳曲揃いの力作だ。車のCMソングでお馴染みのビートルズ・カヴァー(14)も収録。
ガイドコメント
カリフォルニア出身4人組パワー・ポップ・バンドの3rdアルバム。ティム・パグノッタのパンキッシュなヴォーカルとタイトなバンド・アンサンブルによるご機嫌なパンク・チューンが満載。
収録曲
01LIGHT OUT
エレクトリック・ギターのフィードバック音が渦巻く中で、シュガーカルトが新たな高みに到達したことを世界に告げる“覚醒”の序曲。「デッド・リヴィング」のイントロとしての役割も果たす、パンキッシュなショート・ナンバーだ。
02DEAD LIVING
アルバム『ライツ・アウト』のタイトル曲から間髪入れずに放たれる、エッジの効いたハードなロックンロール・ナンバー。「外敵から助かることはできない」と嘆く歌詞とは対照的に、サウンドは暗闇の先にある希望を掴み取ろうとするかのように前向きで力強い。
03LOS ANGELES
ロサンゼルスという大都会の真ん中で覚える渇望感を、ティム・パグノッタが荒々しく歌い上げたパンク・ナンバー。哀愁に満ちたマイナー調のメロディ・ラインと激しいエレクトリック・ギターの絡みが切なくも魅力的だ。
04DO IT ALONE
アルバム『ライツ・アウト』からの1stシングルとなった、ポップなラブ・ソング。「独りで生きたくないんだ」というセンチメンタルな想いを、親しみやすいメロディ・ラインと疾走感あふれるビートに乗せて爆発させている。
05EXPLODE
ただひたすらに救いを求め続ける、切迫感に満ちたハードなロック・ナンバー。生ドラムの音が細かい編集を施されて無機的なブレイクビーツとして仕上げられており、楽曲の殺伐とした雰囲気をいっそう強調している。
06OUT OF PHASE
うなるベース・ラインに導かれるようにして、デジタル社会に対する破壊願望とそこから切り離された孤独感を歌い上げる退廃的なロック・チューン。サビでは、ティム・パグノッタの壮絶なシャウトが堪能できる。
07MADE A MISTAKE
リヴァーブが強めにかけられた、80年代ニューウェイヴ調のエレクトリック・ギターの音色が耳に残るミディアム・チューン。取り返しのつかない間違いを犯した男の悔恨の念が、落ち着いたビートに乗せてじっくりと描き出される。
08RIOT
「オレたちの自由を奪うことはできないぜ」と権威への反抗を表明するパンク・ナンバー。ただ反抗するだけではなく、「素晴らしいもの」を作り出そうとするポジティヴな意志にもあふれているところが、2000年代のバンドならではだ。
09MAJOURING IN MINORS
「もうここに居座るつもりはない」と、根なし草として旅を続けていく強い決意を高らかに歌い上げるモダン・ロック・チューン。前向きななかにもわずかながらの喪失感をにじませる、ティム・パグノッタの巧みな感情表現が聴きものだ。
10SHAKING
エレクトリック・ギターの軽快なコード・ストロークを中心に構成された、爽やかなパワー・ポップ・ナンバー。愛する人と一緒にいられる喜びを歌い上げた、チャーミングなラブ・ソングとなっている。
11THE INVESTIGATION
ゆったりとしたビートやエレクトリック・ギターのやわらかなフィードバック音が伸びやかに鳴り響いていく。壮大なサウンドがどこまでも広がる真っ直ぐな地平線を想起させる、ドリーミーなバラード・ナンバー。
12HIATUS
アイリーンのテクニカルなベース・プレイが堪能できる、鋭い16ビートが刺激的なヘヴィ・ロック・チューン。ヘヴィなサウンドながらもキャッチーなメロディ・ラインを絡ませるところに、シュガーカルトの“らしさ”が表われている。
13FREEZING
テクノ調のキーボードのシークエンスに導かれて始まる、アコースティック・ナンバー。タイトルにもなっている冬のいてつくような寒さを、ピチカート奏法を用いたストリングスによる柔らかな音色で巧みに表現している。
14A HARD DAY'S NIGHT
初期ビートルズを代表する名曲をポップ・パンク調にカヴァー。ラウドなギターを強調した現代的なサウンドながらも、ギター・ソロやエンディングなどは原曲を忠実にコピーしており、彼らのビートルズへの愛をうかがい知ることができる。