ミニ・レビュー
4度目の来日公演、95年11月8日の武道館公演を収録した2枚組オフィシャル・ライヴ・アルバム。日本のみのリリース。ほとんど当日の曲順通りに再現された、1時間36分のライヴの臨場感をたっぷり楽しめる。武道館ライヴを発表するとは大物の証拠。
収録曲
[Disc 1]
01THE GREAT ESCAPE
95年11月8日、日本武道館でのライヴ音源。アルバム『ザ・グレイト・エスケープ』にちなみ、ブラーの面々はホーン隊がスカ・パンク調に演奏する映画『大脱走』のテーマ曲で登場。このネタ、会場の若いファンに通じた?
02JUBILEE
95年11月8日、日本武道館でのライヴ音源。早くも興奮気味の観客に気圧されたのか、デーモンの歌声が上ずり気味。ついついバンドもスタジオ版よりも速いテンポで弾き倒す。間奏部での電子音はスタジオ版そのまま。
03POPSCENE
95年11月8日、日本武道館でのライヴ音源。スタジオ版に沿った手堅い演奏ながら、ギターの音がやや大きめ。そのため、イントロで気分を盛り上げてくれるはずのモッドなベース・ラインの影が薄くなってしまっている。
04END OF A CENTURY
95年11月8日、日本武道館でのライヴ音源。ビートルズとキンクスの魅力を合体させた哀愁のメロウ・ナンバーに観客も嬌声。スタジオ版の完成度には及ばないが、コーラスや鍵盤を駆使したアレンジはまずまずの再現度。
05TRACY JACKS
95年11月8日、日本武道館でのライヴ音源。イントロから本編へと唐突に調子が切り替わる凝った曲だが、生演奏では難しいのかギクシャク。快活な演奏はスタジオ版にはない魅力だ。曲終了後には日本語で「アリガート」。
06MR. ROBINSON'S QUANGO
95年11月8日、日本武道館でのライヴ音源。グルーヴ感が魅力のこのモッド・ナンバーも、バンドの息はいまいち合わず。演奏が終わるや、そのまま今度は♪ラララーとクルト・ワイル作「マック・ザ・ナイフ」へと移行。
07TO THE END
95年11月8日、日本武道館でのライヴ音源。レティシア・サディエールとのエレガントなデュエット・ナンバーを、ここではデーモンが独唱。会場にいる女性ファン全員をレティシアになった気分に浸らせたに違いない。
08FADE AWAY
95年11月8日、日本武道館でのライヴ音源。元々トリッキーな楽曲が、バンドのおぼつかない演奏力のたまものでさらにトリッキーに。本来なら中盤以降で鳴るはずのサーフ・ギターが、開始早々ワイルドに鳴り響く。
09IT COULD BE YOU
95年11月8日、日本武道館でのライヴ音源。緊張が解けてきたのか、前のめり気味だった演奏に落ち着きが。そもそもがシンプルなアレンジの曲だけに、勢いで押し通す演奏が見事にハマり、スタジオ版よりも魅力的な曲に。
10STEREOTYPES
95年11月8日、日本武道館でのライヴ音源。エキセントリックなサウンドが鳴りわたるモダン・ポップ・ナンバーを、スタジオ版よりもエキセントリック度を抑えたサウンドで披露。演奏終了後には、「アリガート」とお礼。
11SHE'S SO HIGH
95年11月9日、NHKホールでのライヴ音源。当時のライヴでは演奏されなくなっていたデビュー曲で、ファンの強い希望に応えプレイ。イントロが鳴った瞬間に“数人だけ”が上げた大嬌声から、当日のファン層が明らかに。
12GIRLS & BOYS
95年11月8日、日本武道館でのライヴ音源。日本でのブラー人気を決定づけた曲だけに、イントロと同時に黄色い大歓声。デーモンに「カラオーケ」とうながされた観客のひとりが声を裏返しながら歌う場面はいまや伝説に。
13ADVERT
95年11月8日、日本武道館でのライヴ音源。初期XTCに通じるモダン・ポップなナンバーを、スタジオ版よりも速いテンポに変えてパンキッシュにプレイ。グレアムの弾くギターが速くてノイジーな上に生き生きとしている。
14INTERMISSION
95年11月8日、日本武道館でのライヴ音源。だんだんとスピードが増して幕となるこのインスト曲を、ここではさらに加速の度合いを早めてプレイ。通常2分半の曲を1分半で終わらせる、文字通りのインターミッションに。
15BANK HOLIDAY
95年11月8日、日本武道館でのライヴ音源。スタジオ版では左右に振り分けてあるデーモンのヴォーカルが、ここではひとつのマイクから速射砲のごとく立て続けに聴こえてくる。そのため、ただでさえ性急な曲のムードがより性急に。
16FOR TOMORROW
95年11月8日、日本武道館でのライヴ音源。彼らが持つキンクス的要素を詰め込んだ哀愁漂う名曲。間奏でホーン隊のソロを採り入れるなど、アレンジの細部にライヴならではの変更が。グレアムがコーラスで奮闘している。
17COUNTRY HOUSE
95年11月8日、日本武道館でのライヴ音源。メランコリックで陽気な人気曲。コーラスの出来ではスタジオ版に劣るものの、ライヴも終盤に近づき一体感を増した演奏が、生ならではの得がたい高揚感をもたらせてくれる。
18THIS IS A LOW
95年11月8日、日本武道館でのライヴ音源。テムズ川を遡上しながら描かれる英国名所巡りナンバーが、神田川そばの武道館に鳴りわたる。アコギのパートもグレアムがエレギで弾いているため、メロディの湿り気がやや減退。
19SUPA SHOPPA
95年11月8日、日本武道館でのライヴ音源。ライヴ本編を締めくくったのは、コアなファン以外にはなじみの薄い曲。この意外な選曲に観客も少々戸惑い気味。演奏終了後、「オヤスーミ」と声を掛け、メンバーは一旦退場。
[Disc 2]
01YUKO AND HIRO
95年11月8日、日本武道館でのライヴ音源。日本人の会社至上主義を揶揄した曲を、例の珍妙な日本語コーラス付きで当の日本人の前で披露する英国人。それを静聴する日本人の姿は、ユーモアに寛容な証? それとも……?
02HE THOUGHT OF CARS
95年11月8日、日本武道館でのライヴ音源。シュールな音処理が特徴的な曲だが、ステージでの再現は難しかったようで、ここではオーソドックスなサウンドでのプレイに終始。結果、メロディの良さが引き立った好演に。
03COPING
95年11月8日、日本武道館でのライヴ音源。モダン・ポップなアレンジのパンキッシュな楽曲を、ここではさらにパンク度を高めてプレイ。アンコール3曲目で疲れているのか、デーモンの歌声がやけっぱち気味で愉快。
04GLOBE ALONE
95年11月8日、日本武道館でのライヴ音源。声を裏返しながら熱演するパンク・ナンバー。ここでの聴きどころは怒涛のドラミングと、歴史的脱力MC「ニッファンノミナーアイシーマス(日本のみんな愛してます)」だ。
05PARKLIFE
95年11月8日、日本武道館でのライヴ音源。デーモンが上手く“訛れなかった”ために俳優フィル・ダニエルズを起用した語り部分を、ここではデーモンが担当。“予定ではこうなるはずだった”ヴァージョンがここで聴ける。
06THE UNIVERSAL
95年11月8日、日本武道館でのライヴ音源。アンコールの最後に待っていたのは、このメロウ・ナンバー。ホーン、ストリングス、女性コーラスを従えたカタルシスいっぱいの演奏で、最高潮に達した会場の興奮をチル・アウト。