ミニ・レビュー
2002年の暮れから2003年にかけて行なわれた“LICKツアー”からベストな演奏を厳選し、再編集した彼らのライヴ決定版。ダリル・ジョーンズやチャック・リーヴェルといった名うてのプレイヤーを迎え、往年のヒット曲を惜しみなく聴かせてくれる。
ガイドコメント
2年にも及ぶ大規模ツアーとなった“FORTY LICKS TOUR”の模様を収録した2枚組ライヴ盤。1枚目はヒット・ナンバーを中心に選曲され、2枚目にはライヴで演奏されることも珍しいレアなナンバーを中心に収録。
収録曲
[Disc 1]
01BROWN SUGAR
リックス・ワールド・ツアー2002〜2003で、スタジアム・クラスでのオープニング・ナンバーとして演奏。もともとは『スティッキー・フィンガーズ』に収録、シングルとしても大ヒットした曲だ。ギターの切れのあるフレーズから始まるイントロなど、永久に不滅のストーンズ・サウンドを高らかに響かせてスタート。
02STREET FIGHTING MAN
1968年にシングルで発表されたナンバーで、騒ぎのなか「貧乏人のガキにできることといったらロックンロールを歌うことくらい」というフレーズがイカしている。こちらのライヴ・ヴァージョンもかつてのライヴ盤『ゲット・ヤー・ヤ・ヤズ・アウト』での演奏のように、テンポが速く、ミックのヴォーカルもワイルドだ。
03PAINT IT, BLACK
1966年に発表されたストーンズの名曲中の名曲。エキゾティックな旋律と「黒」をテーマにした歌詞が印象的だ。今回のリックス・ツアーでフィーチャーされているのは、ロン・ウッドが弾くシタール・ギター。オリジナルのシタールの響きを生かしたフレーズで、曲の雰囲気を損なわない演奏に仕上がっている。
04YOU CAN'T ALWAYS GET WHAT YOU WANT
『レット・イット・ブリード』をはじめ、さまざまな場面でフィーチャーされてきた名曲。ゴスペル調の曲で、女性のコーラス隊をフィーチャー。また観客とのコール・アンド・レスポンスをはさむシーンはライヴならでは。最後にテンポ・アップするなど、オリジナル・レコーディングを意識した仕上がり。
05START ME UP
81年発表のシングル曲。アルバム『刺青の男』にも収録された、まさしく80年代のストーンズを代表する名曲で、観客もイントロを聴いただけで反応するほど。こちらのライヴでもオリジナル・レコーディングに忠実なアレンジで、音のすき間を生かし跳ねるようなドラムのビートは、いつ聴いてもカッコいいのひと言。
06IT'S ONLY ROCK N'ROLL
ストーンズ不滅のメッセージ「たかがロックンロール、けど大好きさ」という宣言が素晴らしい、あまたあるロックンロール・ナンバーを代表するといってもさしつかえないロックンロール・ナンバー。得意のチャック・ベリー的なギター・フレーズをたっぷり盛り込んで、少しいなたいテンポで、じっくりと演奏する。
07ANGIE
1973年のアルバム『山羊の頭のスープ』に収録されたストーンズのバラードのなかでも屈指の魅力を放つ名曲。ピアノ、アコースティック・ギターなどのアレンジはオリジナル・レコーディングと変わることなく、センチメンタルなムードを漂わせる。ミックのヴォーカルもジェントルでとてもスウィート。
08HONKY TONK WOMEN
1969年に発表、ストーンズのいなたいサウンドを代表する名曲。こちらのライヴ・ヴァージョンのテンポやアレンジは、オリジナル・レコーディングにかなり近いもの。ただしゲスト・ヴォーカルにシェリル・クロウを迎えてのもので、入れ替わりで彼女が2番を歌い始める場面での観客の盛り上がりにも注目。
09HAPPY
ギタリスト、キース・リチャーズがヴォーカルでリードをとることでファンにおなじみの曲。基本的にはオリジナル・レコーディングに近い仕上がりながら、声を張り上げずに歌う。キースの風格を感じさせるヴォーカルの味わいはもちろん、ロン・ウッドが所狭しと暴れまくるスライド・ギターなどが聴きどころ。
10GIMME SHELTER
『レット・イット・ブリード』のオープニングを飾ったソウルフルなナンバー。リックス・ツアーのヴァージョンでは、オリジナル・レコーディングに近いテンポ、アレンジで演奏しているが、ミックとデュエットする女性役はおなじみリサ・フィッシャー。彼女のどこまでも力強いヴォーカルに耳が釘付けになってしまう。
11(I CAN'T GET NO) SATISFACTION
1965年に英米で大ヒット、「満足できない」というキャッチーなフレーズと印象的なギター・リフで一躍ストーンズの名を世界的にしたナンバー。リックス・ツアーでのライヴ・ヴァージョンでも、発表当時の勢いそのままの、いまだ現役バンドといえる若々しい演奏。エンディングのラフな終わり方もパンキッシュだ。
[Disc 2]
01NEIGHBOURS
81年のアルバム『刺青の男』に収録されていたアップ・テンポのロックンロール。ライヴ・アルバムに収録されるのは珍しく、こちらが初。「親しくしている隣人にも自分の身になって接したほうがいいぜ」というロックンロールらしくない道徳的な歌詞が意外だが、スピーディなビートとの取り合わせの妙が魅力だ。
02MONKY MAN
1969年発表の『レット・イット・ブリード』に収録されていたナンバー。ライヴでの収録はこちらのアルバムが初で、跳ねたドラムのビートを軸に、いなたい演奏が展開し、ミック・ジャガーがモンキー=麻薬常習者になりきったように歌う。イントロのキラリと光るような不思議なピアノのフレーズもライヴで再現されている。
03ROCKS OFF
1972年の傑作『メイン・ストリートのならず者』のオープニングを飾ったナンバー。『ライヴ・リックス』ヴァージョンでは、ギターのみのイントロの部分はもちろん、ホーン・セクションなどを交えた華やかな雰囲気はそのままに、オリジナル・レコーディングに近い、再現度の高い演奏を展開している。
04CAN'T YOU HEAR ME KNOCKING
1971年の傑作アルバム『スティッキー・フィンガーズ』に収録されていたナンバー。ファンキーなリフとヴォーカル部ののち、サックスとギターでのソロ回しで終わるという変則的な構成で知られる。10分にも及ぶ長尺となったこちらのライヴ・ヴァージョンでは、ミック・ジャガーのハープ・ソロも加わっている。
05THAT'S HOW STRONG MY LOVE IS
伝説的なソウルマン、オーティス・レディングが歌ったことで知られる名曲で、かつてストーンズもライヴで得意としていたカヴァー。『ライヴ・リックス』ヴァージョンでは、ミックが強弱をつけた熱唱を聴かせ、大所帯バンドの演奏もその熱唱を盛り上げ、いったん終わったように聴かせながら、ふたたび始まるリフレインに涙。
06THE NEARNESS OF YOU
「スターダスト」「ジョージア・オン・マイ・マインド」など、スタンダード・ナンバーを数多く発表した偉人ホーギー・カーマイケルの作品をカヴァー。ストーンズとしては初めてレコード化されたもので、キース・リチャーズの酸いも甘いもかみ分けた、渋い歌いっぷりにじっくりと耳を傾けたいムーディな一曲。
07BEAST OF BURDEN
1978年のアルバム『女たち』に収録されていた、ゆったりとしていてソウルフルなナンバー。ライヴで披露されることは珍しい。「おまえの荷物運搬係になんてなりたくない」と相手の女性に対して愛情を求めるラヴ・ソング。ミック・ジャガーの歌いっぷりも若々しく、演奏も引き締まっていて、仕上がり上々だ。
08WHEN THE WHIP COMES DOWN
スピーディなロックンロール・ナンバーで、『女たち』に収録されていたもの。ニューヨークやロサンゼルスといった大都会でのストリートを題材にした歌詞と、けたたましいほどの演奏は、ストーンズ流パンクといえる内容。このライヴ・ヴァージョンでのパワフルな仕上がりは、メンバーが還暦を迎えているバンドとは思えない。
09ROCK ME, BABY
ブルース界の帝王B.B.キングで有名なブルース・ナンバー。ゆったりとしたシャッフルのリズムのなかで栄えるミックの堂々とした歌いっぷりは、B.B.に通じるものがある。さまざまなミュージシャンが知っているジャム・セッションの超定番ナンバーをあえて演奏する、余裕たっぷりのストーンズが楽しめる。
10YOU DON'T HAVE TO MEAN IT
97年のアルバム『ブリッジ・トゥ・バビロン』に収録されていたキース・リチャーズのヴォーカルによる、レゲエ風ナンバー。オルガンなどを取り入れており、ロックステディのようにカラッと陽気な雰囲気で、キースのかすれた声との意外な取り合わせが楽しめる。こちらもライヴで披露されることは珍しい。
11WORRIED ABOUT YOU
『刺青の男』に収録されていたソウルフルなバラード系ナンバーで、ライヴ盤の収録は初。ミック・ジャガーのファルセットを使った熱唱に加え、エレピも担当しており、ミックのソロ・フィーチャー曲ともいえるほど。歌詞も女性への嘆願を繰り返し、ゴスペルのように祈るように歌われ、とてもパワフル。
12EVERYBODY NEEDS SOMEBODY TO LOVE
名ソウル・シンガー、ソロモン・バークで知られ、デビュー当初のストーンズもスタジオ録音、ライヴ録音を残しており、元来得意とするナンバー。今回ライヴ・ヴァージョンではかつては入っていなかったホーン・セクションに加え、御本家であるバークが登場、超重量級の歌いっぷりを聴かせ、会場を盛り上げる。
13IF YOU CAN'T ROCK ME
録音
[1] (1)〜(4) [2] (3)2002.8,9 [1] (5)〜(11) [2] (2)(8)2002.