ミニ・レビュー
ピアノ弾き語りによる「LOVE LETTR」から始まる5枚目のアルバム。Ikomanの音作りも含め、いつもながらのカラフルで楽しさいっぱいのテーマ・パーク的作りには変わりないものの、今作は特にシンガー・ソングライターとしての大塚愛にスポットが当たっている気が。「シヤチハタ」はご愛嬌。★
ガイドコメント
デビュー5周年となる2008年発表、通算5枚目のアルバム。全国10万人動員ツアーや初の海外ライヴなど、多岐にわたる活動でさらに成長した彼女の魅力が詰め込まれた充実の一枚だ。
収録曲
01LOVE LETTER
本人のピアノによりゆったりと歌われるスロー・ラヴ・バラード。“恋のような 愛のような”と繰り返す包み込むようなヴォーカルに、安らぎと優しさがにじみ出ている。触れ合えることの幸せが伝わる一曲だ。NHK-BS『私の1冊 日本の100冊』テーマ・ソング。
02ロケットスニーカー
今、生きていられることの素晴らしさを“ああ、地球っこ”というフレーズで描写したポップ・チューン。活力あるポジディヴな詞をいっそう元気にさせるのは、丈青による弾力あるピアノだ。関西テレビ『さんまのまんま』エンディング曲となった17thシングル。
03バイバイ
明日に強くなるため、幸せになるための“バイバイ”にしようと自答するポップ・チューン。グリッサンドを駆使するなどにぎやかなリズム隊に元気づけられるように、歌唱にも推進力が感じられる。サビ最後の“バイバイ”がキュート。アサヒ「すらっと」CMソング。
04クラゲ、流れ星
TBS系『恋するハニカミ!』などに起用された18thシングル。距離を隔てた会えない人への実直な想いを綴ったラヴ・バラードで、時折ファルセットを用いた哀願するような歌唱に胸が詰まる。きらびやかなハープと優美なストリングスによるアレンジが出色。
05人形
弦一徹ストリングスと大塚愛のピアノで綴られる悲しき人形の物語。“身ごもった少女は……死刑台へ”“男に身をあずける”などの詞はタイトルから想起できないショッキングなものだが、ほのかな幸せが感じられる歌唱が重い空気を抑えている。
06君フェチ
愛の表現はさまざまだが、相手への夢中な気持ちを“君フェチ”とするところが秀逸。優しく快いミディアム・スローに乗せた、肌の温もりを感じて安堵する猫のような人なつこい歌唱やまどろみをもたらすハモンド・オルガンが、この楽曲の世界観をうまく描写している。
07Creamy&Spicy
軽快に刻まれるギターと“ラララー”というフレーズに、恋のワクワクする気持ちが詰まっているハッピー・チューン。今にも告白してしまいそうな気持ちを抑えようと躍起になりながら、サウンドはそれを急かすように畳み掛けるのが面白い。
08ド☆ポジティヴ
とにかくネガティヴ反対! 明日に夢があればOK! と宣言するアッパー・ロック。歌唱にも大塚愛のコミカルな面が活かされた自然体のナンバーだが、バカバカしく歌いながらも身近なところに嬉しいことはたくさんあるというメッセージをしっかりと伝えている。
09360°
アンニュイなムードで包まれたファンタジックなアッパー・チューン。好きから嫌い、嫌いから好きへとぐるぐると揺れ動く恋心を、観覧車やメリーゴーランドにたとえた世界観がユニーク。ホイッスル・ヴォイスやコケティッシュな歌唱などもよいアクセントになっている。
10シヤチハタ
ピアノの笹路正徳やアルトサックスの本田雅人らによる、ホーン隊を含むジャズ・セクションをバックに奏でられる艶っぽいファンキー・ジャズ。贅沢なバンドを従えながら、歌うのは“ダバダバダバ……シヤチハタ”の一句だけという変わり種もまた大塚愛らしい。
11One×Time
スナップ音と軽快に刻まれるギターが次第に幸せで満ちていく心を描写した17thシングル。指先をすべらせ……溶けるように重なる、というメイク・ラヴ・ソングだが、人なつこいヴォーカルによってキュートに聴こえてくるから不思議。「ポンズ ポアホワイト」CM曲。
12ポケット
ピアノとギターが先導するオーソドックスなラヴ・バラード。あなたの一番そばにいられる場所=ポケットにずっといて、愛を深めていこうと綴る。私生活での気持ちを吐露したようなナチュラルな歌唱に心安らぐ、「マイナビ2010」CMソングとなった16thシングル。
13愛
日本生命CMソングとしても話題となったシンプルなバラード。自身の名前を冠した分岐点となる楽曲で、一生で一番呼ばれる“愛”という言葉をテーマに、手で包み込むような優しく芯のある歌唱で披露している。アウトロのキッズ・コーラスが微笑みと涙を誘う。