ミニ・レビュー
RHYMESTERの坂間大介、SUPER BUTTER DOGの竹内朋康によるユニットのセカンド・アルバム。ファンク、ソウル、R&B、ロックンロールを猥雑に混ぜ合わせた極上のグルーヴ・ミュージックのなかで、ユーモアとシニカルをぶちまけるリリックが舞う。傑作。
ガイドコメント
RHYMESTERのMummy-D(坂間大介)とSUPER BUTTER DOGの竹内朋康によるユニット、マボロシの2ndアルバム。ロックやヒップホップ、R&B、ブルースなど、さまざまなエッセンスを独自のサウンドとして見事に昇華させている。
収録曲
01極楽鳥〜intro〜
鳥の鳴き声、タイトなビートを生み出すドラム、そして、ソウル/ファンクの本質を一発で描き出すギター(とにかく音がいい!)。アルバム『ラブシック』に込められた、豊かで強烈な音楽性をしっかりと示唆するイントロダクション。
02超ジェラス
メジャー5枚目のシングル。今作でもMummy-Dと竹内朋康の絶妙なコンビネーションは健在だ。竹内のギター・リフがファンクよりもロックに近いサウンドに仕上がっており、全体的にエッジの効いた鋭い印象となっている。
03あのコどこのコ (feat.RYO the SKYWALKER)
“ダンスホール・レゲエ×ファンク”とでも形容すべきトラックが、かなり斬新なパーティ・チューン。RYO the SKYWALKERをフィーチャーし、ダンス・フロアでのナンパをテーマにしたリリックも楽しい。
04マボロシのLAW
低音を効かせまくった骨太のグルーヴ、楽曲全体に深みを与えるフルート、聴き手の興奮を煽るスクラッチ。さらにエッジー&ソウルフルなギター・ソロや豊潤な響きを持ったハモンド・オルガンなどを、バランスよく融合させたミディアム・チューン。
05ナーヴァス
ジミヘンを想起させるようなコード感を持ったギター・リフ、暴力的ともいえる強度をたたえたビートがひとつになったヒップホップ/ロック。不機嫌な恋人とのやり取りを描いた歌詞も、サウンドの手ざわりとしっかり重なっている。
06饒舌エクスプレス (feat.TARO SOUL、KEN THE 390)
ギター、ベース、ドラム、オルガンを軸にしたオーガニック&ダイナミックなバンド・サウンドのなかで、TARO SOUL、KEN THE 390が、力強いフロウでステップを踏みまくる。高揚感たっぷりのファンク・チューンだ。
07The Dungeon
キャバクラのお姉さんやボーイとの果てしなき攻防を、ロール・プレイング・ゲームの“ダンジョン”に見立てたリリックが、とにかくユニーク。シリアスでダークなイメージを与えるトラック・メイキングも、妙にハマっている。
08WORK 2 DO (feat.DABO、DELI)
DABO、DELIという日本のヒップホップにおける重量級アーティストをフィーチャー。ブレイクビーツとフロウだけで、オーディエンスの気分と身体をがっしりとつかんでと興奮させまくる。“こんなこと言っていいの?”という攻撃的なリリックも最高。
09密会
都会、真夜中、タバコ、夏の空気、そして、ちょっとワケアリな男女の関係……。そんな情景や匂いがムンムンと伝わってくるブルース・バラード。シックな洗練と生々しい男の情感を兼ね備えたギター・ワークにしびれまくり。
10Mr.Yesterday
軽やかなビートと身体の奥底にまで染みわたってくるようなヴァイブレーションを同時に感じさせるギター・カッティングが、とにかく気持ちいい。ソウルフルなギター・ソロも超クールな、大人のためのミディアム・ダンス・チューン。
11Hey Yo!Honey
恋に落ちたときの楽しさ、興奮、切なさをストレートに描いたラヴ・ソング。“Because I Love You”というサビのフレーズを軸にしたメロディックなフロウ、しっかりとソフィスティケイトされた16ビートも気持ちいい。
12キッチンくん
ファンキーに飛び跳ねるギター・フレーズとバウンシーなラップがひとつになったサウンド。そして、“久しぶりのふたりの休日”を映像的に描き出すリリックが見事に融合。高い音楽性と歌モノ・ラップの要素を重ねた名曲。
13ペニー・レイン
ざっくりとした手ざわりのギター・ストロークとホンキートンク風の鍵盤が、気分をウキウキとあげていくオーガニック・チューン。中学時代の恋愛をフラッシュバックさせた歌詞がなつかしく、かわいく、ちょっと切ない。
14HARDCORE HIP HOP STAR pt.2
アルバム『ワルダクミ』にも収録された「HARDCORE HIPHOP STAR」の続編。緩いピッチのクリックによるAメロから一転、疾走するフックへの展開が特徴的。竹内朋康のアコースティック・ギターが曲にブルージィな表情を加えている。