ミニ・レビュー
アトランティック移籍に伴い間が空いたが、約3年ぶりの4作目。人なつこい声と気取りのない唱法は親しみやすく、基本のトーンとなっているキュートな曲調もそれを活かすに適。その中で何気にひねりの利いたウォーリン・キャンベル制作曲が特に印象的。
ガイドコメント
R&B/ソウル界屈指の天才シンガー、ミュージック・ソウルチャイルドの通算4作目となるアルバム。ターナ・ガードナーの黄金人気ネタ「ハートビート」を使用したデ・ラ・ソウルの同名曲を、大胆に新解釈した1stシングル「バディ」も収録している。
収録曲
01B.U.D.D.Y.
デ・ラ・ソウルが「Buddy」で使用したターナ・ガードナー「Heartbeat」を敷いた、アルバム『ラヴアンミュージック』のリード曲。フィリー・ソウルのヒップホップ的解釈とも呼べるサウンドの上で、“僕の相棒にならないかい”と口説いている。
02MS.PHILADELPHIA
スティーヴィー・ワンダー「オーヴァージョイド」のループという大ネタを駆使したニーヨとの共作曲。ゆったりとした浮遊感を醸したムードのなかで、フィリーから来た美女とのロマンスを妄想するというミッド・スローR&B。
03TEACHME
盟友カルヴァン・ハギンスとアイヴァン・バリアスとのトリオによるスムースなミッド・スロー。柔らかなストリングスをバックに、優しく包み込むようなヴォーカルで“キミの愛し方を教えてくれ”と懇願している。
04BETTERMAN
ラファエル・サディークとの共作となるオールドスクール・ソウル。淡々と刻まれるリズムとは対照的に、そこかしこに喜怒哀楽の表情が感じられる色彩豊かなメロディに乗せて、すべての愛を彼女に捧げたいと歌うラヴ・ソングだ。
05THEQUESTIONS
自分にとって最高の人を見つめていたいだけなのに、その人がどこにいるのかわからないという愛の路頭に迷う男を描いた麗しいミッド。シルキー・タッチのサウンドを構築したのは、エイコンやマリオでも知られるネフューによるもの。
06TODAY
ジ・アンダードッグス制作による、なめらかな肌あたりを感じさせるメロウ・グルーヴ。ゆったりとした時の流れを作り出すサウンドに溶け込むように、今日キミと一緒に過ごすと決心したという愛の告白をセクシーに歌っている。
07MAKEYOUHAPPY
“キミの好きなやり方でハッピーにさせてあげる”という紳士的な誘いで彼女をモノにしようとする男の口説きソング。ウォーリン・キャンベルを制作に迎えたタイトなビートのファンキー・アップで、期待感にあふれた歌唱を披露している。
08RIDICULOUS
ウォーリン・キャンベル制作によるファンキー・アップ。人生を変えてくれたキミと過ごせるのはなんて素晴らしいんだという男のノロケを歌う。ファットなボトムと照りのあるホーンのループが興奮を高めている。
09MILLIONAIRE
『星の王子様 ニューヨークへ行く』のアキームみたいな王様暮らしもできるが、“キミと一緒ならそれだけでいいのさ”と告げるラヴ・ソング。ネフューによる細やかで流麗なメロディに乗せた、ファルセットを駆使しての酔いしれた歌唱に注目だ。
10TAKEYOUTHERE
セクシーな吐息とファルセットから幕を開けるアダルトなスロー。最後までは許してくれなくてもいいから、少しはオレにも気持ちいいことしてよという、押し切れずにいるヤサ男のピロー・トーク。ウォーリン・キャンベル制作。
11LULLABY
“眠りにつくまで子守歌みたいに愛で包んであげる”と口説くベッドタイム・ストーリー。ブルー・マジック「ストップ・トゥ・スタート」というドリーミーなフィリー・ソウルを敷いた、とろけるといった描写がふさわしい極上のメロウ・チューンだ。
12GREATESTLOVE
プリンスの「ADORE」にインスパイアされたという、ウォーリン・キャンベル制作による美メロ・スロー。“二人なら最高のラヴ・ソングになれる”というベタな口説き文句を、プリンスを彷彿とさせるクネクネとした妖艶なヴォーカル・ワークで魅せているところが出色。
13REWIND
カルヴァン・ハギンスとアイヴァン・バリアスとの共作による、明確に主張するビートに先導されるミッド。好みのタイプの彼女に声をかけられずじまいだった過去を振り返り、“もう一度時が戻ったら声をかけたのに”と嘆く意気地なしな男をミュージックが好演している。
14RIDETHROUGH
車のスモーク・ガラス越しにキミを見ながら近づいて、いつか勇気を出して声をかけたいと願う度胸なしの男の話。カルヴァン・ハギンスとアイヴァン・バリアスとの共作で、端正なビートと「イッツ・ア・シェイム」を想起させるムーディなアレンジとの融合が絶妙。