ミニ・レビュー
通算6作目となるが、突撃疾走曲アリ、ミドル・テンポの硬派曲アリ、そしてナンセンスな歌詞アリのマシンガンズ流メタル様式は揺るぎない。が、初の海外(ナッシュヴィル)録音の効果なのかサウンド面でのドスの利き方とキレがこれまでになく強力。逞しく成長している。
ガイドコメント
ベテラン、へヴィメタル・バンド、SEX MACHINGUNSの通算6作目のアルバム。カントリー・ミュージックの本場、ナッシュビルで録音した作品で、先行シングル「愛人28」ほかを含む全12曲を収録。
収録曲
01サボテン兄弟
6枚目のアルバム『MADE IN USA』のオープニング・ナンバー。ジューダス・プリーストの「ジョーブレイカー」を想起させるリフから、疾走パートに移る様が実にカッコ良い。展開も良く練られており、ミドル・テンポから速弾きに繋げるギター・ソロなどは見事だ。終始高いテンションで突き抜け、アルバムの幕開けにピッタリ。
02JUNK FOOD
どこかスラッシーな雰囲気も感じさせる一方、ラフなロックンロールの要素も感じさせるナンバー。明らかにジェイムス・ヘットフィールド(メタリカ)を意識した歌唱で「ハンバーガー食いてぇ」とドスを効かせる。良く練られたギターのリフ・ワークも光っており、シンプルなアレンジながらも楽曲をクールなものにしている。
03SAMURAI No.7
ドラムスのフィルインから突入する疾走チューン。最初から最後までテンションとスピードが落ちることはなく、一部アニメから拝借したと思われる歌詞と、タイトルを連呼するサビが印象的。ギターはリフ・ワークで確かなテクニックを見せつけ、ドラムスは休むことなく叩きつける。3分半を一気に駆け抜ける、勢い抜群の一曲だ。
04ZERO
Y&Tやメガデスで活躍したドラマー、ジミー・デグラッソがゲスト参加した一曲。首を振らずにはいられないメタル・チューンで、その勢いから「残高ゼロ〜」と哀しげに歌い上げるミッド・テンポのサビに突入する。リフ・ワークはヘヴィ・メタルのお手本とも言うべきプレイで、見事なギター・ソロとともに楽曲の完成度を高めている。
05Mr.JOURNEY
ミドル・テンポの重厚なナンバー。シンプルなギター・リフが引っ張る一曲で、バンドの確かな演奏能力をうかがい知ることができる。硬質なグルーヴを醸し出しつつもキャッチーな印象が残り、単調になりかねない曲調を飽きさせない。ラフな歌唱からサビでの歌い上げに流れるヴォーカルがアクセントになっている。
06SWEET SWEET
L.A.メタル風のリフに導かれ、軽快に跳ねるロックンロールを展開する。どことなくスリージーで毒気があり、クールなイメージが強い曲調だ。メロディの裏で鳴るちょっとしたギター・プレイや、ソロの奏法などからもロックンロール的な要素が聴かれる。語尾を「ィエ〜」と引き伸ばす歌唱も堂に入ったものだ。
07MAMA SAN VOLLEY
“ママさんバレー”の悲喜劇を歌ったおバカな歌詞とコーラス・ワークとは裏腹に、小刻みに繰り出されるテクニカルかつクランチーなリフで首を振らせる疾走メタル・チューン。アイアン・メイデン風のブレイクやギターのオブリガードを駆使し、3分半に満たない短い楽曲にもかかわらず、展開の妙を聴かせてくれる。
08限りなき抵抗
モダンでサイバーなイメージのリフが引っ張る一曲。女性の美に対する“抵抗”を、シリアスな曲調に乗せてブラック・ユーモアたっぷりに歌い上げる。台詞から速弾きギター・ソロというアレンジが良くも悪くも印象的だったりする。時折挿入されるロバート・プラント(レッド・ツェッペリン)風の高音シャウトに度肝を抜かれる。
09愛人28 (Nashville Mix)
10ダイヤルロック式 金庫
アイアン・メイデンの「プローラー」を思わせるイントロで始まるナンバー。マイナー調で全体的に淡々と進むが、どこか邪悪なイメージが漂う。歌唱の異なるダブル・トラックによるヴォーカルを駆使するなど、アーティスティックな雰囲気を感じさせるが、一筋縄ではいかないコーラスの歌詞はやっぱり彼らならでは。
11REACH FOR THE SKY
80年代アメリカン・ハード・ロックを想起させるキャッチーなリフと、ツイン・リードが印象的なポップ・チューン。重厚なコーラスのブリッジから爽快なメロディを持つサビへの展開が心地良い。ギター・ソロも含め、全編フックに満ちており、ソングライティング能力の高さを思い知らされる。純粋に良い曲だ。
12HUNGRY EYES (Tennessee Mix)
もともとは2005年8月発売のシングル「愛人28」のカップリングとして発表された。アルバムには“Tennessee Mix”として収録。疾走感、リフ・ワーク、勇壮な曲調と、ヘヴィ・メタルの基本を踏襲した一曲に仕上がっている。二人の掛け合いによるギター・ソロも実にクール。アルバムを締めくくるには絶好の曲だ。