ガイドコメント
エモコア勢によるトリビュート盤などもリリースされているウィーザーが『ザ・グリーン・アルバム』に続く新作を早くもリリース。4枚目となる本作も彼らならではのパワー・ポップ満載の快作だ。
収録曲
01AMERICAN GIGOLO
何をやってもファンから批判される状態に業を煮やし、ついにファンへの復讐を宣言したナンバー。80年代のキャッチーなヘヴィメタル・バンドを思わせる、にぎやかなリフとサウンドが魅力だ。この曲もまたファンの賛否両論を呼んだ問題作。
02DOPE NOSE
ドラッグ使用を示唆したようなタイトルどおり、実際に興奮剤をテキーラで服用した際に書かれたナンバー。MTV世代にこそウケそうな80年代テイストあふれるハード・ポップ・サウンドで、冒頭の能天気なコーラスも◎。
03KEEP FISHIN'
バタンゴロンと転げるようにスウィングするリズムでのゆっくりとした曲調が、1分を経過したあたりでほんの少しだけ“泣きメロ”づいて疾走する。力強いサウンドのハード・ポップ・ナンバーだが、歌詞にはいままで同様の青臭さが。
04TAKE CONTROL
メタル・ナンバーのカヴァーかと思わせるイントロを経て、これまでとはあまりに筋肉の付きようが異なる肉厚なプレイが展開される。サビへの道程やメロディの魅力はいつもどおりなのだが、肉付きの良さにやや困惑。
05DEATH AND DESTRUCTION
リヴァースのソフトなヴォーカルが印象的なスロー・ナンバー。失恋を歌ったらしき歌詞は、批判が絶えないファンとの関係性の暗喩でもあるだろうか。中盤では、わりとコテコテなギター・ヒーロー風のソロが聴ける。
06SLOB
北欧メタル・バンドの演奏かと疑いたくなるほど、ドラマティックで“どメタル”な曲調。彼らのシンプルなサウンドを土台にメタル風ワビサビを注入したアイディアが光るが、努力は報われず旧来のファンからはブーイングだった。
07BURNDT JAMB
リズミカルなギターで軽やかにスタートするナンバー。まるでボサ・ノヴァのようなリラクシン・サウンド&ヴォーカルを展開しているが、ここでも登場するのはお約束のメタル・リフ。ソフト&ハードに振幅する異色作だ。
08SPACE ROCK
いささか音圧が強すぎるものの、聞こえてくるのは王道ウィーザー節。文字どおりスペーシーなサウンドが楽しめる。冒頭では、「キッズを相手にしていると泣きたくもなる」と、ファンを批判するボヤキ節を展開。
09SLAVE
ビター・スウィートな1960年代ポップスを、ディストーション多めのハード・ロック・リフでプレイしているかのようなナンバー。メタル・サウンドとともに『マラドロワ』の象徴となった“ウーウーフーフー”のコーラスも活躍する。
10FALL TOGHETHER
ブームにかなり遅れてやってきたグランジ・バンドのようなヘヴィ・リフでスタート。ヴォーカルもコーラスも気だるげなムードを終始漂わせ、最後はほとんどブツ切り状態で終幕。それもまた気だるげな気分の演出か。
11POSSIBILITIES
メタル方向に寄っていた針を、今度は極端にエモ・パンク方向へと振り切ったナンバー。ジャスト2分間を疾走に次ぐ疾走で駆け抜けながら、この時期の主武器“ウーフー”コーラスも投入。歌詞では過去最大級の女々しさが爆発している。
12LOVE EXPLOSION
ブリット・ポップをプレイしているかのような雰囲気のあるキャッチーなナンバー。サビでの展開やエンディングのリフに、なんともオアシスを揶揄しているような空気が……。歌詞は被害妄想ここに極まれりといった内容。
13DECEMBER
『マラドロワ』はアウトでも、この曲だけにはセーフの判定を下したファンも少なくないナンバー。シンプルなコードを活かしたメロディは美しく、浜田省吾作品とオーヴァーラップする瞬間も。歌詞は彼らの現状を暗喩したものか!?
14ISLAND IN THE SUN
最初から最後まで憂いたっぷりのナンバー。憂いを帯びたアコースティック・ギターとエレクトリック・ギターのカッティングが絶妙に重なり合い、サビ・パートでの情感爆発の導火線役となっている。
15LIVING WITHOUT YOU
歯切れのよいギター・サウンドで疾走するナンバー。「ポシビリティーズ」に負けず劣らずのエモ・パンク・サウンドが前面に打ち出されており、ウィーザーらしさは雲の彼方。ギター・ソロもかなりそれ風で微笑ましい。
仕様
※〈エンハンストCD〉内容:ウィーザー・ミニ・ムーヴィーズ