ミニ・レビュー
基本はベン・フォールズ・ファイヴ風のピアノ・ロックだが、ヒップホップやソフト・ロックの要素も垣間見せ、メジャー初アルバムにしてすでに大器ぶりを窺わせる。バート・バカラックからの影響を公言するだけあり、作曲家としての才能には確かなものがありそう。
ガイドコメント
従来のピアノ・ロックの枠組みをも軽く飛び越えたマッド&センセーショナルな“グラインド・ピアノ・ロック”を叩き鳴らすSUEMITSU&THE SUEMITHのデビュー作にボーナス曲を追加した完全版。
収録曲
01“SUEMITSU”Here Plays Mean Piano
アルバム『Man Here Plays Mean Piano』の幕を華々しく切って落とす、イントロダクション・ナンバー。ナレーションとピアノの力強いメロディが、未来を祝福するかのように鳴り響いている。
02Irony
がっしりとしたバンド・セッションから生み出される極上の美メロは、パワー・ポップとしては完璧といっていい程の完成度。ピアノのフレーズが曲の表情にぐっと奥行きを持たせている。切なくて、甘くて、前向きな、爽快ロック・チューン!
03Arabesque
メロウなメロディで聴かせるロッカ・バラード。こういった曲調だとピアノの音が見せる感情がより豊かで、グランドピアノ・バンドという形態の特性を最も活かした曲だといえる。何度聴いてもまったく飽きがこない名曲。
04Skyscraper
ハードなAメロからBメロ〜サビで一気に弾け飛ぶ。緊張と解放を繰り返すダイナミックでパンキッシュなハード・ナンバー。ピアノがベース・ラインを奏でる、一風変わった使われ方がされているのが印象的だ。
05Basketball Game Crush
ニルヴァーナを彷彿とさせるグランジなギター・リフが映えるロックンロール・ナンバー。粗暴なサウンドに、思わず血液が沸騰するほどの興奮を覚えてしまう。クレイジーでありつつも、どこか洗練されているところが実に彼ららしい。
06The Desperado
一言でいうなら、暴走スウェディッシュ・ポップ。限界まで圧縮されたメロディがポップコーンのように弾け飛ぶアップ・チューン。軽快なフレーズとパンキッシュなビートの程良い融合が、抜群のポップネスを放っている。
07Mini Cooper
パワー・ポップらしいキャッチーなメロディにブラスとストリングスが鮮やかな彩りを添える、軽快なポップ・チューン。タイトル通り、街角を走るミニクーパーのようなかわいらしさとフットワークの軽さが感じられるお洒落な一曲だ。
08Etude
甘酸っぱいメロディが胸を締めつける、ド直球なスウェディッシュ・パワー・ポップ。降り注ぐ極彩色のブラス・ホーンと歌声に、心の底まで幸せが満ちあふれてくる。この高揚感は他では得られないほど圧倒的。
09 (I'm In)Mad Cherry Red
ハードなロック・ナンバーかと思えば、サビで一気に突き抜けるポップ・センスを見せてくれる辺りが何とも憎い。そこから畳み掛けられる七色のコーラス・ワークの美しさといったら! 曲の表情がくるくると変わる、実に多彩な一曲だ。
10Chelsea
感情豊かなピアノの音が、ダイレクトにハートを揺さぶりまくるミドル・チューン。ベン・フォールズが滅茶苦茶ロックになったかのような美メロと力強いアティチュード。美しくて切なくて、けれどちゃんと前向きになれる一曲だ。
〈“SUEMITSU”'z Other Works〉
11Part Of Your World (006 New Recording)
ベン・フォールズ・ミーツ・スウェディッシュ・ポップという禁断の融合を果たしてしまった究極のポップ・ソング。胸キュンメロディがキラメキを放ちながら、高速で駆け抜けていくこの心地よさ。一度聴いたら病みつきになること間違いなし。
12Don't You Worry 'Bout a Thing
アグレッシヴなピアノが爆音で駆け抜けるスピーディなポップ・ナンバー。ピアノ音が全面に怖じされていることもあり、ラウドな演奏な割に、透明感溢れる爽やかな仕上がりでさらりと聴ける。あえていうなら、ピアノ・メロコアというところか。
〈“SUEMITSU”Sings in Japanese〉
13Irony (“Bittersweet Irony”Japanese Version)
全英語詞の「Irony」に、元スーパーカーのいしわたり淳治が日本語歌詞を提供した別ヴァージョン。淳治独自の詩情が曲の別の魅力を引き出し、まったく違う表情を見せている。それでいてまったく違和感を持たせないあたりが上手い。
14Arabesque (“Melody Played by Great Pianist”Japanese Version)
「Arabesque」の日本語詞ヴァージョン。末光篤のメロディといしわたり淳治の歌詞が見事な化学変化を起こし、日本語なのに日本語らしくない不思議な世界観を描き出している。これこそ運命的な出会いといえる究極のコラボレーション。