ミニ・レビュー
バブル青田のシングル「ジーザス」で変わらぬメロディ・メイカーぶりを見せた小室哲哉率いるglobeの11枚目のアルバム。2枚組20曲収録という大作で、小室のこだわり=好きな要素がふんだんに感じられるものの、全体的な印象はやや地味目。
ガイドコメント
2006年3月リリースの通算11枚目のアルバム。KEIKOの高音ヴォーカルとキャッチーなメロディが印象的な、globeらしいポップな仕上がり。前作収録曲のスタジオ・ライヴ・ヴァージョンなども収録。
収録曲
[Disc 1]
01Soldier
通算11枚目のアルバム『maniac』のオープニング・チューンは、フェンス・オブ・ディフェンスの北島健二のアコースティック・ギターがフィーチャーされたポップ・チューン。KEIKOのハイ・トーン・ヴォーカルも健在。
02Please don't give up
アルバム『maniac』での前曲「Soldier」からうって変わって、プログラミングをフィーチャーしたミディアム・ナンバー。ドラムスが細かいビートを刻み、決してゆるやかな雰囲気ではない。日本語、英語、フレンチと多国籍にわたる歌詞も魅力的。
03Why Why tell me Why
ミディアム・テンポのポップ・チューン。「愛」と「好きな」ものを歌ったストレートな歌詞はKEIKOによるもの。生っぽい雰囲気と打ち込みを上手くブレンドするサウンド・プロダクションは、小室哲哉ならではのもの。
04from the beginning
ミディアム・スローなバラード・ナンバー。全盛期を彷彿とさせるような小室節が、メロディ・ラインなど随所にちりばめられていて、ドラマティックなサウンドの展開として仕上がっている。
05Appreciate
ループさせたパーカッションのイントロが印象的な、インタールード的なミディアム・トラック。ここではKEIKOはヴォーカリストとしての参加でなく、ヴォイスとしてナレーションを担当している。
06orbit
アルバム『maniac』での前曲「Appreciate」に続いてのインタールードだが、こちらは小室哲哉の演奏するアコースティック・ピアノとシンセサイザーによるストリングスという構成。ここでアコースティックを持ってくることによって、短いながらもアルバムにおいても印象深く仕上がった。
07Tokyoという理由
弦楽四重奏(とはいってもシンセサイザーによるもの)によるサウンドが印象的なミディアム・バラード。アコースティック・ギターは、北島健二か「ライトあんよ奏法」でおなじみの葛城哲哉によるもので、印象的な色彩を奏でている。
08Shine on you
ハネ気味のミディアム・ポップ・チューン。とはいっても黒っぽさはまったくなく、90年代中盤のJ-POP直球のメロディアスな王道ポップに仕上がっている。サビでクール・ダウンするアレンジは、小室哲哉のセンスのなせる技。
09SIMPLOVE
MARCがヴォーカルを担当する本トラックは、とことんまでBPMを落としたスロー・チューン。小室哲哉は彼の声質を上手く活かしたメロディ作りにより、本作を感動的なナンバーに仕上げている。
10About Me
イントロのジェフ・ベックっぽいエモーショナルなギターが存在感を示すナンバー。イントロや間奏で聴くことのできるギター・ソロ一発でこの曲のドラマ性を一段と高めている。気負わず歌うKEIKOのヴォーカルも印象的だ。
[Disc 2]
01Judgement (Band Version) (globe)
美久月千晴と山木秀夫という日本屈指のリズム隊をゲストに迎えたナンバー。小室哲哉もオルガンを使用して、ギターを含め、あくまで生楽器をベースにしたアレンジになっており、本アルバム『maniac』の中でもユニークなサウンドになっている。
02LOST (Band Version) (globe)
アルバム『maniac』での前曲「Judgement」同様、美久月千晴と山木秀夫をゲストに迎えたナンバー。ヴァースでのアコースティックな部分とブリッジでのハードな部分の緩急の温度差がユニークだ。ポリリズム的なメロディがミニマルにめぐっていく。
03to solid snake (TETSUYA KOMURO)
小室哲哉によるインストゥルメンタル。「orbit」は小曲の態をなしていたが、本作は6分あまりに及ぶ力作。前半はヒーリング感覚たっぷりに、後半はクラブ・サウンドへと変化していく構成はお見事。
04maunalua bay (TETSUYA KOMURO)
ヴァイオリン(シンセザイザー)をフィーチャーした小室哲哉によるインストゥルメンタル。シンセでここまでアカデミックなヴァイオリンを再現できるのは、彼だからできる技。ヴォーカルレスでも妥協しないクオリティの高さに脱帽の1曲。
05cosmic dream (Short Edit) (245)
MARCのソロ・ワークとなるワールドワイド・プロジェクト“245”によるオーガニックなテクノ・トラック。ハイ・テンポでスペイシーなサウンドで、わずか3分弱というサイズのため、あっという間に過ぎていく。
061000Lights (French Version) (245)
アコースティック・ギターのループとキュートなシンセサイザーの音色がユニークな、MARCのソロ・プロジェクト、245の2ndトラック。緩急をつけたサウンド展開で、ヴォーカルとトラックのバランス感覚も見事。
07Reason (LA Updated Mix) (keiko)
KEIKOのソロ・プロジェクト・トラック。ピチカートでスタートする意表をついたイントロにのせ、静かに歌い始める。ヴァース、ブリッジへとめまぐるしく展開するサウンドがドラマティックなナンバー。
08HUMANRACE (keiko)
ツイン・ギターをフィーチャーしたテクノ・トラックで、本トラックもKEIKOのソロ楽曲。気負いなく歌う彼女のヴォーカルは、円熟期を迎えたかのような余裕を感じる。シングルではCCCDだったので音質も向上!
09海との友情 (keiko)
KEIKOの3rdソロ・トラック。「HUMANRACE」とともに彼女の1stソロ・シングル「KCO」に収録。小室哲哉の独壇場ともいえる、めまぐるしいサウンド展開を難なく歌いこなすさまは見事というほかない。
10be true (Cyber X feat.keiko)
『maniac』ディスク2のラストを飾るのは、トランスとJ-POPの融合を成功させたプロジェクト、Cyber X名義による楽曲。トランス・クリエイターとしても小室哲哉が一流だということを再認識するナンバー。