ミニ・レビュー
94年のNo.1アルバム『フロム・ザ・クレイドル』以来となるブルース・ナンバーのカヴァー集。今回はサザン・ブルースの革新者、ロバート・ジョンソンにこだわった内容で、そのウォーキング・スタイルをはじめ、いつになく揚々とした姿が目に浮かぶ。★
ガイドコメント
2001年の『レプタイル』以来、3年ぶりとなるスタジオ・アルバムは、最も敬愛するブルース・マン、ロバート・ジョンソンのカヴァー・アルバム。クラプトンのルーツを実感できる注目の1枚。
ガイドコメント
2001年の『レプタイル』以来、3年ぶりとなるスタジオ・アルバムは、最も敬愛するブルース・マン、ロバート・ジョンソンのカヴァー・アルバム。クラプトンのルーツを実感できる注目の1枚。
収録曲
01WHEN YOU GOT A GOOD FRIEND
ミディアム・テンポのシャッフル・ビートに乗って、クラプトンがロバート・ジョンソンばりのヤクザな歌声を聴かせる。唸りを上げるエレクトリック・ギターのソロも含めて、1936年録音のオリジナルにほぼ忠実な演奏が聴ける。2003年の来日公演でも披露された曲。
02LITTLE QUEEN OF SPADES
エレクトリック・ギターとオルガンが唸りをあげるイントロから異教的な雰囲気を醸し出すスロー・ブルース。クラプトンのヴォーカルやギター・ソロにも、背後のマウスハープにも、濃厚な邪気が漂っている。間奏でのビリー・プレストンのオルガン・ソロも秀逸。
03THEY'RE RED HOT
ビリー・プレストンのピアノが軽やかに踊るラグタイム調のパーティ・ソング。ロバート・ジョンソンがブルースだけのミュージシャンではなかったことを証明する陽気な曲。クラプトンの歌声も明るい。ピアノ、マウスハープ、ギターが順番にソロを披露している。
04ME AND THE DAVIL BLUES
音楽のために悪魔に魂を売ったという伝説を生んだロバート・ジョンソンの名曲を、アコースティックなアレンジでカヴァー。ジェリー・ポートノイのブルージィなマウスハープをバックに、ジョンソンの霊が乗り移ったかのようなヴォーカルを聴かせる。
05TRAVELING RIVERSIDE BLUES
クリーム時代の「クロスロード」の原曲のひとつでもあるブルースの名曲。性的な比喩を使った「レモン搾り」の歌詞もよく知られている。ここでのクラプトンのよこしまな歌声はまさにジョンソン譲り。スライド・ギターの邪悪な音色がこの曲の妖しさを象徴している。
06LAST FAIR DEAL GONE DOWN
4よりも2に近いブギのリズムに乗って、ギャンブルや女についてクラプトンが歌う、ミシシッピ州ガルフポートのご当地ソング。この曲のスピード感はブルースというよりもむしろパンクに近い。クラプトンの力強い歌声とスライド・ギターの音色が耳に残る。
07STOP BREAKIN' DOWN BLUES
ストーンズもカヴァーしている名曲。女には不自由しなかったというロバート・ジョンソンの性生活を想像させるスケベなブルース曲。ユルいシャッフル・ビートに乗って、「俺のアレは凄いぜ」などとクラプトンが歌う。比喩の達人だった作者によるセックス編の傑作。
08MILKCOW'S CALF BLUES
巨乳の女性を乳牛にたとえたブルース曲。クリーム版「クロスロード」のテンポを落としたようなハードなリフが先導するヘヴィなブルース・サウンドに乗って、クラプトンのスライド・ギターが唸りを上げる。ロバート・ジョンソンばりに不埒なヴォーカルも良い。
09KIND HEARTED WOMAN BLUES
クラプトンのブルージィなヴォーカルが堪能できるスロー・ブルース。ロバート・ジョンソンが1936年11月に初めて録音した曲だと言われている。よく歌うギター・ソロも秀逸。ブルースの教科書に載せたいような演奏が聴ける。2003年の来日公演でも披露された。
10COME ON IN MY KITCHEN
多くのミュージシャンたちにカヴァーされているロバート・ジョンソンの名曲のひとつ。アンプラグドなアレンジで演奏し、貫禄さえ感じさせる力強いヴォーカルを披露している。ドブロ・ギターによるソロは短いが、この曲によく似合っている音色だ。
11IF I HAD POSSESSION OVER JUDGEMENT DAY
ロバート・ジョンソンの原曲が下敷きにしていると思われる「ローリン・アンド・タンブリン」のスタイルでの演奏が楽しめる。残念ながらギター・ソロはないが、スライド・ギターが全編に渡ってフィーチャーされている。クラプトンのヴォーカルがとてもパワフル。
12LOVE IN VAIN
ストーンズによるカントリー風味のカヴァーがよく知られている名曲。クラプトンはよりオリジナルに近い解釈でカヴァー。ミディアム・テンポのユルいシャッフル・ビートに乗って、適度にレイドバックしたヴォーカルとエキセントリックなギター・ソロを披露している。
1332-30 BLUES
スキップ・ジェイムズの「22-20ブルース」からヒントを得たと思われる曲。アップ・テンポのシャッフル・ビートに乗って、クラプトンはエルヴィスばりのロカビリー・スタイルでカヴァー。間奏ではビリー・プレストンのピアノ・ソロがフィーチャーされている。
14HELL HOUND ON MY TRAIL
おそらく歌うことが難しいはずのロバート・ジョンソンの名曲を、最も独創的な解釈でカヴァーしている。この解釈については批判や疑問もあるだろうが、ここでの彼のヴォーカルはひたすら素晴らしい。そして、スライド・ギターでも鮮やかなプレイを披露している。