ミニ・レビュー
映画『地下鉄(メトロ)に乗って』主題歌の「プラットホーム」などの珠玉のシングル曲と、カップリングとして輝きを放った楽曲を収録。歌を歌うということに対して彼女自身の中での変化や発見したこと、それを伝えたいという願いが込められている。尊く、現在進行形のベスト・アルバム。
ガイドコメント
女性シンガー、Salyuのベスト・アルバム。CMタイアップ曲など人気のナンバーを中心に、彼女の美しい歌声が響きわたる魅力たっぷりの一枚に仕上げている。ファンならずとも注目だ。
収録曲
01プラットホーム
力強さと柔らかさが同居するSalyuの声に成長を感じるミディアム・バラード。シンセとピアノの静かなイントロから徐々に盛り上がっていき、サビでの転調がなんとも心地よい。映画『地下鉄(メトロ)に乗って』主題歌となった8thシングル。
02彗星
映画『人魚姫と王子』挿入歌となった4thシングル。まっすぐと突き抜けるような歌唱が印象的なミディアムで、ポップなメロディとピアノを基調としたバンド・サウンドが爽やかな世界を作っている。彼女の日記を参考に書かれたという歌詞にも注目。
03Tower
骨太なドラムが支えるサウンドにベルやストリングスの美しい音色が映える一曲。一青窈による恋する女性の本音を綴った詞は大胆でストレートだが、Salyuの声によって爽やかな印象を与えている。チョーヤ梅酒「ウメッシュ」CMソングとなった6thシングル。
04VALON-1
2004年に発表したソロ・デビュー・シングル。流れるようなメロディにのせた、アンニュイで伸びやかなSalyuの歌声を堪能できる一曲。ピアノを加えたバンド編成のサウンドがシンプルだからこそ、声の美しさを引き立てている。
05name
一青窈による女性目線の悲しく切ない歌詞が心に響く7thシングル。サビでの叫びにも似た歌唱は、激しさだけでなく優しさや憂いも秘めているようだ。小林武史の作り出すスケール感のあるサウンドと泣きのメロディはさすが。
06飽和
重く混沌としたサウンドに憂いのある歌声が絡んだナンバー。映画『リリイ・シュシュのすべて』の挿入歌で、2000年に同映画のために結成されたバンド“Lily Chou-Chou”として発表した実質的なデビュー・シングル「グライド」のカップリング曲だ。
07landmark
2005年発表の1stアルバム『landmark』のタイトル・チューンで、収録の映画『人魚姫と王子』挿入歌。小気味のいいリズムとは対照的な、混沌とした不穏な空気が漂うサウンドが独特の世界へと引き込んでいく。粘りのある歌い方も印象的。
08夜の海 遠い出会いに
8thシングル「プラットホーム」のカップリング曲。詩的な表現を用いた詞が、まるでスライド・ショウを見ているかのごとく情景を浮かびあがらせる。終盤での突き抜けるようなハイトーン・ヴォーカルは、そのままどこかに飛んでいきそうなほど爽快。
09Dramatic Irony
爽やかなロック・サウンドで展開するミディアム・チューン。あたしのハードディスクから記憶が再生されてるという表現で、失恋から立ち直れない女性の気持ちを歌っている。サビでのオクターブのユニゾンが面白い。SANYO携帯電話「W32SA」CMソング。
10I BELIEVE
2007年発表の2ndアルバム『TERMINAL』収録曲。初めて彼女自身が単独で詞を手掛けており、等身大のSalyuが投影されている。シンセの穏やかな音色で始まるミディアムだが、サビに向かうにつれてサウンドも声も激しさを増していく。
11風に乗る船
5thシングルとなった、シンプルなバンド・サウンドが奏でる軽快なミディアム・ロック・チューン。別れの悲しさや懐かしい思い出に浸りながらも、“涙の後には虹が出る”とポップなメロディにのせて爽やかに歌う。
12トビラ
先はまだ見えないけどあなたへと続く“トビラ”を開ける、とポジティヴに歌うミディアム。一気に高音へ突き抜けるSalyuの声からは、広い世界へ飛び出していくような勢いを感じる。2ndアルバム『TERMINAL』収録曲。
13to U (Salyu version)
Bank Band with Salyuとして発表した楽曲の単独歌唱ヴァージョン。ピアノとチェロのみで構成された静かで荘厳なサウンドに、搾り出すような歌唱が映える。真っ直ぐに届くSalyuの声を堪能できるアレンジとなっている。
14グライド
映画『リリイ・シュシュのすべて』のために結成された“Lily Chou-Chou”として発表した実質的なデビュー・シングル。謎に包まれたキャラクターらしく、映画の世界をそのまま引き継いだかのようなに不思議な浮遊感のある歌唱を聴かせる。