ミニ・レビュー
男性5人組のサード・アルバムは、哀愁あふれるメロディとサウンドが印象的な“レトロック”と呼ばれる超個性的な楽曲を揃えている。ロック、パンク、ファンクをベースに、エキゾティックでエログロや変態チックなテイストを取り入れた世紀末的美意識の世界を展開している。
ガイドコメント
5人組ビジュアル系バンド、メリーの2007年11月発表の3rdアルバム。哀愁とヘヴィネスを前面に打ち出した彼ららしい仕上がり。彼らの追求してきた“レトロック”がひとつの完成形に到達している。
収録曲
01M.E.R.R.Y.MARCH〜デンヱンカウキヤウクミキヨク〜
アルバム『M.E.R.R.Y.』のオープニング・テーマともいえるインスト・ナンバー。のどかなマーチング・バンド風の行進曲のリズムから始まり、後半はアップ・テンポの乱れ打ち風ピアノ演奏によって狂気の世界を演出している。
02歌声喫茶「モダン」
古めかしいタイトルだが、超ハイスピードで展開していくナンバー。トレモロ風のギター・サウンドが曲全体の哀愁感を支配している。サビのメロディをサポートするギターのカウンター・メロディとの絡みが印象的。
03Blind Romance
北欧のオーロラを思わせるような、スペイシーで哀愁のあるギターが切なく奏でられるロック・チューン。“先の見えない戸惑いと不安に悩んでいても、僕はここにいるから安心して”とドラマティックに歌い上げている。
04青年秘密倶楽部
なんとも妖しげなタイトルにぴったりな、ヘヴィなビートにダルいメロディ、激しいヴォーカルが入り乱れた、エログロな楽曲に仕上がっている。しかし、サビはしっかり哀愁たっぷりのメロディで、バンドの個性を強調。
05ルルルラララ
健一の作曲による、昭和初期を思わせるようなニュー・レトロ路線のナンバー。バンドの過去の作品の歌詞がキーワード的にちりばめられた、ユーモアとアイディアにあふれた詞が面白い。ギター・フレーズはひたすら哀愁、また哀愁。
06日ノ出町、街角ツンデレラ〜2番ホーム篇〜
Cobaのアコーディオンと渡辺等のマンドリンをフィーチャーした、メリー・レトロの王道ともいえる曲。場末の町が持つ裏びれた風情とダルい風景を切り取ったようなヴォーカルが、哀愁を帯びながら響いてくる。
07最果てのパレード
クリーン・トーンのギターとシンプルなリズム隊でありながら、どこか不思議な疾走感をともなったロック・ナンバー。裏声にシャウトを交えたヴォーカルが変幻自在に響きわたり、“最果て”の地へと導いてくれる。
08コックドール・ママ
テツ作曲によるニューウェイヴなテイストが強調されたコールド・ファンクなナンバー。ノイジーな不協和音やフリーキーなサックスと変態的ギターとのセッションが入り乱れ、ライヴでの暴れ曲になること必至だ。
09sweet powder
結生作曲によるメリーには珍しいストレートなアレンジや演奏を前面に打ち出した、ライヴ向きのラウドなパンク・ナンバー。サビの展開もダイナミックで、ライヴでの一体感と高揚感が目に浮かんでくるような曲だ。
10ひらひらとんでる。
健一作曲によるニュー・レトロ作で、とくにアヴァンギャルドでオリエンタル色が強く、郷愁に満ちた究極の一曲。少女合唱団の唱歌を挿入するなど凝った構成で、メリーはこのジャンルを“アヴァン・レトロ”と呼んでいる。
11ラストスノー
テツ作曲による哀愁ロック・ナンバー、“失意のなか悲しみは雪のように心に降りそそぎ、切ないシャウトが吹雪となる”と歌う、まさに心が張り裂けるようなバラード。激しい情熱と哀愁を秘めた曲の誕生だ。
12木洩れ日が僕を探してる…
シングルとしてもリリースした哀愁のバラード・ナンバー。おおらかなグルーヴを醸し出すバンド・サウンドのなかで、ヴォーカルが詩情豊かに愛を語り、メンバーそれぞれが個性的なプレイで楽しんでいる。
13ポエジー
結生作曲によるメリー初のレトロチックなサーフ・パンク・ナンバー。珍しくワルっぽい巻き舌ヴォーカルを強調して支離滅裂な歌詞で突っ走る中、ギターが哀愁のメロディでしっかりとサポートしている。