ミニ・レビュー
もはやスラッシュ/ヘヴィ・メタルの枠だけでなく、ロックというジャンルの方法論をアグレッシヴに拡大させたメタリカ。彼らが呈示するヘヴィで激突する感情の魂は、そのストレートな意味を軽く翻弄させてしまう鮮烈な世界を叩き付ける。最強の5枚目。
収録曲
01ENTER SANDMAN
02SAD BUT TRUE
徹底的にヘヴィネスにこだわった、本アルバムの中で最も重苦しいスローな楽曲。べっとりと張り付くような粘着質のリフとタメの効いたどっしりとしたドラムが、ジワリジワリと迫ってくるようだ。その緊張感と凄みがたまらない。
03HOLIER THAN THOU
キレ味の鋭いザクザクしたリフを主体としたファストなナンバーで、スラッシュ・メタルの名残りが感じられる。パワフルなギターから躍動するベース・ラインへと繋がるソロ・パートの流れもよく、往年のファンにも人気が高い。
04THE UNFORGIVEN
感情入りまくりの歌と分厚いハーモニーがバンドとしての懐の広さを感じさせる、哀愁漂う壮大なバラード。心の苦しみや痛みが仔細に綴られたこの曲は、有機的な温もりに満ちている。メタル・ファン以外にも広くアピールした1曲。
05WHEREVER I MAY ROAM
エスニックな雰囲気のイントロからグッと聴き手を惹きつけるミドル・テンポのナンバー。天涯孤独に生きるアウトローな男の人生をドラマティックに描いた曲展開は起伏に富んでいるが、独特な緊張感を失ってはいない。
06DON'T TREAD ON ME
ヘヴィなグルーヴを主体としたスロー・ナンバーで、ほかの楽曲に比べるとやや地味でインパクトに欠ける。が、口ずさめるほどキャッチーなメロディやワウが強烈に効いたギター・ソロなど、聴きどころの多い佳曲だ。
07THROUGH THE NEVER
タイトなリズムとリフ、ソロの展開やスピード感など、スラッシャーとしてのメタリカの魅力を網羅したナンバー。グルーヴ重視の楽曲が多い『メタリカ』において、リフ主体のストレートなへヴィネスを打ち出したこの曲は、新鮮な魅力がある。
08NOTHING ELSE MATTERS
メタリカのイメージをいい意味で覆した、オーケストラをフィーチャーした美しいバラードで、唯一のラブ・ソング。涙を誘うエモーショナルな歌声を聴かせるジェイムズの、ヴォーカリストとしてのめざましい成長がみられる。
09OF WOLF AND MAN
鈍器を振り下ろすようなドラムの音が印象的な、タイトルどおり内なる野生を覚醒させるようなワイルドな男臭さがプンプン漂う楽曲。とはいえ、コーラス・パートが多めで、『メタリカ』の中ではかなりキャッチーで親しみやすい。
10THE GOD THAT FAILED
ベースに導かれて始まるこの曲は、ボトムの効いたヘヴィネスと体を揺さぶる太いグルーヴを軸としており、90年代のメタリカが追求したサウンドの典型ともいえる。キリスト教をテーマにしたと思わしきアイロニーに満ちた歌詞が意味深。
11MY FRIEND OF MISERY
全体的なトーンはダークで落ち着いた印象だが、一音一音に存在感があり、ずっしりと聴きごたえがあるスロー・ナンバー。情感のこもったヴォーカルが、臆病で身勝手な友人へ向けられた怒りや哀しみを見事に表現している。
12THE STRUGGLE WITHIN
マーチング・ドラムで始まるイントロがインパクト大の個性的なトラック。コンパクトにまとまっているが、多様なリフを弾きまくるソロなどのギター・プレイも充実しており、先の読めない展開も楽しい。誰もが経験する内なる葛藤を描いた歌詞にも注目だ。
13SO WHAT
メタリカお得意のカヴァー曲。ストリート・パンク・バンド、アンチ・ノーウェア・リーグの楽曲で、「だからどうした?」というタイトルどおり、人を喰ったようなルーズな雰囲気がクールだ。ボーナス・トラックとはいえ、ファンの間でも人気が高い1曲。