ミニ・レビュー
ラテン・ポップの新たな貴公子、フアネスの日本デビュー・アルバム。クンビアを取り入れた曲や甘いバラードもあるが、ギターを前面にしたロック系の曲が目立ち、情熱より哀愁が似合う歌声と併せ、今までにないタイプのラテン・スターといえる。
ガイドコメント
2005年にもっとも愛されたラテン・ソングに選ばれた「追憶の黒いシャツ」を収録した大ヒット・アルバムのデラックス・エディション盤。ダンスやロック、ポップスなどさまざまな要素が融合したラテン・ミュージックが楽しめる。
収録曲
01AMAME
狂おしいほどに愛する人を求める男の心情が、軽快なラテン・ポップ・ロックに乗って歌われる。間奏のハードにドライヴするギターに、ハード・ロック・バンドをやっていたフアネスのルーツがうかがえる。
02PARA TU AMOR
アコースティックな響きを活かした、温かみのあるスウィートなミディアム・チューン。恋人への真摯な愛情を綴った歌詞を、気持ちのこもった真っ直ぐなヴォーカルで丁寧に歌い込んでいる。
03夢- SUEムOS -
武力紛争が続く母国コロンビアの現状を憂い、平和を願う思いを描いた歌。スピード感あふれるロックンロールが、事態の切迫した状況とそれに対するフアネスの焦燥感にも似た思いを表現している。
04LA CAMISA NEGRA
コロンビアのアンティオキア地方に伝わる大衆音楽グアスカのリズムを採り入れたナンバー。土着的なリズムとヒップホップなどの現代的な感覚をミックスした、エキゾティックな雰囲気漂う軽快な1曲。
05NADA VALGO SIN TU AMOR
最愛の人への永遠の愛を、ロマンティックかつ情愛込めた言葉で描いた曲。ミディアムからアップ・テンポへと転調するスリリングな展開と、エモーショナルなフアネスのヴォーカルに思わず惹きつけられる。
06NO SIENTO PENAS
英国のソフト・ロックにも通じる、ポップでキャッチーなメロディ・ラインのミディアム・ナンバー。ストリングスも加えたサウンドをバックに、愛されることの喜びと素晴らしさをスウィートに歌い上げている。
07君の全てが欲しい- DチMELO -
情熱的に、そして少しばかりエロティックに女性を口説く男の姿を描いた歌。ミクスチャー風のロックなサウンドとラップを採り入れた、ワイルドかつセクシーなヴォーカルの組み合わせが最高。
08LO QUE ME GUSTA A MI
ハイチの音楽ヘイシャンに似たリズムのギターが印象的なラブ・ソング。少し緩めのテンポで、いつも凛とした表情を忘れないフアネスのヴォーカルが、幾分リラックスしている様子がうかがえて微笑ましい。
09ROSARIO TIJERAS
コロンビアの作家ホルヘ・フランコの小説『ロサリオの鋏』を題材にしたナンバー。哀しみのうちに一生を終えた女性の姿を、シャープかつハード・エッジなラテン・ロック・サウンドに乗せて歌い上げている。
10世界に何が起こっているの- QUノ PASA? -
争いや戦争がなくならない、不条理で陰鬱な世界の現状に対する憤りや嘆き、憂いを歌った曲。社会性・メッセージ性が強く重い内容だが、軽快なロック・チューンとしてフアネスは仕上げている。
11VOLVERTE A VER
コロンビア軍の兵士から聞いた話を基にした曲。弾丸が飛び交い、硝煙の匂いがたちこめる戦場で、愛する家族を思う兵士の心情を綴った詞を歌う、フアネスの熱く真っ直ぐなヴォーカルが胸に響いてくる。
12君を守りたい- TU GUARDIチN -
最愛の娘ルナに宛てて書かれた曲は、子供を見守る親の温かな眼差し、偽りのない愛情で描かれている。アコースティックを基調にした柔らかなサウンドに乗せて、優しく包み込むように歌った美しいナンバー。
13A DIOS LE PIDO
2002年に発表した2ndアルバムの先行シングルで、母国では4ヵ月間1位をキープしたヒット曲。クンビアのリズムを採り入れた曲調と宗教的な詞の内容により、ラテン・アメリカ圏では平和の賛歌として愛されている。
14ES POR TI
愛する人が傍にいることの喜びをロマンティックに描いた、ミディアム・テンポのラテン・ポップス。ヴォーカルも楽曲のイメージに合わせてソフトに、そしていつもより甘えたように聴かせるナンバー。
15君の写真を見つめる時 (w/ネリー・ファータド)- FOTOGRAFヘA -
ネリー・ファータドとのデュエットによるラブ・ソング。息のあったデュエットはスウィートさを保ちつつもベタベタしたところがない爽やかさで、アコースティカルなミディアム・チューンによくマッチしている。
16LA PAGA
ブラック・アイド・ピーズのタブーがラップ/リミックスで参加したナンバー。コロンビアのルーツ音楽バジェナートとヒップホップをミックスしたユニークな曲調だが、タブーのラップも違和感なく溶け込み、抜群のノリを聴かせてくれる。
17MALA GENTE
小悪魔のような女性に翻弄される男の曲。情熱的な歌詞に呼応するエモーショナルなヴォーカルと、その歌唱を煽るようなギターのハードな響きが、男のやるせない感情を巧みに伝えている。
18LA NOCHE
コロンビア・サルサの代表格ジョー・アローヨのカヴァー。尊敬する先輩の曲に敬意を払いつつ、フアネスらしいギターを効かせハード・エッジなサウンドにアレンジした、ゴキゲンなパーティ・チューン。
19LA CAMISA NEGRA
メキシコのヒップホップ・グループ“コンクリート・マシェット”のDJトイ・ヘルナンデスによるリミックス。コロンビアの伝統大衆音楽である、ちょっと田舎っぽいグアスカのリズムが強化され、よりダンサンブルな曲に生まれ変わっている。