ミニ・レビュー
“マイク中毒”AIの3枚目のオリジナル・アルバム。ヒップホップ、R&B、ファンク、ディスコ。どんなトラックでも完璧に乗りこなすマイク・テクニックに圧倒される。パーティ・チューンから政治的メッセージまで、深みを増したリリックも素晴らしい。
ガイドコメント
『映画クレヨンしんちゃん』の主題歌シングル「Crayon Beats」も話題の、AIによる3枚目のオリジナル・アルバム。ポップ・バラードの名曲「story」をはじめ、名曲ばかりが収録されている。
収録曲
01If
もしも明日がなかったら? 何を残す? 後悔する? 聴き手にそう問いかけながら、だからこそ時間を無駄にするな、前に進めと発せられるメッセージ。自ら“マイク中毒”と称する彼女らしい、ステキにいき急いだ曲だ。
02365 (feat.DELI)
スペクタクル・ムービー風のフレーズの波を真正面から受け止め、ズンズン進んでいく意志の強さが特色。“決して諦めない”というポジティヴでアグレッシヴなマインドが躍動するAIらしいナンバー。
03Another Day
「信じる者は救われる」の世界を、あくまで音楽の要素として消化し、曲、詞ともにゴスペル調に昇華したR&Bナンバー。「明日のためにその1」。そんな言葉も思い起こされるこの曲は、むしろ無神論者ほど楽しめそう。
04Once In A Lifetime
使い古された「自分を信じて進もう」のメッセージも、彼女に歌われるとやけにリアルに届いてくる、力強いヒップホップ・ナンバー。彼女の歌唱力、キャラクター、そして彼女自身がそう信じてるゆえの賜物だ。
05QUEEN
他の誰にもなれなやしない、自分は自分でしかない唯一無の存在、人間見た目だけじゃないよ、と諭すAI版「世界に一つだけの花」。自分に自信が持てない女性もこの曲を聴けば、たちまち「アイム・ア・クイーン」な気分に。
06just listen-interlude-
アルバム『MIC-A-HOLIC A.I.』で、激情ナンバー「QUEEN」に続けて収録されている小休止トラック。短い曲ながら、チル・アウトの要素もたっぷりなので、仕事に疲れ、勉強に疲れ、人間関係に疲れたときに聴くと効果的。
07Party
ほっといてくれ、気分が乗らないと歌っておきながら、曲が進むにつれて、その場にいる誰よりも盛り上がった彼女がいる、構成絶妙のパーティ・ナンバー。彼女の魅力のひとつである茶目っ気が前面に出た佳曲。
08Sha La La
日々の暮らしや、逢えない時間に気分を凹ませながらも、ひたすら恋人からのプロポーズを待ち焦がれている女性の心情が綴られた切ないラブ・ソング。心の機微が繊細に描かれたリリックは、今も女性の共感を新規獲得中。
09airport-interlude-
アルバム『MIC-A-HOLIC A.I.』で、「California」の前フリを務めるインタールード。搭乗ゲートに急ぐ彼女の芝居、実妹による空港アナウンス、そしてオチと、短くも聴きどころ満載。
10California
彼女の故郷カリフォルニアを歌った故郷讃歌ヒップホップ。空港到着の場面から順を追って歌われたカリフォルニア疑似体験リリックは、バック・トラックともども、カリフォルニア未踏の聴き手も旅行気分に包んでくれる。
11Summer Breeze
1stアルバム『ORIGINAL A.I.』収録曲「SUMMER TIME」のスロー・ヴァージョン。タイトル通りの爽やかな曲調、沈み行く太陽を恋人と眺めるロマンティックな詞は、付き合い始めたばかりの恋人向きの内容。
12PASSION
なぜ自分と同じくらい情熱的になれないのかと恋人に迫る、ラテン気質全開の情熱過多ナンバー。「California」→「Summer Breeze」→そしてこの曲を続けて聴けば、ひとつのストーリーの完成。
13Sunshine
恋人含む、自分と出会い成長させてくれたすべての人々への感謝が歌われたナンバー。太宰治の「生まれてきて、ごめんなさい」の対極から発せられる「生まれてきてくれてアリガト」が、楽曲全体をポジティヴに。
14a poem -interlude-
キーボード奏者ペニー・K作のインタールード。アルバム『MIC-A-HOLIC A.I.』で、「Sunshine」と「Story」を繋ぐ役目を担い、AIが「Story」を作った理由が英語で語られている。
15Story
彼女が持つポジティヴな部分が楽曲化された感動的バラード。親、兄弟、恋人、仲間たち……自分を取り巻くすべての人々に感謝し、“一人じゃない”と歌いかけたこの曲は、さながらAI版「リーン・オン・ミー」だ。