ミニ・レビュー
J-POPのド真ん中をゆく3ピースのサード・フル・アルバム。最先端を狙うのではなく、日常というありふれたステージから生まれるフレーズや心の動きを朗々と歌い上げる楽曲スタイルが、実に心地良い。自らのペースに大衆性を引き寄せるカタルシスを持った力作。
ガイドコメント
ポップ・バンド、いきものがかりの3rdアルバム。「帰りたくなったよ」「ブルーバード」「プラネタリウム」「気まぐれロマンティック」といったヒット曲を含む、充実の一枚となっている。
収録曲
01プラネタリウム
壮大で深遠な宇宙を思わせるストリングスとシンプルなギターが、甘酸っぱくノスタルジックな世界を構築するミディアム・ナンバー。想いや願いは悲しみの夜を越えていくと歌う吉岡のけれん味のないヴォーカルがいとおしい。
02気まぐれロマンティック
勢いのあるピアノのグリッサンドから幕を開ける12thシングル。“ダーリン ダーリン”の詞が耳に残るアッパー・ポップで、彼へのあふれる想いが乗り移ったかのように弾けるドラム、ハーモニカ、ホーンなどの躍動感が楽しい。フジテレビ系ドラマ『セレブと貧乏太郎』主題歌。
03ブルーバード
テレビ東京系アニメ『NARUTO-ナルト- 疾風伝』オープニング・テーマとなった10thシングル。琴線に触れるはかなさを含んだドラマティックなサウンドに乗せ、“蒼い 蒼い あの空”と懸命に叫ぶ吉岡の刹那的な歌唱が魅力の、いきもの流“青い鳥”だ。
04スパイス・マジック
一つの願いや想いをいつまでも変わらずに伝えたいと語る愛の歌。オーセンティックなバンド・サウンドによる明朗なミディアム・ロックだが、てらいのないなかにも切なげなフレーズを見え隠れさせるところに、彼らの魅力が詰まっている。
05かげぼうし
大切な人との別れやいつかの再会を祈って前へ進もうとする気持ちを、“かげぼうし”や風景描写になぞらえたミディアム・ポップ。アコギのカッティングを軸とした爽快なヴァースから哀切をちりばめたコーラスへの展開が絶妙な“切なポップ”。
06帰りたくなったよ
端麗なピアノとストリングスからはじまるハートウォームなミディアム・スロー・バラード。辛いことやくじけそうな時には君が待つ街へ帰りたくなるという気持ちを綴っている。映画『砂時計』主題歌&「アイフルホーム」CMソングとなった9thシングル。
07message
ハーモニカの先導するイントロからにぎやかなバンド・サウンドで展開するアッパー・ポップ。待てども返信が来ない彼からのメールにドギマギする乙女心を、吉岡のウキウキとしたヴォーカルと日常会話的な詞で楽しげに描写している。
08Happy Smile Again
振られた後の悲しくもどかしい心境を綴ったミディアム・ポップ。幸せになるため、また笑顔で歩きだそうというポジティヴなメッセージを、オルガンやギターが温かく彩っている。NHK『スタジオパークからこんにちは』テーマ曲。
09くちづけ
GS風歌謡の要素も含んだ情熱的なミディアム・ナンバー。別れが近づく恋人に対して“一度だけくちづけて”と懇願する内容だが、いつもは陽気で快活な吉岡のヴォーカルも、ここではちらりと艶っぽさを見せている。泣きのギターにも注目。
10僕はここにいる
ぬくもりのあるシンプルなバンド・サウンドに癒されるミディアム・スロー・ポップ。触れ合い、繋がり合える存在とともに過ごせる幸せを“ルルル”という安堵を感じるフレーズとともに愛らしく綴っている。オリジナル・ムーヴィ『わんこ THE MOVIE 2』主題歌。
11プギウギ
のん気で明快な展開が魅力のポップ・ロック・チューン。“プギウギで、プギウギな……”という中毒性のあるフレーズを、吉岡が肩の力が抜けた歌唱で楽しげに披露している。タンバリンとハンド・クラップがウキウキとした高揚感をいっそう盛り上げている。
12幻
スキマスイッチの常田真太郎をピアノと制作に迎えたミッド・バラード。ピアノとストリングスで幕を開ける静寂な空間に紡がれる、はかなく消えた恋の物語だ。冬の情景と心情を“ゆらゆら”“さらさら”と歌う叙情的な描写が胸を衝く。
13心の花を咲かせよう
「第87回全国高校サッカー選手権大会」応援歌。“日常の日々こそ奇跡”だと、懸命に駆け抜けてきたことこそが未来への道筋になると諭す。シンプルなバンド・サウンドと確固たる意志を持った歌唱により、説得力のある輝かしいメッセージ・ソングへと昇華している。
14帰りたくなったよ (acoustic version)
君が待つ街へ帰ったら笑って迎えてほしいという、9thシングルのアコースティック・ヴァージョン。ピアノを基調とした瑞々しい原曲とは異なり、過不足ないオルガンとフルートによるハートウォームなアレンジとなっている。