ミニ・レビュー
他アーティストの作品やコラボレーションに参加した曲のみを集めた、いわば他流試合ベスト。ハウス、ボサ・ノヴァ、ジャズ、アヴァンギャルドなど実に多彩な、しかも個性極まりない音ばかりだが、それらと相対してもまったく揺るがない孤高の歌声にあらためて驚嘆。★
ガイドコメント
デビュー10周年記念の裏ベスト・アルバム。これまでにリリースした、他のアーティストとのコラボレーション楽曲を編集した1枚。映画『空中庭園』主題歌「この坂道の途中で」など、新曲2曲収録。
収録曲
01A Felicidade (Yoshihiro Hanno+UA)
哀愁あふれるメロディが胸を打つボサ・ノヴァの名曲。エレクトロニカやジャズなどが詰め込まれた半野喜弘のアレンジに、UAの官能的な歌声がシンクロし、独特の世界観を醸し出す。コーヒー飲料のCM曲としてもおなじみ。
02Last Century Modern (Towa Tei feat.UA)
アコーディオンやストリングスの奏でる優美なアナログ音とクールなデジタル音を融合させた、テイ・トウワならではの楽曲。たった1フレーズの歌詞を、存在感バツグンの歌声で表情豊かに歌い上げるあたりはさすが。
03かすかなしるし (Hiroshi Fujiwara feat.UA)
TV-CMにも採用され、幻の名曲ともたたえられたメロウなラブ・ナンバー。切ない恋心をロマンチックに描いた、いとうせいこう作詞の歌詞にも注目。目を閉じると、ピアノの美しい旋律とともに情景が浮かんできそう。
04月光ワルツ (こだま和文 (DUB STATION)feat.UA)
ありそうでなかったUAの正統派ワルツ。月夜をイメージさせる神秘的なサウンドは、異国の民謡のようにも、子守唄のようにも聴こえるから不思議。イヤなことをすべて包んでくれるような、やさしい音声に癒されること間違いなし。
05Miss You (Little Creatures+UA)
コレがストーンズ!? と思わずにはいられない、原曲からはかなり逸脱したアレンジのカヴァー。力強くリズミカルな打楽器のアンサンブル、それらに共鳴するようなシルキー・ヴォイスが重なり、民族音楽のような趣だ。
06光 (Mondo Grosso feat.UA)
名曲『リズム』以来、約7年ぶりとなる大沢伸一とのコラボ曲は、軽快なデジタル・ビートに心が踊るアッパーなダンス・チューン。ゆったりとしたリズムから徐々に加速していく、ドラマチックな展開はまさに圧巻。
07Phantom Ship (Mai Fujinoya feat.UA)
カテゴライズ不能な即興系ベーシスト、藤乃家舞の世界観にどっぷりと浸かれる、ポエトリー・リーディングのような一曲。夢と現実を行き交うような真実味のないリリックが、音幅の少ない単調なメロディ・ラインと絶妙にマッチする。
08Joan of Arc in the Money Jungle (Naruyoshi Kikuchi feat.UA)
圧倒的な音の波とパワフルなヴォーカルが五感を刺激するビッグバンド・サウンド。「I sing a song」へと続くラストまで、全速力で駆け抜けるエナジーに感服! 菊池成孔のゴージャスなホーン・アレンジも聴きどころ。
09頼りない天使 (栗コーダーカルテット+UA)
フィッシュマンズのトリビュート・アルバムの、ラストを飾った名曲。チャーミングなリコーダーの四重奏と天まで突き抜けるような透明感のあるヴォーカルが見事に融合して、原曲とは違った切なさを浮かび上がらせる。
10トンネルぬけて (Little Creatures+UA)
ムーディなアコースティック・ナンバーにアレンジした、ボ・ガンボスの代表曲。意志を行動に移す前の緊張感が読みとれるAメロから、「ヘイヘイヘイ」ではじまるキャッチーなサビへの転調が、ドラマティックで面白い。
11ソウゲンノハオト (AlayaVijana feat.UA)
まさに“草原の羽音”のような、シタールとタブラが奏でる弦楽器のアンサンブルが心地良い。特別な歌詞やメロディがなく、感情の赴くままに歌ったというUAのヴォーカルは、声ではなく、自然界に存在する音のよう。
12この坂道の途中で (UA)
初期のメロディアス路線を汲んだ、ストーリー性あふれる楽曲。坂道の途中という不安定な場所を舞台に、戸惑いや焦燥感が描かれた歌詞は、狂おしいほどに胸を打つ。『空中庭園』の主題歌として用いられ、映画に深みを与えたナンバー。