ミニ・レビュー
時代や体制社会に対する怒り、不満が爆発したパンク・ムーヴメントの頂点に立つセックス・ピストルズ衝撃のデビュー・アルバム。「ゴッド・セイヴ・ザ・クイーン」「アナーキー・イン・ザ・U.K.」「拝啓EMI殿」など権者への挑戦状ともいえる内容だ。
ガイドコメント
その名をロック史に、いや世界史にまで残した彼らの唯一となるオリジナル・アルバム。いまやパンク好きのみならず、全ロック・ファン必聴の通過儀礼盤と化した感も。1977年発表。
収録曲
01HOLIDAYS IN THE SUN
この世にパンクという音楽を呼び起こしたデビュー・アルバム『勝手にしやがれ!』のオープニングを飾る曲。軍隊の行進のような地鳴りとともにかき鳴らされるギター。続いてなだれ込む3コードの産声は、四半世紀を過ぎた今聴いても鮮烈な印象。
02BODIES
疾走感あふれるギターが心地良いスピーディなパンク・ソング。人をバカにしたように歌っていたジョニー・ロットンが、突然サビで絶唱しナイフのようなヴォーカルを突きつけるスリリングさは何度聴いてもゾクっとくる。
03NO FEELING
背徳的で暴力的なサウンド、何かを訴えているようで実は主張も何もない歌詞。いろいろなしがらみや物事すべてを「分かってたまるか!」の一言で蹴り上げる恐ろしいまでの短絡さ。しかし、そこに無性に惹かれるのも否定できない事実である。
04LIAR
プロペラの羽音のような小刻みに鳴らされるギターとジョニー・ロットンの「liar!」と叫ぶマシンガンのようなヴォーカルに、のっけから撃ち抜かれるパンク・チューン。とにかく罵倒するだけという非常に単純な歌詞が、さらに殺傷能力を高めている。
05GOD SAVE THE QUEEN
エリザベス女王を中傷したタイトルで話題を呼んだピストルズの代表曲のひとつ。売り上げ的には大成功を収めたパンクの記念碑的作品だが、当時はラジオでの放送が禁止されるなど、世の中を引っかき回した問題作だった。
06PLOBLEMS
歪んだギターが3コードをかき鳴らしながら、ただひたすら突っ走っていく、スピード感あふれるパンク・チューン。挑発するようなジョニー・ロットンの歌声はいつもの通りだが、いつもはがなり立てるサビで妙に落ち着いていたりするのが、何だか新鮮だったりする。
07SEVENTEEN
タイトル通り、17歳のキッズの気持ちをストレートにぶつけたナンバー。青さが全開のサウンドもさることながら、歌詞もこっ恥ずかしいくらいに青い。思春期だからこそ出せる無軌道なパワーとバカさ加減を前面に押し出した曲だ。
08ANARCHY IN THE U.K.
1976年に発表されたパンクを象徴する一曲。ロックンロールの熟しかけた未来にセックス・ピストルズが見舞った痛烈な一撃。この攻撃的なスタイルがその後のロックの行く手を決めた。
09SUBMISSION
ノイズまみれの重々しいギターがギャンギャンうなる、ピストルズ唯一と言ってもいい、スロー・テンポなナンバー。どことなく憂いを含んだサウンドは、90年代に開花するグランジ・ムーヴメントの先駆けのような匂いが漂っている。
10PRETTY VACANT
冒頭に見せる円を描くようなグルーヴィなドラミングは、垂直ビートだけを基盤にしてきたピストルズからすればかなり新鮮。ライヴでのコール・アンド・レスポンスに適したキャッチーなサビが、聴く者をこれでもかと煽りまくる。
11NEW YORK
ヘヴィなギター・リフが炸裂するラウドなパンク・チューン。当時のニューヨーク・シーンを皮肉った内容だが、かなり口汚くののしっており、ところどころで触れている日本の印象があまりにも惨たんたるもので思わず閉口する部分も。
12E.M.I.
曲としてはシンプルなパンク・ソングだが、中身はピストルズを一番最初に発掘するも、バンドの無軌道ぶりにさっさと契約を解消したEMIを思いっきりコケにした曲。商業ベースに収まりきらないピストルズらしい最高で最悪の意趣返しといえる。