ミニ・レビュー
“ジャパレゲ”シーンの有望株KEN-Uのセカンド・アルバム。チャートを賑わせた2曲目をはじめ、安定感のあるダンスホール・チューンが詰まった快作だ。5、6、8曲目でDJ YUTAKA、3、7曲目でHOME GROWNのTANCOがトラックに参加するなど、制作陣も豪華な一枚。
ガイドコメント
ジャパニーズ・レゲエ・アーティスト、KEN-Uの2ndアルバム。ジャマイカと日本のトップ・リディムメイカーらとのコラボを通し、ダンスホールやラヴァーズなどさまざまな表情を見せている。
収録曲
01NOGASENAI
跳ねるビートと極太のベースに、ラテン・フレイヴァをたたえたギターのフレーズ。情熱的なKEN-Uの疾走感のあるフロウがトラック上を駆け抜ける。ジャパニーズ・ダンスホール・レゲエの最新型を高らかに鳴らすナンバーだ。
02夏のそのせい
東京のダンスホール・シーンを牽引するサウンド・クルー“RACY BULLET”の一員、KEN-Uが刹那に夏を彩る。耳になじむメロディとセクシーなヴォーカルでレゲエ・ファン以外も惹きつける、オールラウンダーなサマー・チューンだ。
03緑の海 (feat.DOMINO-KAT)
軽快なリズムを刻むスネアと高音のアルペジオ・ギターが胸を焦がす。ナチュラルな空気感を放つフロウは、昼間の余熱と清涼な浜風のような相性を感じさせる。南国の夕暮れを思わせる、甘く切ない楽曲だ。
04TIME GOES AROUND
カッティング・ギターとリムショットが形作るルーズな裏打ちが心地良い、メロウなレゲエ・チューン。KEN-Uの無骨で男らしいフロウが、緩やかなラヴ・ソングと意外にも好相性だ。和製ラヴァーズ・ロックとして完成度の高い佳曲。
05SKIT (45F Lounge) (BABY NON from BADDY 45)
ダウン・テンポのチルアウト・トラックの上でBADDY 45のBABY NONがスキットを繰り広げるインタールード。涼しげでソフトなダウン・ビートとBABY NONのキュート&セクシーな日本語と英語が緩やかに絡みつく。
06TWO SEATER
硬質なドラム・ビートと爽快で切ない雰囲気を醸し出す上モノの組み合わせが、いかにも彼らしいラヴ・ソング。フックのメロディ・ラインは、ジャパニーズ・レゲエらしい耳当たりの良い仕上がり。緩やかなシンセ使いやクリーン・トーンのアルペジオが、清涼感を演出している。
07何も聞かないで
トリッキーなビート感がいかにもダンスホール・レゲエらしい構成。それでいてマリアッチ風の情熱的なギターのフレーズやパーカッションの野性的な響きが、KEN-U風味のひねりを加えている。回転の速いラップなど、ヴォーカリストとしてテクニックも光る楽曲だ。
08まだ見ぬ時代
オールドスクールのヒップホップのようなシンプルなビート感を持ったトラック上で、緩やかなレゲエのフロウが流れていく。KEN-Uの自然体のヴォーカル・スタイルで歌われる社会的なメッセージが、新鮮に響く佳曲。
09固まる前に (feat.MICKY RICH)
MICKY RICHをフィーチャーしたハードコア仕様のナンバー。インダストリアルなシークエンスが不穏に響くトラックが、ダークな表情を印象付ける。アンダーグラウンドな深夜のクラブがよく似合う、黒いダンスホール・レゲエだ。
10INNA DI DANCEHALL
ヴォコーダーを駆使したヴォーカルが軽やかなトリップ感を生む楽曲。ダンスホール特有の跳ねるようなビートが前面に押し出されながらも、主張を抑えた緻密なシンセの上モノとシャーマニックなヴォーカルの組み合わせが、特に印象に残る。
11LAST NIGHT
中東の民俗音楽のようなオリエンタルなトラックが印象的。別れの孤独感を歌ったリリックとマイナー調のダウナーなメロディを持ちながらも、不思議と風通しの良い鮮やかな表情をした楽曲。
12NEW KINGSTON
ダウン・テンポの裏打ちとワウの効いたギターのメロディ・ライン、粒の粗いベース。アルバム『NEXT CRUISING』中で最もオーセンティック・レゲエに近い構造をしているのがこの曲。しかし、リリックはあくまで都会的な憂鬱に満ちた、KEN-Uらしい内容となっている。
13遠い国から
ギターの裏打ちとダウン・テンポによって清涼感と侘しさを感じさせる、アルバム『NEXT CRUISING』のラスト・トラック。伸びやかなヴォーカルが、もの悲しい曲調の中に一滴のポジティヴさを注入する。聴くほどに味わいのあるスロー・ナンバーだ。