ミニ・レビュー
大山純(g)が加入し、ホリエのソング・ライティングがますます発揮されたフル・アルバム。果てなくアンビバレンスなギター、せつなさと儚さが融け合ったリリック、どこか歪みをおぼえる美麗なメロディ、ポップとロックの限界点と髄を極めたJ-ROCKの最強作だ。
ガイドコメント
日本を代表するロック・バンド、ストレイテナーの前作より約2年ぶりとなるアルバム。迫力のあるバンド・サウンドと、しっとりしたアコースティック・サウンドを併せ持つ彼らの、さらなる深化が窺える一枚だ。
収録曲
01クラッシュ
心の中の暗闇から明るい場所へ手を伸ばすような、一筋の光を見出していく詞が印象的なミッド・チューン。イントロのユニゾンは重量感あふれるサウンドだが、そこから続くメロディは流れるような展開を見せる、アグレッシヴな一曲に仕上がっている。
02Little Miss Weekend
ギターの大山純が新たに加入した通算14枚目のシングル。鬱気を晴らすようなサウンドが印象的なアップ・ロック・チューンで、暴れまわるように響くリズム隊とヴォーカルの暗い叫びが陰鬱な詞にあいまって、いっそう悲壮感が伝わってくる。
03Ark
リズミカルに刻まれるギターの緊張感あふれるイントロが印象的なアッパー・チューン。“未来へと拓く瞬間まで”さまざまな犠牲を払いながら、もがき苦しんで未来への光を掴み取ろうとする希望と願いが強く込められた一曲。
04Lightning
通算15枚目のシングル。“君がいてくれたら 他に何も望まない”と、いなくなってしまった君を想う切ないミディアム・ナンバー。ホリエのあまり抑揚をつけない歌い方が、“心に空いた穴”を埋めようともがく苦しみや心の虚無感を深く映し出している。
05Magic Blue Van
『NANO-MUGEN COMPILATION 2009』にも収録されたミディアム・ナンバー。不思議な世界観を持った詞と韻を踏んだ言葉のバランスが面白く、ところどころに入るギターとベースの休符がほどよい緊張感を生んでいる。
06蝶の夢
エコーがかったサウンドが異空間を漂っているような雰囲気を醸し出すミッド・チューン。ピアノのアルペジオや縦横無尽に行き来する日向の緻密なベース・ラインが、“蝶の夢 飛べない羽”“水面で鏡は割れる”といった絶望を色濃く出している。
07Black Hole
ダウンロード配信で発表された13thシングルのアルバム・ヴァージョン。ふわふわと浮いたような雰囲気をまとうエコーやどこかエスニック調のメロディが、“ブラック・ホール”という大きな闇と果てしない宇宙空間を彷彿とさせるアップ・チューンだ。
08Stilt
動き回るベース・ラインとリズミカルなギターのリフが印象的な、疾走感あふれるアッパー・チューン。英語と日本語が入り交ざった歌詞と爽やかなサウンドによって、前向きに生きていく力や人を愛する心を教えてくれるような、温かい気持ちにさせてくれる一曲だ。
09イノセント
“そんな詩は僕には書けない/そんな嘘は僕にはつけない”と、無垢な気持ちを歌ったスロー・ナンバー。はかなくも着実に時が流れていくさまを、幻想的でどこか無機質な雰囲気を持つピアノの音色と静かに柔らかく響くギターのサウンドで、見事に描ききっている。
10ネクサス
通算10枚目のアルバム『Nexus』のタイトル・チューンとなった疾走感あふれるミッド。“君に会えた時間を 僕にとっては全てなんだよ”という人との出会いの大切さや過去の物事、未来への希望などが、すべてリンクしている世を描ききった歌詞が素晴らしい。