ミニ・レビュー
狙ってる感アリアリかと思えば、もう全然フツーに聴けちゃうのがこのバンドの凄さ。(4)なんて吉幾三のアノ曲ですぜ。かくもしつこく“和モノ”に執着し、愉快にこねくり回したジャズがあっただろうか。サムライの美学と小坊主のイタズラ心が混在する快作。
ガイドコメント
『千歳鳥』から約半年ぶりとなるアルバム。今回、ヨーロッパ、アメリカ・ツアーを経てきた彼らが取り組んだのは、日本の名曲のカヴァー集。映画『用心棒』のテーマ曲や、灰田勝彦の「鈴懸の経」などを収録。
収録曲
01用心棒
巨匠・黒澤明監督の代表作『用心棒』主題曲。ワイルドでアウトローな雰囲気を持つ、“SAMURAI SPIRIT”にあふれた原曲をダイナミックにアレンジ。殺気にも似たクールネスがたとえようもなくカッコいいナンバーだ。
02鈴懸の径
立教大学に歌碑が建てられるほど大ヒットとなった、灰田勝彦による昭和の流行歌「鈴懸の径」を、スピード感あふれる演奏でカヴァー。ヒイズミマサユ機による幻想的でリリカルなピアノが、美しい音の波紋を広げる。
03銀座カンカン娘
“ブギの女王”笠置シズ子が歌い大ヒットとなった、同名映画の主題歌をカヴァー。昭和のポップス史をリードした服部良一による底抜けに明るいサウンドを、その持ち味を殺さないようなサンバ・テイストでリアレンジしたナンバー。
04雪國
カラオケのスタンダード・ナンバーといえる吉幾三の代表曲が、PE'Zの手によって叙情性あふれるジャズ・インストゥルメンタルに大変身。日本人リスナーの琴線に触れる、演歌特有の哀愁を帯びたメロディが、さらにメロディアスに展開していく。
05どんたく
サディスティック・ミカ・バンドの初期アルバム『黒船』に収録の名曲をカヴァー。「博多どんたく」のにぎやかなお祭りテイストを、リズミックで躍動感のあるアレンジで表現。これぞ日本人の日本人による日本人のためのジャズだ。
06おもちゃのチャチャチャ
あまりにも有名な童謡「おもちゃのチャチャチャ」を、PE'Z流にカバー。原曲の親しみやすいメロディを損ねることなく、思わず心がウキウキして胸踊るような、可愛らしい南国テイストにポップ・アレンジ。
07ソーラン節
ニシン漁の歌として有名な北海道民謡を、力強いモダン・ジャズ・テイストにリアレンジしたナンバー。特にイントロは、“ジャズ界の巨人”ジョン・コルトレーンの「A LOVE SUPREME」をも彷彿とさせるスケールの大きさだ。
08ともだち
坂本九が1965年にリリースしたビッグ・バンド・ジャズ・ナンバーを、よりアダルティにアレンジ。テナー・サックスのソロ・パート演奏が強烈な印象を脳裏に残す、ハード・エッジなサウンドに仕上げている。
09小春おばさん
オリジナルは、井上陽水の大ヒットアルバム『氷の世界』収録曲から。ペシミスティックで憂いを帯びたトランペットの音色が、北風すさぶ冬の町の情景を描き出す。メンバーの思い入れが特に強い作品とのことだ。
10花
沖縄をイメージする楽曲の代名詞といえばやっぱりコレ。喜納昌吉&チャンプルーズによる「すべての人の心に花を」を、耽美なピアノ・セクションで大胆かつ繊細にリアレンジしてカヴァー。イントロのベース・プレイも陶酔してしまうほどの美しさだ。
11みずいろの雨
トランペットのOhyamaいわく、「アレンジに最も時間がかかった」という作品。シンガー・ソングライター八神純子の1978年リリースのヒット・ナンバーを、躍動的なホーン・セレクションでアレンジしてジャジィに再現している。
12また逢う日まで
アルバム『日本のジャズ-SAMURAI SPIRIT-』のラストを飾るのは、オトナ度高め、ロマンチシズムあふれる小粋なナンバー。“和製トム・ジョーンズ”こと尾崎紀世彦によるヒット・ナンバーを、しっとりとしたミディアム・テンポ・バラードにアレンジしている。