ミニ・レビュー
今や世界で最も人気のあるDJといっても過言ではない彼の5作目。ウィル・アイ・アム、ティンバランド、アッシャー……と、1曲ごとに、キラ星のようなアーティストたちの名が連なる。それも彼が作り出すハイブリッドでハイパーなパーティ・ビートのおかげ。音のうねらせ方、歪ませ方が見事!
ガイドコメント
フランス出身のDJにしてプロデューサー、デヴィッド・ゲッタの前作から2年ぶりとなる通算5枚目のアルバム。iTunesダンス・チャートのダンス・チャートで1位を獲得した「ホエア・ゼム・ガールズ・アット」ほか、アゲアゲなナンバーが満載の一枚だ。
収録曲
[Disc 1]〈VOCAL ALBUM〉
01WHERE THEM GIRLS AT
“友達が一緒”と答えるお目当てに対して“だったら連れてきてみんなで楽しもう”と、フロー・ライダーとニッキー・ミナージュがカウンター・パンチ。アルバム『ナッシング・バット・ザ・ビート』からのシングル第1弾となるパーティ・ヒットだ。
02LITTLE BAD GIRL
声は紳士的なタイオ・クルーズが、媚びる女たちを尻目に“あの娘が欲しいぜ”とフロアのイケナイ女を品定め。一方、リュダクリスは“ミスター女たらし”と自称して前のめりなフロウをかます。ドラマティックな旋律が印象的なダンス・チューンだ。
03TURN ME ON
愛で私を生き返らせてと懇願するエネルギッシュなパーティ・ダンサー。ニッキー・ミナージュが繰り返す“私に火をつけて!”のコーラスは一途な情熱的歌唱をみせるが、終盤のブリッジでは、ユニークな“らしい”フロウも披露。
04SWEAT
ドライでエレクトロなビートとスヌープ・ドッグのウェットなフロウが溶け合った、乾湿の化学反応が見事なダンサー。舌なめずりで待ちかまえていそうな“お前を汗だくにしたい”というフックを前に、女たちは“ヘビに睨まれたカエル”状態だ。
05WITHOUT YOU
アルバム『ナッシング・バット・ザ・ビート』からのシングル第3弾。“お前なしじゃダメなんだ”と失意に暮れる男を、アッシャーが情感込めて描写。U2「ウィズ・オア・ウィズアウト・ユー」にも似た荒涼感とコーラス以降のかすかな高揚感が意外にもマッチ。
06NOTHING REALLY MATTERS
クラブでは一切悩むことなんてないんだよと、憂さ晴らしに浮かれ騒ぐパーティ・ライフについてウィル・アイ・アムがもの申す。軽快なビートのダンサーだが、ウィル・アイ・アムにおあつらえ向きのヒネたビートも用意している。
07I CAN ONLY IMAGINE
興奮を高めるクラップとうねるビートが、空から地上を俯瞰するような爽快なコーラス・パートをお膳立て。クリス・ブラウンの歌唱、リル・ウェインのフロウともに潔いダンサーだが、歌うのは上玉な女への下心だったりする。
08CRANK IT UP
エイコンに寄り添ったアーシーな雰囲気を溶け込ませた、抑揚の激しいメロディが走るエレクトロ・ダンサー。グラビアに載らなくたって彼女はイケイケなんだぜ! と今夜望みを叶えてくれる女子へ賛辞を送る。コーラスのかけ声の煽りも沸点へと高める。
09I JUST WANNA F
「ライク・ア・G6」で採り上げた「ブーツィ・バウンス」作者のデヴとチキチキでも名を挙げたティンバランドが、中毒性高いうねるビートで泳ぐ。A、B……ときて結局互いが求めるのは“F”と、メイクラヴへなだれ込む。ブレイクビーツ風エレクトロだ。
10NIGHT OF YOUR LIFE
ずっと愛してくれるなら最高の夜を約束すると声高に告げるのは、客演のジェニファー・ハドソン。軽薄な歌も多い中で、苦難を乗り越えてきた彼女の言葉は重みが違う。その声に負けじと、デヴィッド・ゲッタ制作の4つ打ちトラックもグイグイと展開する。
11REPEAT
マイリー・サイラス「パーティー・イン・ザ・U.S.A.」の作詞で知られるジェシー・Jを迎えての、晴れやかなロック・テイストのクラブ・アップ。文字通り繰り返される“リピート”のフレーズを含め、イキイキとしたヴォーカルとともに展開する快活な曲だ。
12TITANIUM
決めのフレーズ“私はチタンでできている”とは、いくら撃っても倒れない強靱な心を持っていることの比喩。少しばかりリアーナの面影もちらつかせるジャズ系シンガー・ソングライター、シーアのエネルギッシュな歌唱が印象的なエレクトリック・ダンサーだ。
[Disc 2]〈ELECTRONIC ALBUM〉
01THE ALPHABEAT
中世風ファンタジーの世界観も感じさせる抑揚の激しいフレーズのループがさまざまに形を変えて展開する、アッパー・ビートのインストゥルメンタル・トラック。ほぼ電子的なうねりが覆うも、どこか物憂げな雰囲気が漂う。
02LUNAR
「月」というタイトルよろしく、スペーシーな空間を創り出すエレクトロニックなビートが支配する近未来な世界観のクラブ・インスト。ビヨンセ「ラン・ザ・ワールド(ガールズ)」提供のアフロジャックが参戦し、ファンキーな風味をちょい足ししている。
03SUNSHINE
ダフト・パンクやアーミン・ヴァン・ヴューレンらのリミックスでも活躍する、スウェーデン出身のプログレッシヴ・ハウス系プロデューサー、アヴィシーとの共作によるエレクトロ・ビーツ。なるほどヨーロッパ的な空間の広がりを感じるトラックだ。
04LITTLE BAD GIRL
タイオ・クルーズとリュダクリスが参戦したシングルのインストゥルメンタル・ヴァージョン。センセーショナルなコーラス・パートに耳を引かれる中毒性の高いトラックだが、中盤で変化をつけてストーリー性をもたせている。もちろん歌なしでも踊れる。
05METRO MUSIC
マイケル・ジャクソンとエイコンの「ホールド・マイ・ハンド」に名を連ねたジョルジオ・トゥインフォートの手腕を借りてのエレクトロ・ダンサー。ユーロ的なデザイン性を持った、アーバンでエモーショナルなビートが弾け進む。
06TOY STORY
ジョルジオ・トゥインフォートとゲッタでの“トイ”の解釈は、ゲームBGM風というアプローチ。ヴォーカルを切り貼りしたようなエフェクト駆使の変質的なトラックに、ゲームBGMが差し込まれていく。オタク度合いの高いインドア・エレクトロといえるか。
07THE FUTURE
オランダ出身のプロデューサー、アフロジャックと手掛けた“未来図”は実にエキセントリック。躍動と興奮を呼ぶエレクトリックなダンサーで、リズミカルなビートが走る前半から扇情的に迫る後半への展開が近未来的な可能性を感じさせる。
08DREAMS
制作はBEPのヒット「アイ・ガッタ・フィーリング」を共作したフレデリック・リースターターとジョルジオ・トゥインフォート。幻影や既視感、希望、非日常などを想起させるサウンドが交錯する展開は、まさに夢想を音像化したようなエレクトリカル・ビーツだ。
09PARIS
母国フランスの首都をタイトルに冠したエレクトロ・ダンサー。マーチング・ドラム風のパーカッシヴなビートをループさせながら、都市の界隈性とユーロ的な陰影を投じている。フレデリック・リースターターとの「アイ・ガッタ・フィーリング」提供コンビの制作。
10GLASGOW
ジョルジオ・トゥインフォートとの共同制作。スコットランド最大の都市のタイトルは、「パリ」同様に作曲し初披露した地名を冠したとのこと。ミニマルやアシッドとも呼べそうなハウスで展開したトラックは、ソリッドでダンサブルだ。