ミニ・レビュー
セカンド・フル・アルバムは、70〜80年代のデヴィッド・ボウイを彷彿とさせる顔にペイントした気合いメイクのジャケットでアンナ流ロック・ショーを展開。AIやMONKEY MAJIKとコラボしたCM曲のほか、全17曲中9曲がタイアップ付きながら、一本筋の通ったロック魂が流れる。
ガイドコメント
約2年ぶりとなる土屋アンナ名義での2ndアルバム。ブリトニー・スピアーズらを手がけるプロデューサー陣や元リンプ・ビズキットのウェス・ボーランドなどが参加していて、さらに進化したサウンドを聴かせている。AIとのコラボ曲も収録。
収録曲
01overture
2ndアルバム『ヌーディー・ショウ!』のオープニングを飾るオーヴァーチュア。郷愁を感じさせるチャンネルをひねるような効果音から一転、エッジィなギターとともにアップ・テンポのロック・インストが展開、“ショウ”の開幕を告げる。
02Cockroach
超重量級のギターが歪むミドル・チューン。誰しも嫌悪するはずの“Cockroach(ゴキブリ)”を、どう作用するか分からないが変化を与える“poison(毒)”であり“キュートなもの”ととらえる土屋ならではの感覚が面白い。
03Crazy World (Anna Tsuchiya feat.AI)
R&B/ヒップホップの歌姫、AIをフィーチャリングした一曲。土屋のロック・パートとAIのライム・パートを二人の力強いデュエットがつなぐ絶妙な構成で、女性たちに革命を喚起するリリックにふさわしい急進力を感じさせる。
04Virgin Cat
息の長いサックスのセクションと、乾いたパーカッション&合いの手が絶妙にマッチした一曲。米TV局製作のドラマ『Lの世界』のキャンペーン・ソングで、仕事に恋に休めないワケあり女性像を、ヒップなダンス・ソングで見事に描写している。
05GINGER (Anna Tsuchiya feat.MONKEY MAJIK)
Asahi「ジンジャードラフト」のCMで共演したMONKEY MAJIKを迎えたオルタナ系のアップ・ナンバー。裏拍を派手に刻むギターやベース・ラインと、はっきりと独立した土屋のヴォーカルが、楽曲の力強い骨組みとなっている。
06u
もろくはかない心に鎧をまとう女性の心を描写したリリックが、極太のバンド・サウンドとともに疾走。迫力と哀切さをあわせ持つ土屋のヴォーカルが、切迫感をともなって響いてくる。海外ドラマ『Lの世界』のキャンペーン・ソング。
07Dirty Game
“一体誰を愛しているのか、答えなさい”と、土屋の直球の問いかけが示すとおりのハード・ナンバー。ギターとベースが明快なユニゾンを奏でる、真っ向勝負といった風情のプレイがストレスを吹っ飛ばす。TBS系『Jスポ』のテーマ・ソング。
08style
抑えどころからハイトーンでのシャウトまで、一段とパワー・アップしたヴォーカルを全面に押し出した一曲。確信を持って歌い上げる“フェイクはいらない”という宣言は、まさに彼女の生き方そのものを表わすかのごとく、説得力を持って迫ってくる。
09masquerade
スタジアムで踊る人の波が思い浮かびそうなトランス・チューン。ただしここは単なるパーティ会場ではなく“masquerade(=舞踏会)”の場。へヴィなギター・サウンドを重ねることで、より濃密でゴージャスな雰囲気を創り出している。
10BUBBLE TRIP
共同プロデュースとしてKNS Production(ブリトニー・スピアーズ作品らを手掛ける)が参加。遊び心をちりばめたポップでキュートなダンス・チューンで、トリップ感のある摩訶不思議なリリックも面白い。
11Serenade
“セレナード”というタイトルどおり、夜の切ない独白を切り取ったバラード。ハスキーな歌声に、アコースティック・ギターの温かい音色とコーラスが寄り添う。さらにストリングスのピチカートなど多彩な技法を挟み、どこかくすんだゴシック感を漂わせる。
12Shape of your love
澄みわたるピアノの音色から始まり、次第にバンド・サウンドとストリングスが挿入され、壮大に紡がれる感動のバラード。愛する人を失った痛みから、どうしようもなくただ救いだけを求める痛ましい心を真摯に歌い上げている。
13cocoon (NUDY SHOW! version)
7thシングル「cocoon」のアルバム・ヴァージョン。イントロからアコギを響かせるなど、本格派ロックを追求したオリジナルに比べ、情感を伝えることを大切にした仕上がりとなっている。NTT docomoのCFソング。
14LUCY
日本テレビ系アニメ『NANA』のオープニング曲で、劇中バンド“ブラスト”名義でリリース。ギターにウェス・ボーランド(リンプ・ビズキット)、ドラムにジョシュ・フリース(ナイン・インチ・ネイルズ)らを迎えた、スピード感あふれるパンキッシュなナンバーだ。
15RIDE ON!
ギリギリに押さえこんだ感情を、混乱するままにぶつけたかのようなリリックが、ヘヴィなサウンドに絡まるホットなナンバー。多くのライヴをこなし、格段に鍛えられたヴォーカルが、楽曲をいっそう引き締めている。
16BLOOD ON BLOOD
2ndアルバム『ヌーディー・ショウ!』のラストとなる曲。ハードなバンド・チューンながら、曲調に少しづつ変化をつけることで、サビの盛り上がりを強調する構成が上手い。力強さにしなやかさを備えつつあるヴォーカルの魅力がよく表われている。
17黒い涙 (deep sadness version)
日本テレビ系アニメ『NANA』エンディング曲。ダウナーなところから盛り上げるドラマティックにシャウトするヴォーカルが、艶っぽくて妖しい。主人公ナナの葛藤や情熱をダイレクトに歌い上げる、まさにロックのど真ん中といえるナンバーだ。