ミニ・レビュー
1曲目にはびっくり。あまりに直接的な日本民謡咀嚼を経ての、ダビーなロック曲で。らしい、と言えばあまりにらしいメジャー3作目。曲調、リズム、歌い方など、幅は広がる。ひりひりする感覚と醒めた感覚が、獰猛な音像とともに、思うままあふれ出る。
ガイドコメント
2年ぶりとなる待望の3rdアルバム。デイヴ・フリッドマンとともにアメリカで制作されたもので、日本の音楽シーンに対する勝負作品。良い意味でファンの期待を裏切ってくれそう。
収録曲
01NUM-HEAVYMETALLIC
アヒト・イナザワによるソーラン節のような歌が強烈。ベースが和の雰囲気を醸し出すメロディを辿り、ドラムがダブ的なミックスにより和太鼓のように響きわたる。サウンド全体の残響音が空間的な広がりを演出し、祭囃子が鳴り響く宴の混沌とした部分をスローモーションで見せられていくようで、トリップ感覚に誘われる。
02INUZINI
かき鳴らされるギターのささくれ立ったイントロから一転、「やっぱりロックンロールやね〜」という気の抜けるような台詞が入り、腹にずっしりとくる力強いドラムとともに、ゆったりと進んでいく。しかし、徐々にヒートアップし、加速し加熱していく。日本的な情緒を漂わせるギターと言いっ放しのような歌詞が特徴的なナンバー。
03NUM-AMI-DABUTZ
ギターのストロークからじわじわと盛り上がっていき、バンド全体で叩き鳴らされるイントロが強烈。ダンサブルなベース、せわしなく響きわたるドラム、歪んだ鋭角的なギターが渾然一体となって迫りくる。そんななか、向井が早口で念仏を唱えるように“冷凍都市”を斬りまくる。“必要ない”というシャウトが象徴的だ。
04Tombo the electric bloodred
小刻みなシンバルのイントロから、歯切れの良いギター・リフとともに進行していく。全体的に乾いた肌触りで、咆哮する向井の歌声も、血走ってはいるが、余計な感傷はみられない。そんな殺伐とした雰囲気のなか、“恋をする少女だったときもあった”とちらっと切なさを見せるが、バンド・サウンドの勢いにかき消されていく。
05delayed brain
ゆったりとしたリズムの中を、低音から高音までをまどろむようにギターが行き来する。意識がはっきりしていない早朝の脳内をそのまま表現したようなサウンドで、まったりとしたテンポで進みながらも、浮遊感漂うキーボードや鋭角的なギターにより、だんだんと破綻していく。デイヴ・フリッドマンによるコーラスが聴ける。
06CIBICCOさん
博多弁で歌われる歌詞が印象的。一音一音力強いベースに引っ張られ、淡々と進んでいくバンド・アンサンブルが、街を行き交うさまざまな人を切り取った情景描写と重なって、黄昏れた雰囲気を醸し出している。公園で野球をして遊ぶ子供たちや犬の散歩をしている女性を遠めに見ながら、一人心の中で語りかける様に哀愁が漂う。
07MANGASICK
“漫画の恋をしていたい”という歌詞とは裏腹に、殺伐としたバンド・サウンド。人の心に土足で入り込むような刺々しいギターが特徴。“気分の中で生きていたい”彼女に、現実を突きつけていくようだ。しかし、“恋なんてなんするの?”と矢継ぎ早に質問を投げかける向井の歌声はどこか優しいし、メロディには可愛げがある。
08FU・SI・GI
“漫画の恋をしていたい”という歌詞とは裏腹に、殺伐としたバンド・サウンド。人の心に土足で入り込むような刺々しいギターが特徴。“気分の中で生きていたい”彼女に、現実を突きつけていくようだ。しかし、“恋なんてなんするの?”と矢継ぎ早に質問を投げかける向井の歌声はどこか優しいし、メロディには可愛げがある。
09性的少女
強調されたベース・ラインの不穏な動きが、おどけているようでもあり何とも滑稽。歌詞も“なんじゃいこーじゃい”とおどけた風だが、歌われているのは次々と記憶を消してしまう“性的少女”についてであり、滑稽さと空しさが入り混じった感覚にさせられる。“真っ赤な烏を食らう夢”などの描写もあり、不気味でもある。
10Frustration in my blood
ひんやりとした質感のギターのカッティングが、空間を斬っていくようなクールな曲。メロディアスなベースと乾いたドラムの響きにられた冷徹なサウンドに乗せて、自らの内に潜むフラストレーションを感じ、“俺らはやはり色情に支配された犬か?”と問いかけながらも、それに支配されていく様を俯瞰するようにして歌う。
11黒目がちな少女
つま弾かれるギターとともに、向井がエモーショナルに絶唱する。アヒト・イナザワによるホーミーと遠くの方でドカドカ響いているようなドラムが、さすらっている姿を綴った詞に、よりいっそう哀愁を漂わせている。残響音がこだまし、都市で暮らすさまざまな人の想いや暮らしを想起させ、その中に温かさを感じさせる。