ガイドコメント
コモンドールが飛んでいるジャケットが犬好きにはたまらない、メジャー2作目、96年発表作品。ダスト・ブラザースが参加した本作、ベックのサンプリング・センスのすごさが存分に堪能できる。
収録曲
01デヴィルズ・ヘアカット
イントロからthemの有名ギター・リフをサンプリング、ブレイクビーツをガレージ調に彩ってみせた、歴史的アルバム『オディレイ』のオープニング・ナンバー。ポップからロマンティックな佇まいまでをも描写し得るサンプリングからは、BECKの才知が見てとれるようだ。
02ホットワックス
ダスト・ブラザーズとの強力なコラボによる、BECK流ヒップホップ・チューン。ブルージィにループするかっこいいギターや中盤に突然「ジングル・ベル」のメロディをパロって陽気に歌うなど、ただ者ではないセンスを発揮している。
03ロード・オンリー・ノウズ
アルバム『オディレイ』収録のカントリー・ブルース・ナンバー。だが、そこはBECK。絶叫から始まり、カントリー・ブルースへ転じる。コーラスも美しいが、終盤の気だるい感じもBECKらしくていい。
04ザ・ニュー・ポリューション
BECKの叩くタンバリンに合わせてオーディエンスがハンズ・クラップする、ライヴでも大定番の盛り上がり確実のナンバー。幸せな波が伝わるサウンドに乗せて、「彼女は新しい公害の中でひとりぼっち」と歌うBECKは、やはり詩人だ。
05デリリクト
アルバム『オディレイ』収録の、アルバムの流れを変えるギア・チェンジ的な位置付けの曲。シタールのエキゾチックな音色も映える、BECK得意の技巧を凝らした風変わりなナンバー。
06ノボカイン
80年代のハード・ロックの影響が垣間見られるヘヴィなテイストをあしらったナンバー。オールドスクール風ヒップホップやギターの重低音と調子はずれの機械音を融合させるあたりにBECKらしい色が表われている。
07ジャック・アス
フザケたタイトルでありながら、アルバム中でもBECKの全曲中でも、一、二を争う美しい楽曲。themがカヴァーしたボブ・ディランの名曲をサンプリングした意味にも興味がそそられる、メランコリックで儚い曲。
08ホエア・イッツ・アット
往年のジャズ・ベーシスト、チャーリー・ヘイデンのベースに合わせたグルーヴィなキーボード、そのすき間をかいくぐるようなチープな音源のサンプリングと、すべての発想と着眼点が目から鱗の大作。これによるグラミー獲得も納得のクールな1曲。
09マイナス
『オディレイ』の中でもっともオルタナ風な曲だが、インディーズでリリースした初期の曲に比べると、やはり数段洗練された感がある。「カーラオーケー」と絶叫されるフレーズは意味不明ながらも、なぜか耳に残る感覚はBECKならでは。
10シシーネック
軽快なホイッスルで幕を開ける佳曲。『オディレイ』で多用され、アルバム中のアクセントにもなっているキーボードはこの曲でも顕著だ。特に終盤のハモンド・オルガン風のグルーヴィなプレイは最高にクール。
11レディメイド
シンプルな作りだがコーラスの美しさ、ホーン・アレンジ、終盤のブルージィなギターなど、聴きどころは満載。曲全体に這うように聴こえてくるアナログ盤のノイズも一つのアクセントになっており、技巧派BECKのこだわりが随所に感じられるナンバー。
12ハイ5 (ロック・ザ・キャッツキルズ)
得意のヴォコーダーを使った絶叫ラップが素晴らしい、『オディレイ』中、もっともヒップホップ度の高い作品。映画のようにドラマティックな展開と、メロディアスな機械音が絶妙で、楽しい気持ちになるナンバー。
13ラムシャックル
『オディレイ』のラストを飾るのは、フォーク・シンガーBECKとしての真骨頂といえるダーク・トーンのアコースティック・ソング。ごった煮的なサウンドが多いこのアルバムの中においては非常にシンプルでミニマムな作りといえよう。
14ディスコボックス
Blues Explosionのドラマー、ラッセル・シミンズをフィーチャーした、しっちゃかめっちゃかミュージック・バトル。ブレイクビーツとコラージュによるサウンド・メイクはもちろん、アクセントとなるジャジィなピアノがクールに曲を彩る。